表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目覚めよ、ニッポン  作者: 茶茶 サティ
9/9

第9部分 糖首領の胸算用3 ネズミ男


第9部分 糖首領の胸算用3 ネズミ男



糖金平は心地よい虚脱きょだつの中に身を置いていた。

「おお、ひさびさの腎虚じんきょじゃな… あやつもだんだん手管てくだを覚えよるわ。まあ、ワシが教えたんだがな…」


桃花はすでに部屋から下がっている。

パツパツ服の上に緩やかに上着を羽織り、乱れた髪を左手でかきあげながらやや爪先を開いてゆったり歩いて退室していった。

窓をいっぱいに開けた執務室だが、桃花の少し生臭さの混じった淫猥いんわいで甘やかな空気がまだほのかに漂っている。


「さて、どこまでいったかな… 桃花は7度ほどイッたようじゃがな… ふ、ふふふっ…」

ちょっとした罰の悪さなのか、国事と色事を同時に考えている自分のももをちょっとつねってみる。


ながながと肉体的および精神的浄化カタルシスの国家的行為を終えた糖金平は熟考を再開しようとしていた。

「悪くはないがな、タイコモチはなんといってもカッコ悪い。どの国にもゴマを擦らねばならぬ。それにいつの日かしっかりと態度を決めねばならぬ時もきてしまうだろう… そう、今の韓国(大韓民国)のようにな)


今の韓国は、やがてどうにもならなくなる日が来る… 糖はそう予想している。

防衛は北に対する備えであるとうたいながら、そのじつ真の仮想敵国はGSOMIAなどの同盟を結んでいる日本であり、その日本とは切っても切れぬ美国の核の傘にすっぽり覆われている。


昭和20年代後半、美国の助太刀がなければ、暴風ポップンの合言葉から始まった北朝鮮の攻勢で大韓民国は釜山プサンから追い落とされ、かつての壇ノ浦の平氏のように海の藻屑になったことは明らかであった。その美国が拠点としていた、そして今も一大拠点となっているのは日本である。


そのくせGSOMIAを破棄しようとしたり、通貨スワップを破棄してみたあげく結局独り相撲をとってみたり、米軍機のブラックボックスを無断で開けて見たりと、あの支離滅裂さは喜劇以外に表現のしようがない。他にもF35の重整備を日本に依頼…いや要請する立場でありながら当のその「三菱重工業」を相手に国際法を無視して解決済の「徴用工問題」を再三蒸し返したり、ライダイハン(ベトナム戦争時に韓国軍兵が現地の女性を強姦した結果の混血児。「ライダイハン」は蔑称でベトナムで差別を受けてきた)問題には一顧だにしないクセに、朝日新聞の与太記事であることが証明されている「従軍慰安婦問題」を再四に渉って蒸し返し、国外の日本大使館前にその像を置くなど、一国として恥ずかしい政策しか思いつかない政府と愚民である。外交的配慮とやらをかなぐり捨てて良いものならば、映画バック トゥー ザ フューチャーのワンシーンのように

「Anybody home?(だれかいますか?)」

とアタマをノックしてやりたいほどだ。


さらにあのちっぽけな国土と領海を護るために航空母艦と空中給油機が絶対必要なんだとか… ヲタクには陸上基地は無いんかい?

そのくせあれだけ裏切られ舐められ38度線侵攻用のトンネルを何本も掘られても、統一して1つの国になるのだと独り勝手に思い続け、当の相手国に公式にバカにされても「太陽政策」を堅持、いや墨守する優秀な頭脳は次元が違い過ぎて理解できる気がしないな… 心情的には日本ひいきの糖金平は、ついつい国家元首という自身の立場を忘れてそんなことを考えてしまうことがある。


華国はこんなふうに国際的には笑いものにはされまいぞ… 

だから華国にはカリアゲマフィア政策もタイコモチ政策も相応しくはないんだからな… 



どの国とも対等に取引するには実力と技量が必要だ。


コンコン… ノックの音がした。

「なんだ、なにか用かい」

「あの、お知らせした方が良いかと存じまして…」

「ほう?」

「地震です。日本の鳥取あたりで大規模な地震があったようです。そう20分くらい前ですね」

秘書が時計を確認しながら報告した。

「大地震か… 近頃日本のあちこちで多すぎるのではないかのぉ」

「はい… そうですね」

「そろそろ例の東南海地震の出番かのぉ…」

「東南海… 何とかですか?」

「おぬしは知らんのか?」

「あ、いや思い出しました。昔の、あの関東大震災とか、あの辺ですか」

「いや、もういい。ならばな、地震の救援隊を作ってな、日本国に支援を申し出るのだ… いいな」

「は、はい。しかし日本に、ですか? それに詳細がわかってからでも…」

「いや、いますぐだ。空振りでも構わん」

「あ、はい」


「あ、それとな、中国の豪雨はどうなっとるかのぉ」

「あれは相変わらずで… 長江(ようすこう)上流部はあの時より降りすぎで、三峡ダムはもはやヤバいかと…」

「アレがドボンすれば武漢ウーハン南京ナンキン上海シャンハイもとうてい無事では済むまい。産業もヒトもな」

「さすがのプーさんもビビるでしょうね」

「ビビる… おお、思い出した… はっ、ははは、そうだな、ビビるだろうか」

糖首領は何事かを机上の紙にメモしている。


「どうかなされましたか?」

「いや、なんともないことじゃ、別状ない」

「こちらは水害ですね、支度は」

「そうじゃろな… おお、そちらもな、救援隊の準備をしておけ。今度は来そうな予感がある」

「わかりました」

「あとはできるだけ物資も持って行ってやれよ、良いチャンスだ」

「チャンス、ですか?」

「そうだ… さあとにかく、いますぐカカレ」

「はい」


秘書が去った後、糖の貌がほころんだ。

「はっはっは、鳥取のビビビという手があったか」


鳥取の境港市にはゲゲゲの鬼太郎の関連の像がそこかしこに立ち、観光の目玉になっている。糖は鳥取の地名を聞いた瞬間に、かつて放映された人気TV番組を思い出し、同時にそこそこの実力を持ち、時に悪役になり別の時には鬼太郎に味方して悪を糺す、あの濃いめの汚らしい裏切りキャラが頭に浮かんだのである。ヤツの狙いは悪くない。独自の路線で利害関係が合致がっちするときは協力するが、違えば平気で裏切る。


しかし絶対に無視できないようなそれなりの見識と実力とあちこちに繋がる人脈のパイプを持つことがヤツの生命線であることは言うまでもない… さもなくば相手にされないのは明らかだ。ただしかし…ヤツの名前が思い出せなかった。



それにしても… 三峡ダムが決壊するとすればこれは難題である。工業、農業、そして人口の過密地帯が濁流に洗われることになるだろう。さらに厄介なことがある。それは… 原子力発電所である。


中国当局や外信などの発表などによれば、2020年の中国南部地域の大雨と洪水による水害で江西・安徽・湖北省など27地域で被災者4552万人、死亡および行方不明142人、家屋破損3万5000軒が被害に遭い、直接的な経済損失額だけでも日本円に換算して約1兆7000億円に達したとも言われる。


さらにこのダムが崩壊した場合、上海地域の9基の原発にも影響があると危惧されていた。あのとき韓国原子力関連団体のイ・ジョンユン代表は「揚子江下流に位置した秦山、方家山地域(上海付近)の9基の原発の大型原発事故が懸念される。その際は日本の福島第一原発と同様に、冷却機能を失う事態の再発が懸念される」と危機感を表明していた。幸いあのときはダムの崩壊こそ起きなかったが、ダムの堰がいびつになった航空写真が世間の危機感をある意味の期待感を持って駆け巡ったものである。

「ふっ、韓国だってな… どのツラ下げて目クソが鼻クソを心配することか…」


ちなみにどちらの国もゲンパツを持ち、温排水もトリチウムも河川や海水に放出(投棄)しているのに、フクイチからのトリチウムの放出には断固反対を表明しているのも部外者には面白い。

「ヤツラはジャパン潰しのためならスタンダードを製造するからの、ダブルでもトリプルでも… そういうところだけは妙に律儀で勤勉じゃな、ほほほ…」



不意に隣の秘書室のスマートフォンがバイブレーションする音が小さく聞こえた。

「ビー、ビー、ビー」


すかざず秘書がノックもそこそこに顔を覗かせた。

「元首様、失礼します。ただいま日本ではJアラートが発令された模様です」

「ああ、また上げたのか、カリアゲ」

「えっ? カキアゲを揚げたわけではありません、ミサイルが…」

なんかとんでもない聞き違いをしているようだ。


「いや、わかっとる。それで?」

「あ、いや、詳報はまだ… とのことですが、ひとまず報告を…」

「軌道はどうかの? ロフテッドか?」


ロフテッド軌道とは、ワザと急角度に向けて打ち上げ、本来は弾道飛行するはずのミサイルの飛行距離を抑制する特殊な軌道である。弾道飛行とは… そう、高校物理あたりで習う放物線、つまり水平成分を含む落下曲線だと思えばさほど間違いではない。飛び過ぎれば美国まで飛んでいき、世界の終わりを誘発しかねない。


「それは… まだ不明です」

「ふ…ははは、本物の弾頭がついておったら真昼間まっぴるまっから日本人の唐揚げが大量にできるな… おっと味付けを」

「あの… アジのカラアゲですか、お昼は」

「そうか… ごくろう。ヤツも好きだのぉ」

「それは… カキアゲですか、カラアゲですか?」

「ぷっ… ヤツはな、何より毛饅頭けまんじゅうが好きなのさ。まあ良い。とにかく、詳細を報告するのだぞ」

「毛饅頭の… ですか? それはいったい…」

「むははは、そいつはお前のヨメも娘も持っておるぞ… が、もうそれは忘れろ、今はな」

「は、承知しました」

首を傾げながら扉を閉めて秘書は去った。


「は、ヤツも毛饅頭を知らぬと見える…」

糖は上機嫌だった。

それはそうだろう。池波正太郎の剣客商売シリーズを読んだ者は華国では圧倒的少数派であるに違いない。

「こうして双方に貸しを作り、華国の好感度を上げて影響力を増す。しかもあの半妖怪の名前まで思い出せたわい。そう… ビビビのネズミ男だった。当面はこの路線で行くことにしようかの…」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ