96話 ーその目はとても気になる目ー
「それじゃあ質問のひとつ目。サブレが連れてきたふたりはどなた様?なんかさっきから私のことを怖い目で見ている気がするんだけど」
「ああそうでした、自分のことで精いっぱいで紹介するのを忘れていました。このふたりはちょっとしたきっかけで知り合った兄妹ですが思いのほか助けになってくれているので連れて歩いてるんです」
「ふーんなるほどねぇ」
「兄のほうがモルン、妹の方がウミカです。いつもその鮫みたいな目をどうにかしろと言っているんですが、まったく改善する気配がなくて困っているんです」
「モルン君とウミカちゃんね。ずいぶんとサブレのことが好きなんだね。サブレは?サブレも2人のこと好きなの?」
「え、ええまあ、そうですね。力になってほしいと思っていますね」
「何その答え方おかしい。まるで政治家みたいだよ」
「そうでしたか、今までそんなこと聞かれたことがなかったので変な感じになってしまいました」
「ふーん。まあひとつ目の質問は終わりでいいよ」
「あのユリア先生、できれば質問は短めでお願いしたいんですけど。一刻も早くこの呪具を何とかしないと落ち着かなくて」
「だめよそんなの、私が満足するまでは頑張ってもらわないと。男っていつも自分勝手ね」
「すいませんでした、続けてください」
「それじゃあ質問のふたつめはねぇ………なんで私の授業を受けに来なかったの?リクエスト出してたよね。私の授業が補助魔法だからって下に見てた?」
「特級宮廷魔術師になるために必要だと思ったからです。俺は自分が将来どうなりたいかを考えてそのための行動をしてきました。ですから授業の選択もそれを実現するのに最もふさわしい授業はなにか、ということだけを考えて選びました」
「それってやっぱり私の授業を下に見ているってことだよね?」
「個人的にはそうは思っていません、土魔法との相性を考えた場合には攻撃よりも守備、もしくは補佐のほうがあっていると思います。けれどいまの社会は攻撃魔法を上位と考える風潮があるので仕方ありません。すべては特級宮廷魔術師になるためです」
「ふーん」
「本当です信じてください。あとはサンジェルト王子が攻撃魔法を選択したことも理由の一つです。王子とは出来るだけ良好な関係を持ちたいと思っていたので」
「サブレはずいぶんと理屈理屈でものを考えているんだね。私がサブレと同じ年のころは難しいことなんか何にも考えてなかったよ。どうやったら男子のハートを掴めるようになれるかはいっぱい考えていたけどね」
「先生はものすごくモテたんじゃないですか?」
「うんモテたよ。私の教室にはよくほかの生徒が覗きに来てたんだ。帰り道とかにもいろんな人が集まってきてたしね」
「よ!流石先生、素晴らしい!」
「そんな見え見えのよいしょには引っかからないよ。そんなの今までいっぱいされてきてるんだからさ。今のサブレのよいしょはその中でもダントツに下手だった」
「すいませんでした。自分では結構できているかと思っていたんですけど」
「全然駄目だった」
「そんな満面の笑みで言われると余計にショックです」
「ずいぶん繊細なんだね」
「誰でもそう思うんじゃないですかね」
「私は男の人のほうが繊細な人が多い気がする。特に男らしい男ほどぐちぐちといつまでも過去のことを引きずっているんだけど、そんな姿をほかの人に見せるのはプライドが許さないから絶対に嫌。だから大声を出すんだよね、俺は怒っているぞ、近づいたら大変な目にあわすぞってね。そうやって人を遠ざけて実は自分を傷つけられないようにしている。違う?」
「わかりません。自分にはまだ先生ほどの観察眼はありませんので」
「そんな大したことじゃないよ、適当に言ってるだけだから間違ってても全然いいし。それじゃあふたつ目の質問は終わりでいいよ」




