50話
「お金を貸していただいてありがとうございました」
背が高くて銀色の髪色をしたお姉さんが優雅に頭を下げた。
「いえ、全然大丈夫です」
ベーカリーギイサを出て、あるいは追い出されて僕たちは犬たちと一緒に近くの公園のベンチに座っていた。
「絶対に返すから安心してください?今は大金貨しか持っていないがちゃんと細かい貨幣だって持っているんです。信じてください」
「はい信じます」
もちろんそうだと思う。大金貨しか持ってない人なんかこの世にはいないんじゃないかと思う。大金貨を持っていない人ならたくさんいそうだけど。だけどお姉さんは本当に信じて欲しそうだったので僕も真剣に返事をした。
「僕の名前はモルンっていいます、こっちは妹のウミカ」
ウミカが小さく頭を下げた。ウミカは結構人見知りなので最初はこういう感じなんだ。自分より年下の子供であれは違うんだけど、ふたりは僕たちよりも年上に見える。
「私の名前はサファイアですわ」
「リソン、よろしく」
「あ、よろしくお願いします」
さっきベーカリーギイサでお店の料理を「普通の味」と言っていた女の人だ。全身黒の服を着ていて身長は僕より少し高いくらい。もしかしたら僕もなにかズバズバ言われるんじゃないかと少し不安だ。
「あの店はひどい。犬を預かるにも金をとるなんて」
「前に見た時に犬を連れてきている人を見たので僕たちも大丈夫だと思ったんですけど、まさかお金がかかるとは思ってなかったので少し焦りました」
「結局少年たちは朝食を食べることができなかった。ということはわざわざお金を払って犬を預けるためにあの店に行ったということ」
「そういうことになりますね」
リソンさんの指摘に笑ってしまった。いったい僕たちは何をしに行ったんだろう。そしてとても面白い人だな、と思った。
「笑い事ではありませんわ!あのお店はひどいお店です。笑って済ませていたらいつまでたってもあのお店は成長しません。言うべき時にはきちんと言わなければなりませんわ」
僕が苦笑いしたことで再びサファイアさんの怒りに火をつけてしまったようだ。
「そんなことより、少年たちは空腹のはず、朝食はどうするつもり」
「えーと、そうですね。どこかほかのパン屋さんに行って美味しそうなパンを買って帰って家で食べるというのがいいと思うんですけど。パン屋さんならこの時間でもやっているでしょうし。ウミカはどう?」
「うん」
知らない人が二人もいるのですっかり縮こまってしまったウミカ。けどあの返事の仕方だと賛成してくれているのが分かる。
「それよりも私がもっといいところを紹介する。若いときは朝からもっとしっかりしてものを食べたほうがいい。パンなんてあんなパサパサなもの食べたってなんの力にもならない」
「は、はぁ………」
紹介?この朝の時間にしっかりしたものを食べれる店が開いていたかな。
「紹介ってまさかリソン、あの店じゃないでしょうね。あの店はとんでもなく臭いから私は絶対行きたくないですわ」
「とんでもなく臭い店?」
「大丈夫。臭いのは最初だけで慣れてしまえば全然大丈夫、近くには住みたくないけど。私が奢る」
「奢るってあなた、お金持ってきてないんでしょ」
「そうだった………でも私お腹すいた」
「お腹すいたってあなたさっき食べたばっかりじゃありませんか!」
「パンなんてあんなパサパサなもの食べたってすぐお腹すく」
リソンさんというひとはパンに対してなにか恨みでもあるんだろうか、さっきからめちゃくちゃ言っている。
「奢って」
「え!?」
「お金は後でサファイアがさっきのお店の分と一緒にまとめて返す」




