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21話 -殺し屋とおはなし-

 



「組長のオニオルがいると思ったか、残念だったな。あいつはお前らが戻ってくることを予測してトンズラしたぜ」


 メフィレールがひとりでブルーノドザンダ組のアジトの扉を開けると、そこには二人の武装した男が立っていた。


「君たちだけかい?」


 辺りの様子をゆっくりと見ながら言う。


「人数が多ければいいってもんでもない。特に俺たちみたいに金で雇われた身分だと多すぎると分け前が減るってこともあるんだ」


「ということは君たちは殺し屋だね」


 恐れを含まない声だった。


「ああそうだお前らみたいな生意気な奴らが現れて、どうしようもできなくなったときに俺たちが呼ばれる。いわゆる専門家ってやつだ。お前はずいぶんとラッキーだ。俺たちは無意味に相手を苦しめるようなことはしない、ただ必要な仕事だけをするのさ」


「専門家、か………魔道具を使って戦うタイプだね。魔道具は魔力のない人間でも魔法と同等の威力を出すこともできるから便利だ。けれどその反面、あらかじめ魔石などで魔道具に魔力を充填しておく必要があるのが弱点だ」


 男たちに動揺は無い。それは自分たちの格好を見れば明らかだからだ。顔にはゴーグルは付けているし手には魔銃を持っている。


「そうだよく知ってるな。お前たちみたいに生まれつき魔力を備えているやつにとっては、さぞかしみっともなく見えるだろうな」


 声にわずかな悔しさ。


「そんなことはないさ」


 さらりと言ったメフィレールの言葉に男の目元がピクリと動いた。。


「手段は関係ないよ。ようは魔力を起こすという結果が出せればいいのさ。私だってもし魔力を生み出すことができなければ、魔道具を頼っていた可能性は大いにある。時間が無いから詳しく調べることはできていないけど、今だって魔道具には非常に興味がある、みっともないなんて思わないさ」


 自らの魔臓によって魔力を生み出すことが出来るものは魔道具を使うだけしかできない者を見下す傾向がある。男の口ぶりからしてそのことで今まで何度もバカにされてきた経験があるのだろう。


「フン、そうかよ。あんたが馬鹿にしてくるようなら、きっちりとその代償は払わせてやるつもりだったんだがな」


「けど結局のところ馬鹿にしていなくても殺されるという結末は同じわけだ。なんだか不条理だね。そのことについてはどう思う?」


 メフィレールの口角が上がった。


「しょうがねぇ事だ、こっちだって仕事なんだからよ。あんたが悪いんだぜ、よりによってマフィアに手を出すなんてな。そんな真似したら俺たちみたいな仕事の奴らが呼ばれて、こうなるのは目に見えてんだろうが」


 男の口角も少し上がる。もう一人の男の表情に変化はない。


「俺たちみたいな奴ら、といったね。あのなんとかっていうブヨブヨの組長はほかの殺し屋にも依頼したってことだね?」


「そりゃもう手あたり次第ってやつよ、あんたたちは相当怒らせちまったらしいな。手が空いてるこの街の殺し屋に普通の3倍出すって言ってな。相手を調べる時間もねぇ急な仕事でも3倍だったら喜んで引き受けるってもんだろ」


「ということはリシュリーのほうにいた奴らのなかにも殺し屋が混ざっていたってわけだね。少し心配だな、まさか殺られるなんてことは無いだろうけど」



「人の事よりも自分の心配をしたらどうだ?」


「それもそうなんだけど、ひとつ疑問があるんだ」


「なんだこの期に及んで時間稼ぎか?」


「時間を稼いで有利になるのは君たちのほうじゃないの?今私を助けに来てくれそうなのはリシュリーだけだけど、そっちにはたくさんいるんじゃない?大勢の殺し屋に声を掛けたんだろ?」


「さっきも言っただろ。俺たちにとっては人数が多ければいいってもんじゃない。分け前が減るからな」


「そもそもずっと疑問だったんだけど、なぜ君たちはここにいるんだい?依頼した組長本人はとっくに逃げ出しているのにも関わらず、この場所に君たちを配置しておくのかが分からない。私たちが追っ手を振り切って、この場所に戻ってくるに違いないと予想してたということだよね?」


「そんなこと俺たちが知るわけねぇだろ、俺たちはこの場所で待機していて組長からの連絡が来るまでは、この場所を守るってのが仕事なんだからな。それまでは誰も通すなっていう依頼だ。たとえそれが組員でもな」


「なんだか変な仕事だ、君たちはそう思わないか?」


「変だろうが何だろうが俺たちは仕事をするだけだ」


「ずいぶんと仕事熱心だね、感心するよ」


「もう十分におしゃべりの時間はやっただろ。安心して天国でも地獄でも行きな」


 ふたりの殺し屋が魔銃を構えた。


「最後にもうひとつ」


「なんだ?」


「君たちは兄弟かい?ゴーグルで隠れていてもずいぶんと顔が似ている」


「だったらなんだ」


 殺し屋のグルトは明らかに動揺した。これまで何度も仕事をしてきたが、標的にそんなことを言い当てられたのは初めてだ。


「私は君たちに好感を持った。もし私がちょっとでも変な動きをすればすぐにその魔銃を撃つつもりではいるが話は聞いてくれた。そしてなかなか誠実に答えてくれたからね」


 呼吸が苦しくなってきた。空気が足りない。


「君たちにもある様に私にも殺しの流儀があってね。嫌いじゃない相手には優しくしてあげるんだ」


 建物が歪んでいく。


「できるだけ二人同時に殺してあげよう。兄妹でお互いの死にざまを見るのは嫌だろう?」


 室内に真っ黒な霧が発生した。



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