94話 -切断-
「じゃっじゃじゃーん!」
「何ですか先生、その大掛かりなのは」
先生が部屋の奥から引っ張り出してきたのは僕の身長よりも大きな車輪がついた木製のなにかで片方の中心に金属でできた円形にギザギザが付いたものだった。
「なにってサブレが欲しがってた魔道具を壊す装置だよ。もう重いのを頑張って運んできたのになんで全然喜んでないの?なんか持ってきて損した!」
「すいません先生、見ただけじゃ何か分からなかったもので。すいません」
「もーしょうがないなー」
「もしかしてこの金属のやつが回転して切断するんですか?」
「そうだよーよくわかったね、褒めてあげる」
「ありがとうございます」
「しかもそれだけじゃなくてね、罪人の処刑にも使われていたの」
「え!?」
「人間の怨念によって魔道具は生み出される、そう主張する人もいるからね。その理論が正しかったらこれも魔道具になるかもしれないと思ってずっと持ってるんだけど全然なんないんだ。残念だよね」
「これもっと小さいのはないんですか?」
「呪具を壊そうと思ったらこれくらいの大きさは必要だよ。もしかしたらこれでも小さいくらいかもしれないよ。呪具って普通の魔道具なんかより硬いからね」
「そうなんですか………ひとつ心配なんですけどこれってうまく調節できるんですか?指ごと切断するってことはないんですよね?」
「んーわかんない」
「待ってくださいよ先生、それじゃあ意味がないんですよ。呪具は破壊したいですけど指は10本のままでいたいんです」
「それは難しいかもなー、使ったことないし」
「なんかもっといい道具はないんですか?」
「私は知らないなーもしわかったら教えて欲しいくらい」
「専門家の先生が知らないとなると………」
「わかんないけど指って10本ないとダメ?」
「ダメに決まってますよ!」
「斬首丸権蔵が嫌ならほかには………」
「それに名前つけてるんですね」
「呪術師に頼るっていう方法もあるよ」
「呪術師?」
「知らない?人に呪いをかけたり解いたりすることができる人のこと。呪具っていうのは人間の呪いが固まってできたものって主張している人もいるの。だから呪具は人間に不幸をもたらすんだってね」
「なるほど」
「だったら呪いを扱う呪術師に頼んでその呪いを消してしまえばいいんだ、っていう考え。そうすれば魔道具になるのか、それともただの指輪になるのか。どっちにしても指は無くならなくて済むと思うよ」
「良いじゃないですか。そんなことができる人がいるなんて全く聞いたことがないんですけど先生に呪術師の知り合いはいらっしゃるんですか?」
「いないよ」
「ちょっと先生!」
「偽物ならいくらでもいると思うけどね。お前には先祖の呪いがついてるんだ、っていってお金を巻き上げる詐欺ってよく聞くもんね。けど本物の呪術師は雪男を見つけるよりも難しいって言われてるね」
「そんなにですか?」
「そんな人がいたら偉い人たちが放っておかないと思うよ、自分が呪われたりしたら嫌だからね」
「う………」
「だから普通だったら見つからないように隠れるでしょ?」
「それじゃあ無理じゃないですか」
「じゃあやっぱり斬首丸権蔵だね。ほらこんな感じ」
先生が装置に手を触れた途端、ものすごい音を出しながら金属の円盤が高速で回り始めた。
「指が切れる前に逃げればいいんだよ、シュッとさ」
「うーん、そんなにうまくいけますかね?」
「うん。私だったらそんなことはしないけどね」
「ん?」
「だってすぐに切れるとは限らないんだよ。呪具ってすごい固いっていうから相当な時間がかかると思うんだ。そしたらその指輪は斬首丸権蔵との摩擦でものすごく熱くなっちゃうと思う。そうなったら熱で指が焼け焦げるでしょ」
「先生!」
「私だったらまずその呪具がどんな効果をもたらすのかを調べるのを先にやるよね。大したことがないのだったら放っておけばいいし」
「けどこの呪具がどんな効果をもたらすのかなんてわからないんじゃないですか?」
「それはそうかもしれないけどさ、試してはみるよね。私のスキル「セイレーンの声」を使えば分かるかもしれないし」




