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46話 -キレてますよ-

 


「秘密なんて、そんな、なにもありませんよ。ただ私はほかの冒険者よりも危機感というものが薄いんでしょう。あるいは夢を一刻も早く実現させた過ぎて周りが見えていなかったのかもしれません」


「まあ、もっとワインを飲んでくれよ。俺は飲めないからあんたが飲んでくれなきゃ減らないんだ」


 デカンタにはまだ半分くらいの赤ワインが残っている。


「あんたのことをギルドで聞いたよ」


「私のことをですか?」


「冒険者らしくなく真面目だという評判だった。ほかの冒険者みたいに痛飲は一切せずに毎日をほとんど同じようなリズムで過ごしているそうだな。受付のキルトが言うにはあんたが帰ってくる時間で、自分の仕事が大体あとどれくらいで終わるかの目安にしている、と言っていたぞ」


「そうですか、別にそういうつもりではなかったんですか」


「キルトが言うにはあんたにはおかしな所があるそうだ」


「なんでしょうか、ずいぶんと怖いですね」


 笑っているようだが全く笑えていない。


「冒険者という職業は水物だ、獲物がとれる日もあればとれない日もあって当然だという。しかしあんたはいつもホーンラビットをだいたい同じ数だけ毎日のように持ってくる。ホーンラビットを専門に狙っている冒険者はほかにも何人もいるが安定して毎日持ってくるのはあんただけらしい」


「………………」


「血抜きという手間をかけているから、他のやつらよりは獲物をとってこれなくて当然だと思うんだがな。なにかコツがあるのか?」


「………………」


「それとも何か特別なスキルでも持っているのか?」


「………」


「四大元素の風、土、水、火に当てはまらない特別な効果を持つスキル、特殊スキルをお前は持っているのか?」


「………」


「どうした?食が進んでいないようだななにかあったか」


「例え私がそれを持っていたとしてもあなたに言う必要はない、そうじゃありませんか?」


「それは確かにその通り。あんたの言う通りだ、しかしこの世界は実に不条理だ、知っているか?特殊スキルを持っている一般人は見つかり次第、貴族か国の管理下に置かれるということを。国のお役に立つためには仕方がないこと、いや、国の言い分では国の役に立てることを感謝するべきだ、ということらしい」


「ずいぶんと酷い言い分ですね」


「そう酷い。しかしこれが現実だ」


「酷いのはあなたも同じだ」


「俺?」


「あなたは今日わたしの夢を壊しにやってきた!あなたは私のことを拘束するつもりで来た。国が決めたふざけたルールという力を使って自分の思うがままに私の人生を動かすために来た!はっきり言ってくれ!あなたは今日私のことを奴隷にするために来たんだろ!」


 激高したロクサンは両手でテーブルを思いきり叩いた後で立ち上がり、サブレを睨みつけた。


「全然違う」


「ち、違う、だって、いや、いまあなたはそういう話を」


「大きい声を出すな、ここはそういう場所じゃないぞ。マナーを守れ」


 辺りを見回すと、いい服を着た大人の男たちも店主も迷惑そうな顔をしながら自分を見ていることに気が付いた。


「いいから座れ、あんたのせいで俺がこの店にこれなくなったらどうする。せっかく見つけたお気に入りの店なんだぞ」


「す、すいません」


「ちゃんと説明してやるから」


「わかりました」


 サブレの反応を見て自分がどうやら思い違いをしていたらしいということに気が付いてロクサンは人生でこれ以上ないほど自分が恥ずかしくなった。


「せっかくのカツレツもすっかり固くなってるぞ。命を頂くことに対する敬意、とか言ってたくせにせっかくの料理をうまい状態で食わないなんて言ってることがおかしいぞおまえは」


「すいません、いただきます」


 猛烈な勢いでロクサンは残った食事をかっ込み始めた。



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