90話
「私?なぜですか」
「単にそっちの方が似合いそうだからさ。あたしは眼鏡をかけている女が好きでね、知的な感じにグッとくるんだ」
「これは魔道具であってファッションアイテムじゃないぞ」
「魔道具であると同時にファッションアイテムでもあるんだよ。貴族様なんかはよくそうやって自分をよく見せることがあるじゃないのさ」
「まぁ………そうだが」
サブレさんが言い負かされた。
「これが自分で仕事をすることの大きなメリットだよ。自分が売りたいと思った相手に売ることができるのさ。雇われじゃこうはいかないだろ」
「買うとはまだ言っていないんだが」
「買います」
「え!ウミカ買うの?でも値段も高価も分からないよ?」
「デザインが気に入ったから。銀色で植物の細工がしてあってきれいだから好き」
ウミカは倹約家でジャガイモひとつ買うだけでも結構時間をかけて選んでいるっているし屋台で美味しそうなものを見ても我慢しているのに、それだけあの眼鏡の魔道具を気に入ったってことなのかな。けど値段はいくらなんだろう。
「何にも分からないのに買うのか?」
「買います、買ってくださいお願いします」
「俺が!?」
「私たちは将来のためにお金を大切に使わなければいけないのでお願いします」
なんと!サブレさんに買ってもらうつもりだった。いつもはあんなにもピリピリした関係なのに。我が妹ながらすごい度胸だよウミカ。
「ヒョヒョ!いいじゃないのさ、それでこそいい女ってもんだよ。賢く強くしたたかに。いいじゃないのさ気に入ったよ。ほらあんた買ってやんなよ、それが男の甲斐性ってもんだよ」
「全く意味が分からん………わからんがまあいいか。モルンにも買ってやるつもりだからな、将来に向けての投資という意味で………………」
サブレさんはブツブツ言いながらも買ってくれるつもりみたいだ
「サブレさんありがとうございます」
「ありがとうございます」
「まあいい金ならマフィアから分捕った分がまだまだあるからいいさ。というかいくらなんだ値段を聞いてないぞ」
「一個ずつチマチマ値段を言っていくのが嫌だからまとめて最後に言うよ。どうせ全部買ってくんだろ?」
「どういう商売の仕方をしてるんだよ全く」
「残るひとつがこれ、このバカみたいなデザイン。私には全く理解できなんだけどある層の男達には人気のありそうなデザインだよ」
「ドクロの指輪か、なかなか格好いいな」
「やっぱり気に入ったかい。いるんだよねこういうのが好きな男ってのが」
「さっきからうるさいな、なんだよごちゃごちゃごちゃごちゃ」
「ほらいいから持ってごらんよ。そうすればこれがまぎれもなく魔道具だってわかるはずだよ」
「何を格好いいと思うかは人それぞれで正解はないはずだ」
ぶつぶついいつつもサブレさんは机の上の指輪を取った。
「魔力を感じる、魔道具ということに間違いないようだ」
「ほらだから言っただろ」
「当然この指輪についても………」
「何の効果をもたらす魔道具なのかは分からないね」
「うーん、俺としてはしっかり分かったうえで買いたいんだがな」
「あんたは鑑定士に持って行ったことがないんだね。もし一度でもあるならあたしの言ってることが分かるはずさ」
「そうなのか?」
「とにかく面倒なんだよ、時間はかかるし色々と書類を書かないといけない。自分がどこの誰だとか、どこで手に入れたかとかね。さらに金もかかるんだ、実績のある鑑定士ならなおのことだよ」
「それは知らなかった」
「向こうにすれば自分の鑑定が間違っていれば信用問題になるんだから慎重に判断したいって気持ちは分かるがねぇ。こっちの立場としてはやっかいなもんさ」
「そうはいってもなぁ………」
「それに優秀な魔術師であれば触っただけで魔道具の良し悪しが分かるという噂を聞くよ。魔力の声が聞こえるんだとか何とかさ。その様子だとあんたはそれほどでもないようだね」
「そんなことないですサブレさんはとても優れた魔術師です!」
気が付いた時には僕はもうすでに叫んでいた。
「まったく分からないがそこまで弱い魔力反応じゃないからそこそこいい魔道具の可能性はある。値段は?さっきまとめていうって言ってたな」
「3つで680万ゴールドだ」
少しためてからお婆さんが言った。
「これってどうなんですかサブレさん?」
「全く分からん!」




