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69話

 


 スパスパと斬られた岩石が複数の音を立てながら地面に落ち轟音を上げた。


「サブレさん本当にすごいですね」


 僕は思わず拍手していた。


「疲れた」


 短剣から伸びた太い雷みたいなそれを前後左右にコントロールしている。


「それに触れるとさっきの岩石みたいに斬れちゃうっていうのはさっき教えてもらったんですけど。それでどのナイフを使っても同じなんですか?それともいいナイフのほうが切れ味がいいとか?」


「よく気が付いたな」


 サブレさんは少し驚いたような顔をして振り返った。


「俺も全く同じことを考えて実験してみたんだが、やはり持つ物の切れ味によってこれの切れ味も違う。安物のナイフを使ってやってみたらかなり切れ味が悪くて断面がギザギザだった」


「ということはいまお持ちの短剣は相当素晴らしいものなんですね」


「わかるか?」


「正直僕には武器の良しあしは分からないんですが、僕の知っているサブレさんなら、それがわかったらかなり質のいい武器を使って攻撃力を高めるはずだと思いまして」


「その通り!こんなところで金をケチって死んだら元も子もないからな。使うものによって威力が変わるなら金をかける価値は十分にある、この「村雨」にはな」


「むさらめ、ですか。そういう名前を付けたんですね」


「名前がないとやはり不便だからな。まだ完璧に仕上がったわけじゃないが合ったほうがいいと思ってな」


「絶対にそのほうがいいと思います。ところで「むらさめ」っていうのはどういう意味なんですか?聞いたことがない言葉なんですが」


「別に意味なんてないさ、俺が知っている名刀の名前を付けてみたんだ。これは斬撃の特性を持っていながら相手に向かって飛ばす「飛燕」とは違って自分自身と接続し続けることで避けられたら終わりというデメリットを排除することができる技だ」


「本当にすごいと思うんですけどサブレさんの額に汗が」


「そう、しかし魔力を維持し続けなければならないというデメリットがあるから非常に疲れる。恐らく過去にも同じことを考えたやつはいるはずだ。しかし今現在これが定着していないのは魔力の消費量がデカいせいだ。といっても技というのは使いようだ、これだって瞬間的にはかなり効果があるはずだ」


「なるほど、使い方を考えて正しい使い方をすればいいわけですね」


「その通り。これだって例えば周囲を敵に囲まれた時には仕えるはずだ飛燕と違ていちいち狙いを定める必要がないから適当に振るっても多くの敵を一瞬で切り裂くことができるはずだ」


「さっき見たところその村雨は距離を変えたりもできるから相手が大勢であればあるほど効果を発揮するということですね」


「そうだ。だからいざというときに使えるようになっておかないといけない。昨日みたいに気がついたら敵に囲まれていたなんてことがあるかもしれないからな」


「サブレさんは本当にすごいですね」


「なにがだ」


「先々のことをちゃんと考えていて、考えているだけじゃなくてちゃんと行動していてすごいと思います。昨日思ったんです特級宮廷魔術師になるということのすごさを。普通の人を相手にするときはすごく威張っている兵士たちがサブレさんが怒りだした途端に小さくなって、泣いている人もいました。すごい変化だと思います、それをサブレさんは自分の力で手に入れたんだなと考えると本当に尊敬します」


「別に俺は凄くなんか無い。この世界に生まれた瞬間から俺は普通以上のものを与えられていた。与えられたものを使っている、ただそれだけだ」


「いえサブレさんは本当にすごいと思います」


「それはもういい。それよりあの野菜売りとエニグマだ、やはり見つかっていないようだな」


「はい。何の連絡も来ていません、昨日、兵士の人たちにも手伝ってもらってあれだけ探して全く見つからなかったので、やはり今日も探し続けても難しいかもしれません」


「そうか………やはりあいつは相当おかしい奴だったな。気がついたらいつの間にか姿を消していてその代わりに書置きだけを残してな」


「「驚いた?驚いたならごめんごめん、野菜は全部上げるから許してね」って書いていましたね」


「書置きがあったということはあらかじめ書いてあったのを越して消えたということだ。あのカードが光ってから兵士たちが来るまでの間に紙とペンをとって書いてから逃げるなんていうのは不可能じゃないが難しいだろうからな」


「やっぱりあの仮面の野菜売りは分かっていたんですね、ああなることを」


「そう考えるのが一番自然だろう、誘導されていたとしか思えない」


「そうですよね」


 僕はひと呼吸置いた。


「僕、一晩寝て思ったことがあるんです。あのエニグマのカードが無くなったこととも関係あるかもしれません」


 言った。




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