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118話 ー壺ー

 


「なにどうかしたのそんな顔して」


 第4王子サンジェルトは言った。


「どうしたも何もドクロが入った魔道具は危険だと最近知ったばかりでして」


「あーそのこと?そんなこと気にしてるのか。そんなのは別に根拠のあることじゃないんだよ。いわゆる通説ってやつでドクロが入っていたら呪具だなんて決まってるわけじゃないよ」


「そうかもしれませんがいい気はしません」


「だいじょうぶだいじょぶ、気にすることないって」


「そう言われましても………」


 誰が何と言おうとも実際に自分の体でドクロの魔道具の恐ろしさを体験してしまった以上は好意的には受け取れない。あぁ………きっと俺はドクロ自体が苦手になってしまっただろう。全面にドクロと花が書かれているあのお気に入りのTシャツももう着れそうにない。


「私の目の前にこれがあるってことは大丈夫だってことだから」


「どういうことですか?」


「一応王子だからね。きちんと国の鑑定士が何重にもしっかり調べ上げて大丈夫なものだ、というお墨付きを得た魔道具しかもってこれないよ。万が一何かあったら事件だからね」


「なるほど………」


 そりゃそうだな、わけの分からないものを王族の目の前に持ってくるはずはないか。


「この壺に入っていどのような効果があるのですか?」


「あー、全然分からない」


 わからない?


「それは鑑定士から聞いていないという意味ですか?」


「そうじゃないよ。国のお抱え鑑定士でも判別できなかったという意味」


「それではなぜ大丈夫なものだと言い切れるんですか?」


「詳しくは私も知らないけど呪具かどうかは特別な薬品を用いれば判別することができるんだそうだ」


「そうなのですか!?」


 そうとわかっていれば気軽にこの忌々しい指輪なんか付けたりしなかったものを。


「!」


 やっば!


 いま俺は呪具らしきドクロの指輪を指に嵌めているじゃないか。これはもしかして王族を危険にさらしたとかで処罰されるんじゃないか?いや、けどこのドクロは抜けないんだから外せと言われても外せないぞ。手袋か?包帯か?隠すにはそれしかない。


 やっば!


 もしいまホープが勝手に喋りだしたらどうする?たしか先生もこんなに喋る魔道具は珍しいとか言ってたよな。そもそもにおいてあれは先生のスキルがあったから喋るのに対してそこまで驚かなかったけど、何もない今の状態でいきなり喋りだしたら騒動になる。


 特級宮廷魔術クビか?最悪の場合には牢屋とかに入れられるんじゃねえの?うわわわあ最悪だ、どうすればいいんだ。


「どうしたのサブレ?」


「いや、べつになんでも、なんでもないです、ないです」


「え?なになに教えてよ、何そんなに動揺してるのさ。ものすごく面白そうだよ」


「いえ、そんなに大したことではありません」


「教えてよ、絶対面白いことでしょ」


「いえ、なんでもありません」


「なんでさ、教えてくれたっていいのになんで隠すのさ」


「それよりもこの壺の話をしましょう」


 落ち着け、気付かれなければ問題ない。今まで気づかれてないんだから落ち着いていれば大丈夫だ。決して目線を持っていくなよサブレ、こいつは結構鋭いからな、落ち着いて行動するんだぞ。



「ちぇっ、つまんないなぁ」


「つまりこの壺は呪具ではないことは分かっているが、何の効果をもたらすのかは分からない魔道具ということですね?」


「そういうことだね」


「国に雇われている鑑定士ということ一流の鑑定士なんですよね?それなのに分からないなんてことあるんですか」


「あるんだなそれが、というかそっちの方が多いと言ってもいい。魔道具とは神の国から転がり落ちてきたもの、だから人間が全てを知ることは永遠にできない。しかし好奇心の塊である私たち人間は、できないとわかっていても諦めきれずに人生をささげ一歩一歩進んでいく喜びを止めることができない、それが鑑定士という人間なのだ。なんてことを昔の高名な鑑定士が言ったんだってさ」


 神の国から転がり落ちてきたもの、ねぇ………。


「ちなみにこれはどこから持ってこられたのですか?」


「宝物庫。隅っこで埃をかぶってたのを見つけてね、サブレがドクロを好きなのを思い出して持ってきたんだ」


 国の宝物庫か、いったいどんな素晴らしいお宝が眠っているんだろう。というかその中からこれを選ぶなよ、もっといいのがいくらでもあっただろう。


 まあ、いまはとりあえずそんなことはいい。とりあえずやるべきことは………。


「カジマ・リシュリーを連れ戻す件、引き受けます」


「おお!ついにやる気になってくれたね」


 馬鹿言ってんじゃねぇ、やる気はゼロだふざけんな。


 なんで俺が僻地にまで出向かなきゃならんのだ。権力の横暴だ、王族だからって何でもかんでも自分の思い通りにいくと思いやがって、そんなに行きたきゃ自分の足を使っていきやがれ、何のために足がついていると思ってやがんだこのクソ野郎が。


「はい。王の命令とあらば喜んで引き受けさせていただきます」


「うん、よくいてくれたね。王もきっとお喜びになるよ」


 なんだその見透かしたような笑いは。どんなにごねようとも俺には引き受けるしか選択肢がないんだよ。


「しかしその壺は受け取れません」


 報酬は土地だけでいい。


 土地は指を締め付けたりはしないからな。値段が上がったところを見計らって売り飛ばせばいい金になるだろう。




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