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目覚めよ、ニッポン  作者: 茶茶 サティ
1/9

第1部分 央華人民共和国

ここは仮想国家、央華人民共和国。

私はその元首たるとう 金平こんぺいである。

若い頃留学しいのでニッポンびいきではあるが、どうも日本人には現実認識力と危機感が足りない。

本当にそれで良いのか… もうそろそろ、そう今こそ目覚めよ、ニッポン!

さもなくば我が国やアノ国コノ国で寄ってたかって食ってしまうぞよ…


第1部分 央華人民共和国




「なに、気付かれまい…」

彼は続けた。

「奴らは感心なことになかなか几帳面だし熱しやすい。しかし冷めやすく… 長続きはしないものさ」

『いやいや油断は禁物、中には気の回る者もいるかもしれません…バカにはできませんぞ。』

「ははは… 俺もそう思ったさ、10年前は、な。でも大丈夫だ。奴らは和と共感と集団行動を重んじ、自らそれを壊す核になるようなことを自制するのだ。それが日本人の集団心理学だ」

『し、しかし…』

「心配するな… 任せておけ。ところで他になにかあるか」

『うっ、いや… ございません』

「うむ、ごくろう… 下がってよいぞ」

「は… しつれいいたします」



扉が閉まると部屋には自分独りだけが残る。

「ふふ、何時いつまでたっても心配性だな、アイツは…」

なにを議論していたのかと言うと、あの尖閣せんかく諸島のことである。


日本人という民族は広い世界のなかでもやや異質な民族である。勤勉で賢くて全体主義ファシズム権化ごんげのように集団行動が好きで、すぐに相手を信じてしまうお人善ひとよしで…


あの性格は根っからの農耕民族ではあるまい… むしろ騎馬民族的な統制に慣れた民族なのではあるまいか。そして不思議なほどに習俗や言語の中にユダヤ人との関連性や類似性が幾つも指摘されていて、例の「消えた13番目の氏族」の末裔まつえいだと考える学者もいるくらいだ。理知的で優秀で小器用で恩讐おんしゅういずれも「水に流せる」さっぱりとした気質をもつところが海を隔てた癇民族との際立った違いだと言えるだろう。そしてそれこそが我が華民族との決定的な違いであるとも言える


彼がにらんだ限りで言うと、現在の日本人ヤツラには「自身の夢や世界」はあるが、「一族の夢や世界」という世界観がほとんどない。これは大東亜戦争(太平洋戦争)後の美国(アメリカ合衆国)による占領政策がバカ当たりした影響も大きいだろう。戦前のまるで集団ヒステリーのように精悍せいかんかつ屈強だった国民性はGHQ主導のスポーツ、セックス、スクリーンという3S政策に見事に踊らされ、馴化じゅんかされ、堕落させられたのである。核家族化が進行した結果、いまや彼ら自身と家族の幸福のためには身を粉にして働くが、広く長い目でみた「一族」という思想が希薄になってしまっている。


実際のところ、日本には世界のどの国よりも長い「天皇制」という制度が意識の底流に存在していることだろう。五代前の縁者を天皇にまつり上げた「継体けいたい天皇」やいつの間にかすり替えられたのではないかと噂される「明治天皇」などもあるにせよ、公式には「万世一系」と号する天皇家が「象徴天皇」として残されていたり、千年も前の建築技術を脈々と受け継ぐ「宮大工」が存在するなどのかたくなな文化や伝統も確かに継承されている。



「でも最近はなぁ… そうでもないか、特に若い層は…」

思わず独り言が口を突く。

一部の例外を除けば国民は熱しやすく冷めやすく、異質なものにもすぐに慣れて取り込んでしまうという柔軟な国民性で… しかし為政者としてそれはキライな性格ではない。


なぜか? ずばり、治めやすいからである。それに… 大東亜戦争の恨みと復讐も残っている。


「あの国がほしい」

央華人民共和国、略称でホワ国の事実上の国家元首、とう 金平こんぺいは小さく呟いた。

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