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117話 ープレゼントー

 



「私が王から直接仕事を頼まれて特級宮廷魔術師としての仕事を放って其方に向かったとなれば周囲からきっと嫉まれます。そうなれば新人の私はひどい虐めを受けることでしょう、そんなことには耐えられない」


「面白い冗談だ、傑作だね」


「笑い事ではありません」


「笑い事だよ。サブレがそんなことに屈するはずないじゃないか。学校で生き埋め公爵って言われてたの忘れたの?」


「ここは学校ではありません。周囲の人間も特級宮廷魔術師や特級騎士など実力を備えた者ばかり、そう簡単に太刀打ちできるものではありません。どうか再考を」


「うーん、マリーはどう思う?」


 俺の足にしがみついているマリーに視線を向けた。


「私は嫌。その女のところにサブレが行っちゃうなんて嫌。許さない、サブレはずっと私の傍にいるの」


 おお!こんなことろに思いもよらぬ援軍が。


「そうかマリーはいやなんだ。けどねぇ………たぶんこれを断ったらサブレは周りの人間から低く見られると思うな」


「なんで?」


「だって王の下にいながら王の指示に従わないっていうのはねぇ。しかも特級宮廷魔術師としては何の仕事もしてないからね。特級宮廷魔術師になったからと言って調子にのった生意気な奴、王を軽んじて見ているやつ、って思われても不思議じゃないよ」


 ぐむむむむ………。


「それは嫌」


「もしかしたら特級宮廷魔術師から解任されるかもしれない。そうなったらもうマリーの傍にはいられないよ。今でさえ男のサブレがマリーのところに配属させるのはちょっとだけ無理があることなんだから」


 それはマズい、まだ一日も働いてないうちから解任されるのは。ずっと努力してきたことが無駄になる。ホワイトな職場環境が、平穏で裕福な生活が消える。


「サブレ、プレゼントがあるんだ!」


「プレゼント?」


「こうなったのも私がサブレのことを勧めたのが原因だから。王の心配事を解決するためとは言っても悪いことしたなーとおもってさー」


 語尾を伸ばすと全く真実味を感じなくなるのはどうしてだろうか。


「なんでもサブレは土地を探しているそうじゃないか」


「それはどこから聞いた話ですか?」


「まあまあそれはいいじゃない」


 気になるだろ。土地と言ってもスラム街に近いところの安いところを買っただけだ。それなのになぜその話が王子にまで届いているんだ?しかも届くにしても早すぎるだろ。


「だから私のほうで良さそうな土地を見つけて買っておいたからサブレにプレゼントするよ」


「土地を?」


 場所とか広さにもよるが結構な金額になるんじゃないのか?


「なんでも当主が最近急に亡くなった有力貴族が持っていた土地なんだけど広いわりに使い道がないから処分することにしたんだってさ。なかなかいい場所の土地らしいよ」


「有難いですが土地はもう希望のものを手に入れましたので」


 ちょっと欲しいけど。


「そうなの?でも別に持ってればいいんじゃないの?今回何のために勝ったのかは分からないけど、もしかしたらそのうちまた土地が必要になったりしたときのために取っときなよ。王都の土地は需要が多いから買えるうちに買っておかないと欲しくても手に入らないなんてことが多い、って聞くよ」


「そうですかね」


 たしかに王都は城壁に囲まれているから外からの脅威に対しては安全で、栄えているからすみたいと思うものは多い。しかしその反面どんなに人間が増えても城壁があるがゆえに土地を広げることができないという欠点を持つ。


「貰っておいてよ、私が持っていてもしょうがないし」


 なんだか欲しくなってきた。けど土地をもらうということはいくということだ。いやでも落ち着いて考えろ、結局はいかなきゃいけないんじゃないのか?さっき言っていた通り王からの指示、というか命令を拒否しながら特級宮廷魔術でいることは難しいだろう。


「わかりました。それではありがたく頂いておきます」


「おお!よかったよかった。まさかこんなにも早く引き受けてくれるなんて思ってもみなかったよ」


「そうですか」


 どうしようもねぇじゃねえかこの野郎。逃げ道なんかないと最初から分かっていただろ。


「本当はもうひとつプレゼントを用意していたんだ。実はこっちが本命」


「本命のプレゼント………」


 王都の土地よりもすごいプレゼントってなんだ?


「何と!素晴らしくサブレに似合う魔道具なんだ」


「魔道具ですか」


 普通ならうれしいのかもしれないが、最近も最近魔道具で痛い目にあったのでうんざりというか何かひどい目にあわされるんじゃないかという気持ちのほうが強い。


「あれ?なんだか喜んでないっぽいね。まあでもこれを見れば気持ちはすぐに変わると思うよ」


 チーン。


 手元のベルを鳴らすと同時にカイゼル髭の従者が入ってきた。


 ゴト。


 ゆっくり置かれたのは大きな壺。素焼きというのだろうか、釉薬なんかが塗られていない土そのものの色をしている。魔道具と言われなければただそこらに置かれいる壺だと思ってしまうだろう。


「良いでしょ」


 随分とにこやかに言ってるが魔道具の良しあしなんか見た目で分かるはずもないし、しばらくは魔道具にはかかわりたくない気分なんだ。


「サブレの大好きなドクロが大きく浮き出ている壺なんだよ」


「ドクロ!!」


 声が裏返ってしまった。


「ほらこっちこっち」


「うわぁ………」


 回り込んでみると確かにドクロ。人間の頭蓋骨よりも二回りくらいは大きいドクロ模様が浮き出ていた。




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