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29話 -気持ちの問題-

 


「説明してもらおうかメフィレール」


 リシュリーのいなくなった病室で俺に重しを背負わせた学友に向き合う。


「何がだい?私にはなぜ問い詰められているのか分からないな」


 きょとんとした顔に腹が立つ。


「分からないはずがないだろ、さっきの話の流れはお前が完全にそうなるように持って行っただろう。なんで俺が貧しい人々に何かしてやらなきゃならんのだ」


 こいつは分かっているはずだ。確かに可哀そうだとは思うが、だからといって別に何かしてあげようだなんて俺が考える人間じゃないことは分かっているはずだ。


「だって君は貧しい人たちのことをすごく大切に思っている心の優しい人なんだろ?君の演説を聞いてそう思ったからさ」


「んなわけあるか!俺は自分が得にならないことは大っ嫌いなんだよ」


 口元に手を置いて笑った。


「笑うな!」


「ごめんごめん。いやまぁサブレが言っていることは正論だと思ったよ、国が買い取るにしても適正な金額で買い取るべきだとは私も思う。けどねえ………あそこまで言わなくてもいいんじゃないかと思ったんだ。うなだれているリシュリーを見ていたらサブレのことがなんとなく悪人に見えて、だから助けてあげたかった」


「ちょっと待てよ、確かにすこし言い過ぎたかもしれないとは思ったけど俺が悪人ってどういうことだよ」


「わかんないけど気持ちの問題かなぁ、人って正しさだけでは測れないよね、やっぱり」


「やっぱり、じゃあねえよ」


「そんなに嫌なら断ればよかったじゃないか、なんで引き受けちゃったのさ。今から断るのはさすがにひどすぎるよ」


「いやだってな、あの熱量と目力を浴びてみろよ。本気の人間の圧力って怖さを持っているんだってのを初めて知ったよ」


「理由はなんにせよ引き受けてしまったんだからやるしかないんじゃないの?嘘をついたりしたら後が怖いよ」


「そうだよな………嘘なんか一番嫌いそうなタイプだし」


「そうそう、きっと逆上して殺しに来るんじゃないの?」


 メフィレールは笑った。


「冗談になってないんだよ!」


「ごめんごめん、鬼の形相のリシュリーに追いかけられているサブレの姿を思い浮かべたら面白くってね。正直言ってこれは私の責任でもあるから手助けさせてもらうよ。何をするにしろ人手が必要そうだからそこにいるグルトとブルガを好きに使っていいよ」


「こいつらか………うーん、というか何をするべきか、何をすればリシュリーは納得するんだ」


「リシュリーにあれだけ言っておいてサブレ、君自身もお金に困ったことはないよね?」


「うっ!やっぱり気が付いていたか」


「そりゃあ気が付くさ、だからこそずるいと思ったね。自分のことを棚に上げてリシュリーを責めたりして」


「もうそのことは言わないでくれよ。そのおかげでなんだかよくわからない仕事を引き受ける羽目になったんだから」


「グルトとブルカはどう思う?恵まれない人たちについては君たちの方が詳しいだろ?」


「そうだ確かにその通りだ!」


「なんだい?また何か変なことを思いついた顔をしているね」


「おいグルト、ブルカ、お前たちに1億渡すからリシュリーが納得するような恵まれない人たちを助けることをしてくれ」


「いやちょっと待ってくれなんだそれはいきなり過ぎるだろう!」


 グルトが驚きの声を上げる。


「別にいきなりっていうほどでもないだろ。話の流れは一緒に見て分かっているわけだし。そうだ、何も俺が直接動く必要はないよな。結果としてリシュリーが満足すればいいんだから」


「強引すぎる。もし俺たちが金を持ち逃げしたらどうするつもりだ」


「そうなったらなったで、それは仕方がないことだ。お前たちが俺に代わってリシュリーに追いかけられてくれ。あいつの身体強化は結構強力だから頑張って逃げろよ」


「さすがにそれは無責任すぎるよサブレ。手伝わせるのはいいけど基本的にはサブレがやってくれないとリシュリーも納得しないと思うよ」


 このままだとサブレに押し切られそうだと判断したのかメフィレールが割って入った。




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