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78話 ー覗きー

 



「教師なら紹介してやらんでもないが具体的にはどういった人材がいいんだい?」


「考え方が偏ってない人間がいいです」


「もっと具体的に言ってもらわないと分からないね」


「広く浅く教えていってほしいですね。国の歴史の授業にしたってこの国にとって都合のいいように教えられている気がしますし、何より最悪なのは極端に宗教にのめり込んでいるよう人物ですね。私はモルンのことを宗教家にしたいわけではないので、ろくでもない嘘を教え込むのに時間と金を使いたくないですから」


「ずいぶんと辛辣だね。あんただって何か困ったことがあれば神様に祈るだろう?」


「祈るかもしれませんが本当に困っていることを解決してくれるとは思っていませんね。神という存在は人間が苦しんでいるのを見て楽しんでいるのではないかと思うことすらあります」


 学園長さんは大きく笑った。


「そうかい奇遇だね、私もそう思ったことが何度もあるよ。どれだけ祈っても神様は姿を見せてくれないし奇跡は起こってくれない。人間の命はあまりにも弱くていい奴ほど簡単に死んで、悪い奴ばかりが長生きするからね」


 笑ってくれてよかった、サブレさんの言葉は怒り出す人がいてもおかしくないものだと思う。サブレさんはこの学園長さんを信頼しているからこんなことを言うんだと思う。あとは僕に対して言っているという意味もあるはずだ。


「神という存在は恐らく女だと思います。私の知る限り女というのは他人の不幸話が好きな生き物ですから、空の上から人間たちの様子をのぞき見してつまらなければ試練を与え、それによって慌てふためいたり苦しんだりしているのを見て笑っているのでしょう。それなのに人間たちは自分の事を崇め奉っているのだから楽しくてしょうがないでしょうね」


「ずいぶんな想像力じゃないか」


 学園長さんはさっきよりも大きく笑った。


「そんな理由で神様を女だというのを聞いたのは初めてだよ。たしかに神様は人に試練を与えはするけども救ってくださることもあると私は思うんだからそれでいいじゃないか。神は乗り越えられない試練を与えない、ってやつさ」


「試練が多すぎるように思いますね。もう少し救いを増やしてもらわないと無条件に信奉する気にはなれませんよ」



「あれ?」


 視界の中に違和感を感じた。窓の片隅に何かが移った気がする。


「どうやら生徒がこの部屋をのぞきに来ているようです。排除しますか?ヨシカ学園長」


「放っておきなキウル。馬鹿なことをやって許されるのは若者の特権だよ。面白いじゃないか、私は嫌いじゃないよ」


「私は面白いとは思いません。魔法というのはもっと有意義に使うべきです。のぞきなんてことに使わず自身の操魔を研ぎ澄ますことに注力すべきです」


「まあ若いころは楽しいことのためなら苦労はいといませんから。むしろくだらないことにこそ力を使いたくなるのです」


「恐らくは屋上から何らかの魔法、すぐに思いつくのはロープか梯子を作っているのだと思いますが、こんなにあっけなく見つかっているようでは話になりませんね。どうせやるなら完璧にやらないと意味がありません」


「生徒さんはよく覗きに来るのですか?」


 僕は聞いた。王立魔法アカデミーといえばこの国で一番レベルの高い学校だと思っていたけど、やっていることは普通の子供と変わらないんだなと思うと少し安心した。


「普段は近寄りもしないさ。ただ今日はサブレ、あんたがいるからね」


「私ですか?」


「そりゃそうさあんたは有名人だからね。この学園の生徒であんたのことを知らないのなんていないだろうさ」


「そうか!サブレさんはこの学校を優秀な成績で卒業したから憧れの存在なんですよ、きっと。ここに来るまでの間にサブレさんのことを知っている生徒がいてみんなで見に行こうと思ったんですよ」


 選ばれた人しか入ることができないこの学校を卒業した人の中でも特級宮廷魔術師になることができるのは本当にわずかで、ひとりも出ない年もあると聞いたことがあるのでサブレさんは本当にすごいんだと思う。卒業してから少ししか時間がたってないので在校生たちもみんな知っているんだろう。


「もちろんそれもあるだろうがねぇ………それだけじゃないよ」


「?」


 ヨシカ学園長がニヤリと笑った。



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