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44話 -不自然な冒険者-

 


「あんたがそうか………」


 店内に入ってきた男に声をかける。


「ロクサンと名乗っています。ギルドの知り合いから聞きましたが何でも私に話があるそうで」


 男は小柄だがいかにも冒険者というようながっしりとした体格をしている30代前半位の年齢だ。喋り口は落ち着いていて脳筋ばかりの冒険者の中では珍しいタイプだ。


「サブレだ。知り合いからあんたのことを聞いて興味を持ってな、一度話を聞いてみたいと思ったんだ。仕事終わりで腹が減っているだろう、好きなのを頼んでくれ。頼んだのは俺だから今日は俺が全て払わさせてもらう」


 メニューを差し出した。


「それでは遠慮なく。この店の料理は美味しいと評判で一度来てみたかったのですが、なにせ私に払える金額ではないので残念に思っていたのです。今日ここに来たのはあなたにそう言ってもらえることを期待してのことです。もし割り勘だなどといわれたらすぐに引き返していた所です」


 少しおどけながらメニュを受け取ると真剣な表情で目を走らせた。


「もしかしたら冒険者の格好の時のまま来るかもしれないと思っていたんだ」


「まさか!ここはそんなお店じゃありませんよ。いくら冒険者といってもそれくらいのことはわきまえています」


 安っぽさはあるものの襟付きのシャツを着た男が笑いながら言った。この店はドレスコードなどはないが、かといって安酒を飲みながら大騒ぎをしながら腹が膨れればいいというような飯を食うような店ではないので安心した。


「注文してもいいですか?」


「もちろん」


 手を上げるとすぐに店員が来た。


「クレアラピッグのカツレツと固焼きパン、あとはグリーンサラダをお願いします」


「ワインも飲んだらどうだ?」


「いいですか?それでは赤ワインもお願いします」


「俺はいつものやつ」


 一礼した店員が去っていく。


「それで話というのは一体何でしょうか。普段あまり身分の高い方とは話さないので緊張してしまって」


「知り合いから聞いたんだが、あんたは獲物を倒して肉としてギルドに売るときにわざわざ血抜きとかいう下処理をしてから持ってくるそうだな」


「はい、そうです」


「なぜわざわざそんなことを?なんでもわざわざ手間をかけたところでギルドが買取る金額は変わらないそうじゃないか」


 肩をすくめた。


「ただの趣味みたいなものです。目の前にある肉がどんどんまずくなっていくのが気持ち悪くて見ていられないんですよ。私はたとえ魔物であっても命を頂いたことに対する敬意というのは必要だと思っているんです」


「あんたはソロで冒険者をやっていると聞いたが?」


「はい、そうです」


「しかも持ってくるのは大抵ホーンラビット。魔物としては弱くて数が多いがその分、倒した時の金も安い。つまりはたくさん倒してなんぼという魔物だ。ずいぶんと割に合わない趣味だな」


「自分でもそう思いますよ。全く困った性分です」


「なぜ冒険者に?ホーンラビットしか倒せないくらいの実力であれば、それほど才能はないと思うんだがな。それに冒険者しかできないようなタイプには見えない。街の中で働くという手段もあるんじゃないか?」


「ええもちろん、私としても自分に冒険者としての才能があるなんて少しも思っていません」


 苦笑いを浮かべた。


「だったらなぜ」


「確かに街の中で働くのは安全ですが、稼ぎとしては冒険者のほうが段違いに多い。それはホーンラビットしか倒せないくらいの実力であっても変わりません。私には叶えたい夢があるのです、そのためには金を稼がなければなりません」


「夢、とは?」



 美味しそうな湯気を立てた料理が運ばれてきた。


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