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91話

 



「大体にしてこの指輪はサイズが合うのか?」


「そんなに気になるならはめてみればいいじゃないか」


「指輪なんだから入るかどうかは気になるだろ」


 ひょいとドクロの指輪を摘まみ上げると左手の人差し指にはめた。


「おお!」


「どうしました?」


「このドクロ動くぞ」


 そういってサブレさんはドクロの顔に指をあてがって動かすと、ドクロの顔も一緒にかぱかぱと少しだけ動いた。まるでドクロが笑っているみたいに見えた。


「趣味が悪いですね」


「おいちょとまて今のはどういうことだ。モルン聞いたか?せっかく人が楽しんでいるところに水を差すようなことをお前の妹は言ったぞ。兄として何か責任を感じたりすることはないのかお前は」


「ダメだよウミカそんな言い方をしたら」


「モルンはあれを格好いいと思うの?」


「それは人それぞれあっていいことだよ」


「やっぱり思ってないんだ、よかったぁ」


「僕はそんなことは言ってないよ」


「おいモルンどういうことだ正直に言え」


「正直にって言われても困るというか………」


「何で困るんだよ」


「その、なんでって言われましても………」


「ダサいと思ってるでしょ?お願いだからそう言って。モルンがこんなのを格好いいと思うようなダサい趣味をしているなんて信じたくない」


「良いんだ正直に言ってくれモルン。もしそうだったとしても俺は別に怒ったりなんかはしない。お前の正直な意見が知りたいんだ」


「正直にですか?」


「正直にだ」


「まぁちょっと、僕の趣味ではないと言いますか………」


「お前ら兄妹揃ってなんだ俺を馬鹿にして!」


「ええぇ!?怒らないって言ったじゃないですか」


「怒ってない、怒ってないがガッカリした」


 結局怒っているような気がする。


「でもいいと思いますよ、サブレさんにすごく似合っていると思いますし」


「モルン!ダサい指輪が似合うってのはどういうことだ!」


「いえ、僕が言いたかったのはそういうことじゃなくてですね」


 すごく怒っている。


「あーもーいらん!こんな指輪はいらん!ダサいダサい言いやがって俺はもう二度と指輪なんかしないしこの店でも何も買わない。あーもう気分が悪いからもう帰る!」


 サブレさんは指からドクロの指輪を引き抜いた。


「ん?」


 引き抜こうとしたけれど、引き抜けていなかった。


「んん?」


 ドクロがカタカタ笑うように動いただけでサブレさんの左手の人差し指にドクロは居続けていた。


「抜けない………なんだこりゃ抜けないぞ」


「大丈夫ですか、僕引っ張りましょうか?」


「いやもう指がヒリヒリする。赤くなってきたからいったん皮膚を休ませないともっと痛くなりそうだ」


「それじゃあもう少し時間がたったらにしましょうか」


「なんだか嫌な予感がするな、こういう時はどうするんだったか。昔なんかで見たような気がするな。ちょっとまてよえーと………そうだな油だったか洗剤だったかでするっと抜けるようになるなるんだった気がする」


「油か洗剤ですか知りませんでした」


「これ………」


「どうしました」


「なんだかさっきより締まってるような気がするな。指の関節よりも細くなってる気がする………いやそんなことあるはずないよな。入ったんだから抜けるはずだ」


「もしかしたら本当に指より細くなっているのかもしれないよ」


 不意にお婆さんが喋った。


「どういうことだ?」


「知らないのかい?魔道具の中でも指輪は要注意といわれていて、稀にはめてしまうと抜けなくなる場合があるんだよ」


「ば!馬鹿野郎この野郎!なんで最初に言わねぇんだよ!」


「まさかいきなりはめるとは思っていなかったんでね」


「はめてみろって言ったのは婆さん、あんただろう」


「ほんの冗談のつもりだったんだよ。それに話には聞いたことはあるが、実際にそうなったのをあたしは今まで見たことがないからねぇ」


「何が冗談だふざけんな!」


「あたしらみたいに魔道具を扱う商売をしているやつらの中ではよく聞く冗談なんだよ。あんたも聞いたことないかい?強欲な貴族様が金の指輪を全部の指にはめて威張っていたらその中に、悪い効果をもたらす指輪の魔道具が混ざっていて結局指を切り落とす羽目になったっていう冗談を」


「指を切り落とすだって!?ふざけんな俺は道具屋じゃないんだそんな話知るわけないだろ!知ってたらこんないかにも怪しさ全開のドクロの指輪なんか気軽にはめてないわ!」


「まだその指輪がそうだと決まったわけじゃないじゃないのさ。そう慌てることはないよ。無理に引っ張ろうとすうと指が腫れ上がってもっと抜けなくなっちまうよ」


「そもそもちゃんと何の効果を持った魔道具なのかちゃんと調べておけよ。もし呪いの指輪だったりしたらどうするんだ!もしそんなのだってわかってたら絶対にはめて見たりなんかしなかったんだ」


「いまさらそんなこと言われてもね。あたしが鑑定士を通さなくなってからもう何年も経ってるんだからねぇ。それに気休めってわけじゃないがべつに呪いの指輪とまだ決まったわけじゃないんだからもう少し落ち着いたらどうだい?」


「落ち着けるわけがねぇだろ!なんで抜けねんだよこのクソダサドクロ!」


 机に叩きつけたサブレさんの手でドクロがカタッと笑ったように動いた。


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