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カーディガン

作者: kaHo

私は、まだあのときの事を忘れないでいる。

そう、あれは受験の日だった。

高校受験当日。

私、宮里愛理は南の小さな村から出てきたやんちゃくれな年頃。

試験を受けに北の市内にホテルで宿泊し、朝から張り切っていた。

「寒っ」

思った以上に寒く、雪がぱらついていた。

制服を着用しベストしか上に入ってない私は手を擦りながら、

「はぁはぁーー」

と寒さを忍んでいた。

やっとの受験時間。

待合の部屋も暖房はされているとは言いつつも、なかなか慣れない寒さには

困惑していた。

そんな私を心配そうに見ていたらしい。

その子の名は、林恵美。

ショートヘアで目がぱっちりの小顔。

流石都会の人と思いながらも、

「……大丈夫?酷く青ざめているようだけど」

と、声をかけてくれた。

私は都会に慣れていなかったので、お爺さんお婆さん以外早々同い年に声をかけられたことがなく、少し身構えた。

それをなんとなくだけど、察したらしい。

「寒いの? なら、これ貸したげる!」

と、優しく暖かなモノに包まれる。

それは、オシャレな柄のチェックで、後で友達に教えてもらったが主な色は『ワインレッド』という色らしい。

確か、古い曲に『ワインレッドの心』というものがあったなと、後に振り返るのだが。

その時は、都会の人イコール怖い人のイメージが抜けていない私は、都会の人でも優しい人はいるんだと感じた。

「羽織れるから、羽織っていいよ」

と、言われたので、

「ありがとう、ございます」

と、ぎこちない笑みと会釈をした。

それから数十分後、待合の部屋の扉がガラガラとなったかと思うと、

「次の組どうぞ」

と言われ、私達は順番に並びながら、面接を別々で受けた。

最後の組だった私は面接日を終え、その子に会うことがなく返せないまま宿泊していたホテルに行った。

綺麗に畳んだブランケットをどう返そうかと悩みながら、私は就寝しその次の日田舎に帰った。

後日、電話で受かったことを知る。

おそらく、あの子も受かってるだろうと思っていた私は、入学式には似合わないブランケットを入れた袋を持っていこうと市内の寮に入った。

入学式、あの子は居なかった。

落ちたのだ。

気まずくもあり、始めはぎこちない私。

それでも、仲良くしてくれる子達がいて、なんとなくだけど高校生ライフを満喫していた。

ただ、あの子が気がかりだったけれど。

高校受験日。

今度は私が先輩になるのだ。

と言っても、私は暇なので寮に籠りっぱなしじゃ味気ない。

だから、気晴らしにとショッピングモールに行った。

1年都会にいた私は、結構こなれた感じで店を回る。

1人のショッピングも結構楽しい。

この季節、厚手の服の1つや2つ欲しいもの。

その時、パッと見ては可愛らしいワインレッドの服に手を伸ばす。

「あっ」

と、私は手を引っ込める。

一緒に同じ商品に手を伸ばした子も、

「……すみません」

と、手を引っ込める。

お互いに会釈しながら譲り合う。

すると、

「貴方、もしかして去年東高校受けた?」

と、突然質問された。

驚愕した。

だって私、現在東高校1年だから。

「なぜ、知って、るんですか?」

と、おずおずと逆に疑問を投げ出した。

「だって、その会釈と言い方でわかるわよ。前と変わらないのね」

と、優しく笑ってくれた。

まさかとは思いつつも、

「あのとき、ブランケットを貸してくださった人ですか?」

と、問いただす私。

「そうだよ! 私は落ちて2次で別の高校受かったけどね」

と、可愛くらしい微笑みで返答する。

相変わらず、ショートヘアで目がぱっちりしている。

それから、私はあのときのお礼にと、お互い手に取ろうとしたワインレッドの、今度はニットをプレゼント。

このときに、名前など教えてくれた。

本当にあのときは寒くて、どれだけあの優しさと暖かさに救われたことか。

数分後には、連絡先を交換するほど仲良くなる始末。

そして、律儀にもまたもや可愛らしいブランケットをプレゼントしてくれた。

私はいいのに、と断ったのだけれども。

また、ショッピング行こうと言ってくれた。

今度は、カーディガンをお揃いで買わないかと提案してくれた。

学校にも着用できるようなカーディガンを2人で購入する約束をして、その場は終わった。

来週、カーディガンを見るのが楽しみだな!

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