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35話 ー3匹の子犬ー

 


「え!まだ固まったままだ、どうしよう……」


 モルンが戻ってきても相変わらずサブレは立ち尽くしていた。


「時間を操る魔法だって?………それはまさに主人公の………」


「サブレさんちょっといいですか。あの、さっきこのワンちゃんに大金貨を………サブレさん!」


「どわ!なんだモルン驚かすな」


「すいませんそんなつもりじゃなかったんですけど。あの、さっきサブレさんが持ってた大金貨を落としたのを見たので拾ってきたんです」


「大金貨?ああそうかいつの間に………ってベトベト!」


「そうでしたすいません、いま拭きます。危うく水路に落ちそうだったのをこのワンちゃんが拾ってくれたんです」



 サブレの手からさっきの大金貨を受け取るとモルンは自分の服の裾で包んで何度か拭うと大金貨は本来の輝きを取り戻した。


「ワンちゃんってそいつのことか?そんな上等なもんじゃなくてただの野良犬じゃないか」


「でもすごく賢いんですよ。僕の言葉がわかっているみたいなんです。それで拾ってくれたお礼にご飯を食べさせてあげるって約束したんです」


「あーもう放っておけそんな野良犬。近づくとノミをうつされるぞ」


「えぇ!?でも約束したんです。けど僕お金を持っていないのでサブレさんに貸してもらおうかと思って」


「ヴーーーワンワンワン!!」


「黙れ野良犬!」


「ちょっとサブレさんその言い方はひどいですよ。せっかく拾ってくれたのに」


「お前もそんなことでいちいち野良犬を引き連れてくるな」


「引き連れ……え!?」


 サブレの言葉に違和感を感じたモルンが後ろを振り返るとそこにはさっきの犬を小さくしたような犬が3匹ほどついてきていた。


「こんなにたくさん。君はずいぶん子沢山なんだね」


「わう!」


「それよりモルン!今はそんな野良犬のことは放っておけ、それよりもお前の妹のことだ。間違いないんだろうな魔法を使えるようになったのは」


「そのことなんですけど、僕にはいまいちよく分からないんです。ウミカは時間が遅くなると言っていますけど僕にはそのことを感じられないんです」


「それならお前の妹は何を根拠にそう言っているんだよ」


「ウミカが言うには落ちる水の速さが違うんだそうです。手のひらにすくった水を一滴ずつこぼしていく途中に魔法を使う、と思った途端に今まで落ちた水滴の速さよりも明らかにゆっくりと水滴が落ちていくって言うんです。ただ実際に見せてもらっても僕にはそれが全くわかりませんでした」


「水滴の落ちる速度………しかし落ちる粒の大きさによって変わるんじゃないか?勘違いということも………」


「けどそれってそんなに大事なことですか?僕にとってみればサブレさんの使う魔法のほうが全然すごいような気がするんですけど」


「ばか!お前ばか!とてつもなく重要だわ!」


「えぇ………そうなんですね」


「いいか!時間を操るなんてとんでもなく格好いい魔法じゃないか、いかにも主人公的な魔法じゃないか」


「主人公………的?」


「どう考えてもそうだろ。それに比べて俺が一番得意なのは土魔法だ、土魔法。いかにもモブ的な魔法だろ土なんて」


「もぶ?その言葉は分からないですけどサブレさんの魔法はすごいですよ」


「いいんだそんな気休めは」


 サブレはため息をついた後で座り込んだ。


 なぜか大分落ち込んでいるようだがモルンにはその意味が全く分からない。サブレはモルンが知る限り最高の魔法使いだ。あの砂嵐の魔法を初めて見た時の衝撃は今でも忘れられない。あれほど凄いことが一人の人間にできるなんて信じられなくて体が痺れた。


「サブレさん、さっきもいいましたけど僕にはウミカの魔法が全然分からないんです。なのでもし良かったらサブレさんが直接ウミカの魔法を見てみるのがいいんじゃないですか?もしかしたらなにかの勘違いかもしれないですし」


「直接!?それはだめだ」


「なぜですか?」


「お前の妹は俺のことを恨んでいるから直接会うのは危険だ」


「まさかそんなことないですよ」



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