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79話 -生き埋め公爵-

 


「たしかにサブレはここ数年でもっとも優秀な成績で卒業した生徒と言っていいだろうね。ただ生徒がのぞきまでした見たかったのは優秀だからというわけじゃないだろう。「生き埋め公爵」様を見たかったに違いないさ」


「い、生き埋め公爵?なんですかその違和感しかない名称は」


「在学中のシャイタン・サブレに付けられたあだ名です。私自身直接目にしたわけではありませんが記録にははっきりと残っています」


 上下黒い服を着た鋭い目の長髪の女性、キウルさんが書類を開きながら言った。


「そんなものを記録に残さないでもらいたいですね」


 サブレさんが少し不満そうに言った。


「面白そうなので聞かせてもらいたいです」


 ウミカ、我が妹はこの学園に来てから始めて喋ったような気がする。


「私も久しぶりに聞いてみたいね、読み上げてごらんよキウル」


「かしこましました、それでは。事はシャイタン・サブレが入学初日の下校時に5人の上級生に声を掛けられたのが発端です」


「声を掛けられたんじゃない、向こうは明らかに獲物を物色していて俺を選んだんだ」


「獲物を物色ですか?どうしてそんなことを」


「よくある話だからモルンも気をつけろ。上級生ということと親の身分を利用して自分たちの言うことを聞く人間をあいつらは探しているんだ」


「なるほど。けどどうしてサブレさんを?新しく入ってきた生徒はほかにもたくさんいるんですよね?」


「それに関しては私にも想像はできます」


 キウルさんが言った。


「ひとつめはシャイタン・サブレの家が貴族ではなく準貴族であるというのが理由でしょう。自分たちより上の家柄の生徒に対して何かしでかすのはあとあと問題になることを分かっていたのだと思います。貴族はパーティーなどを通じて貴族同士で顔見知りの関係です、有力な貴族の子弟であるほどに有名で顔は知られています。自分たちが知らない顔であれば準貴族、または一般人であると考えられますので目をつけられたのでしょう」


「それは間違いなくある。俺は興味はあったんだが両親はどちらも貴族のパーティーに積極的に参加したがる人間ではなかったので、必然的に俺も参加する機会がほとんどなかったのだ」


「なるほど向こうもしっかり考えているんですね」


「5人の上級生は貴族か準貴族の子弟でリーダー格の少年の親は貴族なので見分けることに自信があったのでしょう」


「それとひとりで帰ろうとしていたこともあるかもな。顔見知りはそれぞれ何人かで帰っていたが俺はさっき言った理由で顔見知りがいなかった。それともうひとつの考えられる理由は俺を弱そうだと考えたからだ」


「そうなんですか?」


 サブレさんはいかにも特別という感じの雰囲気を纏っているので、初めて会った時は怖かったことを覚えている。


「間違いない、向こうはいきなり俺に対して「チビ」と言ってきたからな」


「ええぇ!?」


 そんなことを言ったら絶対に怒るに決まっているのに、と思う。


「向こうは油断したんだろうね。なにせ自分たちは5人もいるという考えがあったんだろう。普通の人間同士でやりあうのとは違って魔力を持つものは単純に人数の差で考えるのは危険なんだが、その生徒たちは実戦経験なんかほとんどなかったんだろうね」


「そう、5人だ5人。俺は自分の身を守るために戦ったに過ぎない」


「確かに書類にもシャイタン・サブレは何度も向こうの人数が多かったということを主張している、と書いてあります」


「よかった、それは書いてあるんだな。何度も言っておいてよかった」


「それでどうなったんですか?」


 なんだかワクワクしてきた。


「土魔法を使ってあいつらの足元に大穴を開けてやったんだ。無意味に手足をバタバタて口を開けたまま落っこちていったぞ」


「そんな魔法があるんですね」


「大昔からある古典中の古典の土魔法だ、獲物を狩るときにはよく使われるんだ。深く掘れば動物は上がってこれないからな」


「すごくいい魔法ですね。けど向こうは気が付かなかったんですか?同じ魔術師ですよね」


「全く気が付いてなかった。全員がアホみたいな顔をしながら落ちていったんだ」


「それはサブレ、あんたの発動速度が異常だからさ」


「資料にも気がついたら落ちていた、と書いてありますね」


「その先を読んでごらんよ、面白いのはこっからだよ」



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