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43話 -兄と妹の意見の相違-

 


「退院できてよかったね。忘れ物は無いようにしっかりと確認しようね」


 ふたりきりになった病室で箱に荷物を詰めながら僕は言った。


「うん。もうすっかり良くなったから最後に病院の先生と看護婦さんにありがとうございましたって言いたい」


「それはすごくいいと思うよ。サブレさんにも感謝しないとね」


「うん………」


「ウミカどうしたの?」


「私あの人のこと好きじゃない」


 心臓が跳ねる音がした。


「どうして?この病院にこれたのはサブレさんのおかげだよ。この病院はふつうはお金持ちの人しか入れないんだ」


「だけど………」


「なんで?教えてよ」


「だってあの人はモルンを殺そうとした」


 力強い目に涙がうっすらと溜まっている。


「そうかもしれないけど僕は大丈夫だったんだ。むしろ前よりも体の調子はすごくいいんだ」


「それは運が良かっただけ」


「そうかもしれないけど実際に今僕は元気なんだからそんなこと考える必要はないと思うよ」


「モルンが死んでいたら私はひとりぼっちになってた」


「それは違うよ」


「何が違うの!だってそうでしょ」


「サブレさんがいなかったら僕らふたりとも死んでいたんだ」


「………」


「いいかい?あのままだったらウミカが最初に死んでその次に僕が死んでいた。そうじゃない?だってお父さんもお母さんも死んでしまった僕にお金を買う手段なんてないんだから」


「………」


「それなのに僕たちはいまこうして元気でいられるんだ、それはサブレさんのおかげだよ。ウミカが入院している間にサブレさんは新しい家を見つけてくれたんだ、雨漏りの酷いあの家だと病気になるからって言ってね」


「………」


「もし僕があの時に死んでいたとしても、サブレさんはちゃんと約束を守ってくれていたと思う。そうすれば少なくともウミカだけはちゃんと病気の治療をしてもらってお金ももらえていたはずだと思う。それにあの時にサブレさんの提案に乗るって決めたのは僕自身で、やらないことだってできたんだからそれについてサブレさんを責めるのは間違っていると思う」


「モルンはあの人のことをいい人だと思っているかもしれないけど私はそうは思わない。自分の目的のためにはほかの人を簡単に切り捨てる冷たい人だと思う。だからあまり信用しない方がいい」


「そんなのみんなそうじゃない、違う?」


「違う」


「違わないよ。誰だって自分とか自分の大切な人が大事で、そのほかの人のことなんてそこまで考えたりしないよ。そんな人は神様かなにかで僕たちは人間なんだ」


「あの人がやったのはお金の力を使った人体実験。絶対に許されることじゃない、モルンはなんであの人のことを庇うの?おかしいよ、あんなの絶対に間違ってる」


「僕はサブレさんに感謝しているんだ。サブレさんは僕たちに生きるチャンスをくれたんだ。それにちゃんと約束を守ってくれた、やり方は少し変わったものだったけど助けてくれたのは間違いない」


「そんなことない」


「それならほかの人が何かしてくれた?この素晴らしい病院に入院していなかったらウミカは死んでいたと思う。けどだからといって他の人が何かしてくれたわけじゃない。何もしないことで僕たちは死んでいたんだ、だから何もしないことがいいことってわけじゃないよ。今僕たちは生きてる、それが答えだよ」


 ウミカはその日ひとことも僕と口を利かなかった。


 僕とウミカはお世話になった人たちにお礼を言ってサブレさんが新しく用意してくれた家に戻った。



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