表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/234

70話

 


「それはどういうことだモルン」


 心臓が高鳴る。


「あのカードが光りだした時、僕は自分の体に何かがぶつかってきて、それで後ろに弾き飛ばされたんです。視界は真っ白で何も見えてなかったんですけど手のひらくらいの大きさのボールが、お腹にぶつかってめり込んできた感触があったんです。だから僕はみんなが同じ状態になったものだと思っていたんですけど、家に帰ってご飯を食べている時にウミカに聞いてみたら、強い光で目の前が真っ白になってその場に倒れたけど、何かが体にめり込んでくる感触はなかったというんです」


「………………」


「それでおかしいなと思ったまま昨日は寝たんですけど、朝になって思ったんです。もしかして僕はスキルを手に入れたかもしれないって」


「スキルを?」


「怖くてまだ一度も試したりはしていないんですけど、なんだかできるような気がしているんです。身体強化を使うときみたいに、下腹からのエネルギーを使えばきっとこういうことができるはずだというのがイメージできるんです」


「………………………」


「多分僕ができるようになったのは、他の人のスキルを真似して使うことができる、ということだと思います」


 僕は言った。


「………………………………お前盗んだな」


「えっ、なにがですか?」


「なにがってスキルに決まってんだろスキル!スキル!スキルだ!今はっきりとわかった、あの時何が起こったのかをな」


「どうしてですか、僕は、何もしていませんよ。なぜサブレさんがそんなことを言うのか僕にはわかりません」


「分からないだと?だったら教えてやる、俺はあの時のことを何度も思い返しているからな」


 サブレさんは明らかに怒っていた。


「あの時、仮面の野菜売りからエニグマのカードを渡されたが理解できるのは絵だけで何が書いてあるかは全く分からなかった、そうだな?」


「そうです。全く見たことのない文字で書かれていたので分かりませんでした」


「それは俺も全く同じだ。けどあの野菜売りが俺に対して書かれている文字が読めるはずだと言った。最初は読めるはずがないと思っていたが、なんども同じ言葉を繰り返されているうちにもしかしたら読めるかもしれないと思った。そしたら瞬きをした瞬間にはカードに書かれている文字がはっきりと読めるようになっていた。そして不思議だった、自分が訳の分からない言葉を発しているのが」


「そうだったんですね。けどどうしてそれで僕がスキルを盗んだということになるんですか?」


「エニグマというのはダンジョンの宝箱から見つかる「よくわからないもの」の総称だ。あのカードもそれで、どうつかったらいいか、なんのためにあるのかわからないものだ。しかしあのカードには確かに意味があったんだ。それはカードの名前を声に出すことでスキルを得る、という意味が」


「なるほど、そうわれてみればあのカードが光りだしたのはサブレさんが分からない言葉を言った時でした」


 怒っているサブレさんが怖くて涙が出そうになる。


「つまり!つまりあのカードの真の力を使ったのは俺だ。俺が文字を解読できたからこそあのカードを使うことができたんだ。しかしそれによってスキルを得ることができたのはモルン、お前だ。なぜならばカードを持っていたのがお前だからだ!本当ならスキルを手に入れていたのは俺のはずなんだ、それなのにお前はただ持っていたからという理由だけでスキルを手に入れた。これを盗んだと言わなくて何というんだ!そのスキルは俺のものになるはずだったんだ!」


「僕は盗んだりなんかするつもりはありませんでした」


 僕は泣いていた。


「どう思っていたかなんて重要じゃない。重要なのはスキルを誰が手に入れたのかということだ。あのあとどれだけ探してもあのカードは見つからなかった。つまりは一回使えば消えてなくなるということ、もう二度と手に入らないということだ!俺のスキルを返せこの盗人が!」


 泥棒なんてするつもりはなかった。けどスキルを手に入れることができたと知った時は嬉しかった。けどサブレさんの気持ちを考えてはいなかった。あのカードはサブレさんの言葉をきっかけに光りだした。それは間違いないと思う。けど本当にこんなことになるなんてわからなかったんだ。


「お前が手に入れたそのスキル。俺が昔から一番欲しかったスキルだ、それをお前に盗まれるなんて思いもしなかった」


「許してください、そんなことをするつもりはなかったんです」


「丁度いい機会だ」


 涙で視界が滲む。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ