52話 -突入-
「魔銃ですか!初めて見ました。なんかものすごいスピードで弾が発射される武器なんですよね?」
L字型の真っ黒なごつごつした手のひらサイズの金属製の物質。魔銃だと聞いたからなのか、なんだか恐ろしい雰囲気を感じる。
「リソン特製は普通と違う。すっごく強力、なはず」
「はず?はずっていうのは……」
「作ったけど試してない。試してないしどんな風に作ったかも忘れた」
「えぇ!?大丈夫ですかそれ」
「リソン特製だから大丈夫。任せて」
「そう、ですか」
なんだか変な不安がある。
「あ、リソンさんって魔銃を作れるんですね」
なんだか当たり前みたいに感じていたけど、魔銃を作れるっていうのは凄いことなはずだ。
「私は魔具師」
魔具師っていうのは魔道具を作る仕事の人だったはずだ。
「ダンジョン産を超える魔道具を作る、それが私の生きる目的」
「そうですか」
ウミカに袖を引っ張られている感覚。
「ところでこのお店のことはどうしますか?本当に裏口から入ってみる気ですか?」
「もちろん」
シャキーン!と魔銃を構えてポーズをとった。
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ギギギという音を立てながら裏口の木製の扉があっけなく開いた。正面の扉には鍵はかかっていなかった。ここの店主がもともと裏口に鍵を掛けない人なのかそれとも強盗が開けたままにしていったのか。
心臓が高鳴る。
僕とウミカの顔を見回してうなずいたリソンさんが魔銃を構えたまま建物の中に足を踏み入れた。
しんとした空気のなかに僕たちの呼吸と忍び足の音だけが響く。できる限り音を出さないように気を付けているつもりだけど、結構音が出てしまっている気がする。気付かれているんじゃないか?隠れて待ち構えていきなり襲い掛かって来るんじゃないか?
心臓が高鳴る。
広い部屋に入った。たくさんの椅子とテーブルがある独特のにおいがする部屋の中には誰もいなかった。音もしない。
「あっ」
リソンさんの声につられてカウンターの中を見るとオデコが大分広いおじさんが仰向けに倒れていた。
「ダクゾ、寝てる」
「寝てますね」
「寝てるね」
はっきりとわかる。なぜなら鼻ちょうちんが大きくなったり小さくなったりしているという誰が見てもこのひとは寝てるな、という状態だったから。
「はぁ………」
「ダクゾ、ダクゾ」
「ん、ん、んあ!?」
リソンさんが体を揺すると驚いたように目を覚ました。
「リソン、お前なんでこんなところに、っ痛」
起き上がろうとしたが、声を上げてまた床に寝てしまった。
「店が閉まってるから来た」
「ちくしょう、もう開店の時間か」
「どうしたの?」
「昨日の夜中に俺は今日使う分のスープを仕込もうと思ったんだ、そんでギューギューモウモウの骨を寸胴に入れようと持ち上げた瞬間、腰がギクッっとなってそのまま床に倒れちまったんだ。だけどひとりじゃおきあがるのは無理そうだからしばらくそっとしておこうと思ってたらいつの間にか寝ちまったみたいだ。くそ、腰が痛てぇ………」
「アルバイトの人は?」
「そうそうそれだよ、それ、あいつおとといからいきなり来なくなったんだ。あの野郎め、辞めるなら辞めるで一言くらい言ったらどうなんだ。そのせいで俺は仕込みから注文から全部一人でやんなくちゃいけなくなったんだぞ」
その大変さを物語るようにダクゾの目の下は真っ黒だった。
「すぐに逃げ出されるような使い方するから。この店のアルバイトは入ってもすぐやめる」
「最近の若い奴は根性が無ぇ!俺なんかたった一人で寝ねぇでこの味を作り上げたんだぞ。それを教えてやってんだから少しくらい厳しいのはしょうがねぇだろうが全く。なんだってんだどいつもこいつも本当に自分の店を持とうっていう気概がーーー」
「お腹すいた。ゴウメンは?」
長くなりそうなおじさんの話をリソンはすぐに中断させた。モルンとウミカにとって非常にありがたいカットインだった。




