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49話 -ベーカリーで闘争を-

 


 声の方向を見ると店員さんと向かい合っている背の高い銀色の髪色をした女性がいた。


「ですからこの貨幣ではお会計できません」


「なんでですの!?これがお金じゃないとでもいうの!?」


 朝の優雅な雰囲気は一瞬にして消え去って店内の誰もが彼女を凝視していた。


「もちろんお金です。ですがあまりにも金額が大きすぎてお釣りを用意できないので、買うものに見合った貨幣を用意して頂かないと困ります。あと声が大きすぎるのも困ります。ほかのお客様にご迷惑です」


 店内から小さく「おおっ」という声が上がる。結構な勢いで女性のお客が詰め寄っているのにもかかわらず背の低い店員さんは少しも押されていなかった。


「なんか思ってたのと違う………」


 ウミカが呟いた。


 そう、それは僕も思う。なんでこんなことになってしまうんだろう、これじゃあサブレさんといるときみたいだ。サブレさんはいつも誰かと喧嘩をしているのでその時のことを思い出してしまう。


「大きいと言ってもお金はお金でしょ!今日はこれしか持ってきていないのだからこれでお会計して頂戴!」


「できません。常識的に考えれば分かっていただけることだと思います」


「私に常識がないとでもいうの!」


「そうはいいません。ただ、ふつうこういうお店に大金貨はねぇ、と少し思いはしますけど。知らないのは仕方ありません。両替商に行って両替してもらってくるかお家にでも取りに行ってもらえませんと困ります」


 店員さんが嫌な感じの笑顔で言ったのでお客さんのほうは遠くからでもはっきり分かるくらいに顔を真っ赤にした。


「ぐぐぐぐぐぐぐ………リソンも店員に何か言ってちょうだい!」


 さっきよりも声が大きくなった女性が隣にいる全身黒い色の服を着た背の低い女性に向かって言った。


「そんな大きな声を出さないでサファイア。寝てないんだから声が頭に響いてうるさい」


「そういうことを言えと言っているのではありませんわ!」


「だいたいにして、いま王都で一番の朝食を御馳走して差し上げますわ、とか言ったくせに結構普通の味だった。なんかこの雰囲気に騙されているだけ。これだったら串肉で十分」


「それは聞き捨てなりませんねお客様!」


 こんどは店員さんの声が大きくなった。それに声も大きくなった。


「なにこれ、ぜんぜん優雅じゃないよ。いまあの女の人、味は普通だっていってたよ」


「言ってたね………」


 せっかく大盤振る舞いして2,000ゴールドのAコースにしようと思っていたのになんだかそんなお金を出すのは嫌だな、と思ってしまった。冷静に考えてみれば2,000ゴールドは高い。


「はっきりと言ってたよ。なんかもしかしてなんだけど私たちこのお店の雰囲気にだまされてたのかな?」


「ちょっとウミカ。まだ食べてもいないのにそんなこと言わなくても」


「だって2,000ゴールだよ2,000ゴールド。パンで2,000ゴールドはおかしいよ」



 それは僕も思う。メニューにはAコースの内容が焼きたてパンとサラダとスクランブルエッグとベーコンとか書いてあるけどよく考えてみればそれにしても高すぎるかもしれないと思う。


 パンだったらパン屋さんでいいのを買ってもひとつ100ゴールドから200ゴールドくらいだと思う。しかもそのパンには上にベーコンが乗っているのもある。ということはたった200ゴールドでパンとベーコンは買えるということになってしまう。


「ちょっとウミカ、声が大きいよ」


 けれど今それはここでいうことじゃないと思う。店内は静かだからいくら小声で喋っていたとしても聞こえてしまう。


 あわてて2,000ゴールドの妖精みたいになってしまった妹を落ち着かせる。前まではどちらかといえば声が小さくて聞き取りにくいくらいだったのに、退院してから人が変わってしまったみたいだ。これもサブレさんが言っていた魔臓とかいうものの影響なのかな?


「そちらのお客様もお静かにお願いいたします!」


 怒られた。


 さっきまでの勢いはどこへやら。小さくなってしまったウミカに代わって頭を下げる。どうして優雅な朝食を食べに来て怒られているんだろう、僕たちは。


「リソン、あなたお金持ってきてないの?あなたが支払いをすればこの場は丸く収まりますわ!」


「財布自体持ってきてない。今日はサファイアがどうしてもっていうから寝てないのにわざわざ来てあげた。自分のお金だったらこんな雰囲気だけの店には絶対来ない」


「このビチグソ共があ!」


 店員さんの目と口が信じられないくらいに吊り上がった。


「うそでしょ………」


 それにもの凄く汚い言葉遣いだ。少し前まで僕たちはスラム街に住んでいたけどあれくらい汚い言葉遣いをするのはスラム街の中でもそんなにはいない。


 睨まれていた。


 あの店員さんの言うビチグソの中にはどうやら僕たちのことも入っていたみたいだった。


「僕!お金を立て替えます」


 ほとんど無意識に言っていた。


「モルン?」


 驚いているウミカの顔。


 ごめん、けどなんていうかもうこの場所から一刻も早く逃げたかったんだ。




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