表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/234

60話 -正しさとは-

 


「あ………」


 駄目かもしれない、そう思った。



 野菜や果物の露店が立ち並ぶ教会への通りで僕たちは剣術の道場を見学するために待ち合わせた。そしてサブレさんとウミカが出会った時の雰囲気でこのふたりはまだ分かり合えていないということが凍り付いた空気でわかった。


 てっきり僕はウミカがサブレさんに対する気持ちを変えてくれたんじゃないかと思っていた。あの日病室で僕は自分が思っていることをしっかりとウミカに伝えたからだ。


 さっきサブレさんにもそう言ってしまった、きっと大丈夫ですと言ってしまった。どうしよう、なんとか、なんとかしないと。


「ウミカ良かったね、サブレさんが剣術の道場まで一緒に言ってくれるってさ。ほらお礼を言って」


 自然と僕は早口になっていた。


「ありがとうございます」


「………………」


 サブレさんは何も言わない、ただウミカのことをじっと見ている。ウミカも見ている。まるで獣同士が睨み合っているみたいだ。


「いや、本当に天気も良かったしいいよね」


 明るく言ってみたけど凍り付いた空気は少しも溶けたりはしなかった。


「前より身長が伸びたか?」


「どうでしょうか、自分ではわかりません」


 ふたりが会話を交わした。


「ですけど以前リシュリーさんに教えてもらった剣術を使うときの体の使い方は毎日繰り返し練習しているので上手になってきたと思います」


「練習?練習してどうするつもりだ」


「いざという時に使えるようにしたいと思っています。残念なことですけど世の中は許せないことが多いので」


「許せないことってのはなんだ」


「暴力です。この世の中は決していいとは言えません、力のある人間がない人間を痛めつけて、殺して。それでも力のある人間が罰せられることなく平然と回っていく世の中はおかしいです。そんな力の使い方はあってはならない、暴力は罰せられるべきです」


「そのために剣を使うか。暴力を赦せないから暴力を使うつもりか」


「暴力に対抗するためには仕方がありません。正しいことが、正義が何よりも大切だと思っています」


「正義なんて見方によって変わるものだ、一概に言えるものじゃない」


「それは私もそう思います、けどそうじゃない場合も多々あると思います。私が是正していきたいのはそのことです」


「それを判断するのはお前ということか。あまりにも傲慢だとは思わないか?」


「私は特殊スキルを手に入れました」


「時間を遅くする能力だったな」


「そうです。私はこれは神様が私にくれたプレゼントだと思っています。だから私は自分が正義だと思うことを頂いたこのスキルを使ってやっていくつもりです。神様は私が考えていることを認めてくださったからスキルを預けてくださったのだと思います」


「まるで狂信者の言い分だ。自分が正しい、自分の言うことは絶対だって言ってみたいに聞こえるぞ。なんだお前は神様の声でも聞いたのか?神様から直接言われたのならわかるがな」


「いいえ。けど、もし私が間違ったことをしたのなら神様が私に何かメッセージを頂けると思います。そうなったら自分の行動を悔い改めればいいのです」


「ずいぶんと他人任せだな」


「私が何をどうしていくかは私自身が決めますので決してそんなことはありません。私情ではなく正しいかどうかを考えて行動していくつもりですが、万が一間違った行動をしてしまった場合のことを言っています。きっと神様は見守ってくださっているはずです」


「それじゃあ間違った行動をしているのに神様がメッセージをくれなかったら?あるいは神様からのメッセージにお前が気が付かなかったら?そうしたらお前は間違った道をそのまま突き進んでいくわけだな。間違った道を間違っていることに気が付かないまま、神様から何のメッセージも受け取っていないからこれは正しい道なんだと思い込んでな」


「そうはならないと思います。きっと神様は見守ってくださっているはずです」


「それが他人任せだというのだ。間違ってもそれは神様がそれを教えてくれなかったからだと言ってるように聞こえるな」


「私の行動の責任はすべて私にあります。それにしっかりと何が正しいのかを考えながら行動していけばそれほど間違った道を選ぶものではないと思います。困ったときは自分だけで考えるのではなく兄やほかの信頼できる人たちに相談すればいいのですから」


「そうか?過ちを犯すのが人間というものだぞ。もし仮にそのスキルが神様からのプレゼントだとしてもお前自身は人間だろう。間違ったとしても何の不思議もない」


「そうはならないと思います」


 息が吸えないくらいの緊張状態だ。どうしてこんなことになっているんだろう、ただ3人で剣術の道場を見学に行くというだけなのにどうしてこうも2人はわかりあえないんだろう。


 その時、微かな悲鳴が聞こえた。


「ウミカ!」


 飛び出していくウミカがスローモーションのように見えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ