48話 -ベーカリーで朝食を-
新しい家の扉を開けるとそこは朝日の街だった。
「そんなに引っ張らないでよゲレゲレ」
リードを付けた体の大きな犬に僕は呼びかけた。
「ウミカはリードを離さないでよ、話したらボロンゴとプックルとチロルがどっかに行っちゃうよ」
「うん………」
眠そうに目をしばしばしながら3匹の子犬を連れているウミカにも呼び掛ける。
「まだねむいよ」
「ウミカが言ったんじゃない「ベーカリーギイサ」のテラスで朝日を浴びながらおしゃれな朝食を食べてみたいって」
「いいました。たしかにいいましたけどねむいものはねむいのです」
ベーカリーギイサはパン屋さんなんだけどカフェもやっていてそこのお店で食事をすることはちょっとしたステータスみたいになっているオシャレなお店だ。
ちょっとまえなら恥ずかしくてお店の前を通ることもできなかった僕たちだけど、いまはお金もあるしサブレさんから買ってもらった服もあるので、恥ずかしくないくらいにはなっていると思う。
「ウミカは朝が弱いね、せっかくこんなにきれいなお日様が出ているのにもったいないよ」
「モルンが強すぎるだけだと思う。子供は寝るのが仕事だったはず」
よたよたと歩くウミカは子犬たちに引っ張られるようにして歩いてくる。いつもはあんなきれいなお店で朝ご飯を食べるなんてしないんだけど、今日はウミカが退院した記念ということで奮発してウミカがしたいことをしよう、ということで向かっている。
「けどボロンゴとプックルとチロルも元気だよ」
「私は犬じゃありません」
僕は笑った。
犬たちとはサブレさんが大金貨を落とした時に知り合った。ずいぶんと人懐っこくて慣れてくれるし、広くなった家にウミカとふたりきりというのも寂しいので飼うことにした。
「それにしても変な名前つけられたね君たちも」
「うーんたしかに変わった名前だよね、サブレさんはちょっと考えただけですぐにすらすら出てきてたけど、どこから思いついたんだろう」
犬たちの名前はサブレさんにつけてもらった。僕たちは犬の名前なんて付けたことがなかったからなんて付けたらいいかわからなかったから。
「最初は確かにちょっとあれだな、と思ったけど読んでいるうちにだんだんしっくり感じてきたな、ウミカはどう?」
「悔しいけど私もなんかいいような気がしてきてる」
「ちょっと!なんで悔しいのさ」
笑いながら進む朝の街はなんて美しいんだろう。ちょっと前までだったら夢みたいな光景を実際に体験できている。
「僕はいま幸せだ」
「モルンどうしたの?」
「別に、なんか思ったから言ってみただけ」
「ほらウミカ、なんかいい匂いがしてきたよ」
「こんなに朝早いのにもうお客さんがきてるなんてすごい。やっぱり人気店なんだね」
遠くに見えるベーカリーギイサの煙突からは煙がモクモクあがっていて、テラス席にはもうすでにお客さんが座っているのが見える。あそこの席は外にあるから特にオシャレな人がいつも座っている。僕たちはもちろん室内の見えないほうの席に座るつもりだ。
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「こちらの席へどうぞ」
髪の毛を後ろでくくった背の高いお姉さんに案内された僕たちはきれいなテーブルクロスのかかった円形のテーブル席に案内された。
「こちらがメニューです。朝食のセットメニューがお得になっておりますのでよろしかったらお選びください」
そういって早足でいってしまった。
「なんか緊張するね」
僕はなぜか小さな声になってウミカに話しかけた。
「うん、そうだね。なんか特別な感じがする」
お店を外から見ていた時の印象と同じで、食事をしているほかのお客さんはきれいな服装をしている。
「セットメニューがおすすめって言ってたね」
「ここれじゃない?一番最初のページに書いてあるよ」
「ふんふんふん、え!?」
「モルンどうしたの?」
高い!
手渡されたメニュー表を見て驚いた。朝食セットAが2,000ゴールド、Bが1,700ゴールド、Cが1,100ゴールドと書いてあった。串肉が1本100ゴールドなのに。
「なんでもないよ、どれを頼もうか?」
まさかこんなにするとは思っていなかった。余裕をもってお金は準備してきたのは払うことはできる。それにしてもオシャレなお店って怖いな、けど今日はウミカの退院祝いだからお金のことは気にしないでウミカには楽しんでほしい。
「えっ、こんなにするの?」
「心配しなくてもお金は十分持ってきたから大丈夫。せっかくだからこのセットのAを注文しようか」
「でも………」
「なんでですの!いったいなんでこれじゃ駄目ですの!?」
静かな店内に甲高い大声が響いた。




