64話
「野菜を買うのはいいが一体どの店で買えばいいんだ?」
「そうですねお店はたくさんありますね。野菜を売っているお店だけじゃなくて果物だけを売っているお店もありますね。どこのお店がいいとかわかる?」
僕はコロネさんに聞いてみた。最初は敬語だったけど、同じ年ということが分かったのでいまは普通に話している。
「ごめんなさい、私はこっちの方で買ったことがないからわからないの。いつもこの裏の通りのところで買っているから」
そうだ、確かさっきそう言っていたんだった。
「まあ野菜なんかどこでも大した違いはないだろうからどこでもいいか」
「お兄さんどうぞどうぞ迷っているんだったら私の店にどうぞ」
後ろの方でやけに響く男の人の声が聞こえたので振り返ってみた。
「あの店はないな」
「そう、ですね。ないですね………」
おかしい、店主の人が明らかにおかしい。
木の仮面をつけている。お爺さんがものすごく笑っている木の仮面だ。それに魔法使いがよく着ている黒いローブを頭からずっぽり被っていることでさらに怪しさを増している。
「ないなんてことないよ。ほら見ていって見ていって安いよ安いよ、野菜やすいよ安っぽい野菜だよ」
「いま安っぽいって言いましたよね?」
「言ったな。なんだあいつ明らかにおかしいぞ」
「おかしくないよおかしくないよ。今日は特別セールだ特別セール、魔術師のお客さんにだけの特別セール。全品半額だ!どうだいどうだい一回見ていったらどうだい、見るだけならタダだ、どうだいどうだい見ていってくれよ」
「半額、本当か?」
「本当だよ本当だよ私嘘つかないよ」
「あいつ同じ言葉を2回繰り返すな。なんかあれがイラっとくるな」
「サブレさんもですか?実は僕も少し思ってたんです」
「イライラはよくないよイライラは。そういう人は野菜をいっぱい食べたほうがいいよ野菜をいっぱい食べたほうがいいよ」
「わざとやってんじゃないのかあいつ」
「半額だよ半額どうだいどうだい魔術師限定の半額だ。さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい」
「あれ?サブレさん、半額って言ってますけど値札が出てませんよ」
「確かにそうだな。あれだといくらからの半額なのかがわからないぞ、もしかしたら最初の値段が普通の値段の倍以上高く設定してあるっていう詐欺かもしれないぞ」
「ええ!?そんなことあるんですか?」
「詐欺じゃないよ詐欺じゃないよ。信じていいんだよ、なんてったって私の名前はアイビリーブマイハートっていうんだよ。信じるしかないでしょお客さん」
「悪いことはすべきじゃない」
僕の後ろに隠れながらウミカが言った。
「Oh!なんて正義感に溢れたLadyだ。いい目をしてるじゃないか。怖い、お兄さん怖いなあ」
「それよりお前」
「なんだいどうしたんだい?ついにようやく私のところで買う気になったかい?」
「お前さっき魔術師は半額っていったな」
「そうだよそうだよお得でしょ?ここはもう買うしかないでしょお兄さん」
「どうしてお前は俺が魔術師であることを知っている?」
「あっ!」
サブレさんの言葉に背筋が寒くなった。確かにこの人はどうしてそれを知っているんだろう、見た目ではわからないはずだ。
「俺はお前みたいにローブを着ているわけじゃないから見た目では魔術師だとは分からないはずだ。それなのになぜわかった?」
「うふふふふふふふ………」
笑い声に怖さを感じた。




