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76話 -病み上がり-

 


「教師ですか!?」


「そうだ、前に言ってただろ親がふたりともなくなったことで学校に行き続けることができなくなって途中でやめたと」


「はいそうです」


「お前の将来のことを考えたらしっかりとした教育を受けておいたほうがいいだろうと思ったんだ。お前は頭がいいから遅れた分を十分に取り戻せるはずだ」


「本当ですか………」


 サブレさんの優しさに胸を打たれた。


「どうだ鮫。俺はそんなに悪い人間じゃないだろ?」


「そうかもしれません、しれませんがーーー」


「はい!すごく優しい方です」


 またしてもウミカが失礼なことを言いそうだったので言葉を遮った。ウミカは不満そうな表情をしているがこれを優しさと言わないで何というんだろう、やっぱりサブレさんは大きい人だ思う。


 あと「さめ」っていうのはウミカのことだろうか。僕は実際のその生き物をまだ見たことがないけど多分可愛い生き物ではないだろうというのは分かる。


 サブレさんがいなくなってしまった家で僕たちは少しぬるくなってしまったペペロンチーノとスープと食べた。




 ◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆◎◆




「お前も来るのか?」


「いけませんか?モルンのことが心配なので」


「心配してくれるのは嬉しいけど大丈夫だよウミカ」


「この前のことをもう忘れたの?高熱に顔を真っ赤にして帰ってきたばっかりじゃない。それからずっと寝込んでいてご飯も食べられないくらいだったんだよ。心配になるのも当たり前じゃない?」


 ウミカの強い意志のこもった目に息が止まった。


「この人と一緒にいるとモルンはいつも危険な目にあっている」


「そんなことないよ」


「その通り、あれはモルンのミスだ」


「私はあなたのせいだと思っています」


「あの日のことについては俺も考えてみたがあれは魔力を使いすぎたことが原因だ。初心者にはありがちなことなんだ、魔臓を酷使すると最悪の場合死ぬことだってあるんだからな、あれくらいですんだのはかなりラッキーだと思っている」


「そ、そうなんですか」


 死という恐ろしい言葉に体が固まる。


「特殊スキルは普通の魔法にはない特別な力を発揮するが、その反動として大量の魔力を消費する。あの時モルンが使ったのは時間の流れをゆっくりにするというものだがあれは特殊スキルの中でも相当に魔力の消費が激しそうなスキルだ、世の中に対する影響力が大きいからな」


「そうなんですね」


「確かめたわけじゃないが間違いないと思っている。それに加えてモルン、お前自身特殊スキルの他人の能力をコピーするというのも相当に魔力を使うことが考えられる。好きなスキルを自由に使えるというのもかなり反則的に便利だからな。つまりお前はあの時、ただでさえ負荷の高い能力を同時に2つ使った可能性があるということだ」


「なるほど、そういうことですか」


「間違っている可能性の高い仮説だ。もしそうだったら数日体調を崩すくらいの反動ですんでいるのはおかしいからな。だが重要なのはそういった可能性を考えて最初は魔力消費量の少ないものから実験していくべきだったんだ、大したことがない魔法なのに魔力を消費しているのなら2重で魔力を使っているということだからな。それなのにいきなり火力の高いスキルを使ったのは完全にモルンのミス、俺のせいじゃない」


「私はあなたがモルンをそういう状況に追いこんだのではないかと思っています。モルンはあの日のことを何も教えてくれないので分かりませんが」


「ウミカ違うんだ、サブレさんが言うようにあれは僕のミスだ。ちゃんと考えてやればよかったんだ」


「モルンはいつもこの人の味方ばかりする」


「ごめんウミカ、そういうつもりじゃなかったんだけど」


「また私のことを否定した。わたしはすごく心配しているのになんでわかってくれないの?ねえ、なんで分かってくれないの?」


「違うんだよウミカ」


「また………」


「ごめんウミカ、ごめんって」


 僕は小さな妹を包み込んだ。


「私にはもうモルンしかいない。お父さんもお母さんもいない、モルンがいなくなったら本当のひとりぼっち。モルンは私のことをひとりぼっちにするつもりなの?もう危ないことはやめてモルン、モルン………」


「ごめんウミカ、ごめん」


 ウミカの震え声が体の芯まで響いた。


「もうこの人を殺す」


「え!?ちょっとウミカ!」


 ウミカの怖い声が体の芯にまで響いた。


「モルンはこの人に良くない影響を受けている。ずっと思ってたんだけど今日やっぱりそうだなって思ったの。こういうのは病気と同じで早いうちに解決しておかないと取り返しのつかないことになる。少し痛いと思うけどそのうち傷は塞がってあっというまに健康になるから。だから、ね、殺す、いいよね?」


「おいモルン!」


「だいじょうーぶ、ウミカ僕はすごく大丈夫なんだ、だから落ち着いて」


 僕はゆっくりとウミカの頭を撫でたけど、上目遣いで僕を見るウミカは僕のことを可哀そうな人みたいな目で見ていた。


「悪い影響を受けている人はみんな自分のことを大丈夫だと思っているの。だからそんなことを言うっていうことは大丈夫じゃないっていう証拠。私がモルンを前のモルンに戻してあげる。大丈夫、時間がゆっくりの間に首を刎ねてしまえば痛いなんて感じる時間はないと思うわからないけど多分そう。もしそうじゃなかったとしても別に良いんだから落ち着いて」


「大丈夫だから落ち着いてゆっくり深呼吸して。心配させてしまってごめんね、前も今も変わらずウミカのことをすごく大切に思っているんだ。僕は前と何も変わってないんだよ」


「落ち着いてモルン。人間っていうのは日々変わっていくものなの、時間というものからは誰も逃れられないんだから一日一日時間を重ねて変わっているの、子供は昨日よりも成長しているし老人は昨日より老いている。それなのに変わっていないって言い張るのは大丈夫じゃない証拠なの」


「そういう意味では確かに変わっているけど僕が言いたいのはそういうことじゃなくてーーー」


「分かってくれてうれしい。それじゃあ殺すね。今持っているのは切れ味の悪いナイフしかないけど」



 思い詰めているウミカを何とか落ち着かせるのは病み上がりの僕にはかなりハイカロリーな仕事だった。



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