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10話 -金髪女騎士との試合1-

 



 試合開始と同時にリシュリーから距離を取る。


 魔術師は距離があってこそ力を発揮する生き物。逆に言えば近すぎる距離ではただの貧弱。つまり距離をとるのは常套手段。だからリシュリーの表情にも驚きはなかった。


 このめちゃくちゃ不利な状況では、2つ目の鐘までは動かないというリシュリーがくれたハンデだけが頼りだ。とりあえず怪我をせずにこの試合を終わらせるというのは俺の大事な目標。


 リシュリーがくれたハンデの2つ目の鐘の時間というのは大体2分程度の時間のこと。このわずかな無敵時間を使って色々と試してみようと思う。

 俺はいままで特級騎士というやつと戦ったことはない。魔術師と騎士とでは学校も違うからどの程度の実力を持っているのかがわからない、けど非常に興味のある存在ではある。


 特級騎士と特級宮廷魔術師というのはお互いに王族を護衛するという職業で待遇も同じ程度だと聞いている。果たしてこの国でトップクラスの騎士、というのはどのくらいできるものなのか確かめてみようと思う。


「短剣?」


 俺が腰から抜き出した武器にリシュリーは意外そうな表情をした。向こうは俺が魔法で攻めてくると思っていたんだろう。


「オラッ!」


 短剣をリシュリーにに向かって突き出す。普通なら当たるはずもない、接近されないように距離をとってるから当然だ。しかしまあそんな無意味なことを限られた時間でするはずもない。


 剣先からは音もなく、ただ空気の歪みだけを伴って一直線に飛んで行く。空気の歪みはリシュリーの体の中心へ飛んで行って弾けた。


「飛燕か………」


 リシュリーは少し驚いたように言った。


 これは剣に魔力を込めて飛ばす「飛燕」という技。こうすることで魔力は斬撃の属性を持って飛び、命中したものを切り裂く。普通の人間なら血が噴き出していておかしくないんだが、予想通りというか、予想以上というか、全くダメージはなさそうだった。


「なかなか器用じゃないか」


 驚きはしたようだが、リシュリーに動揺は全く見られない。


「騎士の使う技だと思っていたが、考えてみれば魔術師にも使えないはずがないか。ここまでちゃんと使えるのは騎士の中でも少ないぞ、褒めてやる。ただこれくらいじゃ私を傷つけることはできないな」


 俺は何も答えずに、再び短剣に魔力を込めて御高説を語る騎士様に向けて飛燕を放つ。


「オラッ!」


 ただ今回はさっきとは違う。リシュリーも意外そうな表情を浮かべた。


「なるほど、そうきたか」


 飛燕の乱れ打ち。一発で駄目なら数で勝負、これならどうだ?まだ鐘はひとつもなっていない。


「ほぅ、これはなかなか思っていたよりはやるな。とりあえず特級宮廷魔術師といわれるだけはあるようだな」


 すこしだけ目を見開いたリシュリーだが、自分の防御力に絶対の自信を持っているようで、棒立ちのままで全ての飛燕を受け止めた。


「っ」


 表情が変わった。自分の頬へと持って行ったリシュリーの右手にわずかな鮮血が付着していた。


「油断したな」


 厭味ったらしく言ってやる。


「最初のはわざと手加減して打ったんだ。簡単に受けれると思わせれば、二度目の飛燕も避けないだろうと思ってな。だけどその中には強いのも混ぜてあったんだ」


「貴様……」


 リシュリーの澄んだ目に少しの怒りが混じる。条件からしてあまりにも騎士に有利すぎる条件だから舐めていたんだろうが一杯食わせてやった。一般的に騎士と魔術師というのは仲が悪い。お互いがお互いを馬鹿にし合っているからだ。向こうからしてもプライドが傷ついたに違いない。


 ひとつ目の鐘が鳴らされる。


 あっという間だった、もう時間がないからこれからは御望み通り魔法を使って攻めていこうじゃないか。


「土壁」


 丹田にある魔臓から魔力が消費される感覚と同時に、リシュリーと自分との間に高さ2mほどの巨大な土壁がリングを貫通するかのように立ちはだかった。


「これがお前の攻撃か?こんなことをして何の意味があるんだ?」


 まだまだ余裕の反応、いつまでその余裕を保っていられるかな?


「砂嵐」


 大量の砂を含んだ竜巻を生成させる。


 竜巻はリシュリーを包み込む。竜巻に含まれる砂はただの砂じゃない。しっかりと魔力が込められた砂だ。風に乗ったこれに触れると皮膚を切り裂かれるぞ。


「どうだ騎士様、ギブアップしてもいいんだぞ」


 俺が得意とするのは土魔法。さっきの飛燕とは威力が違うぞ、さぁどうする特級騎士様、2つ目の鐘が鳴るまで切り裂かれ続けるか?


 ドゴッ!!


「マジかよ」


 一部の土壁がバラバラになって場外まで飛んでいくのが見えた。そして砂嵐のなかから肩まで届く金髪をもった騎士様がゆっくりとあらわれた。


 傷ひとつない。


 魔力を通すことで金属片のようになっている砂粒の嵐の中にいても全くそんなことは感じさせない様子。そればかりか飛燕でつけた頬の傷も、すっかり塞がっている。そしてその目には怒りがはっきりと見て取れた。


「………………」


 怖っ!さっきまでとは違って何も言わない。どうやら思っていた以上の攻撃ではあったらしく、本気にさせてしまったらしい。


「土槍」


 砂嵐の位置を修正して視界を奪うと同時に、リシュリーの近くにあった土壁を槍へと変形させて突き刺す。新しく土槍を作り出すよりも土壁を変形させる方が魔力の消費が少ない。土槍での攻撃はこれが初めて、どうだ、少しは効いたか?


 切り刻まれた土槍がリングの上に散乱した。ハリネズミのように2、30本くらいは突き立てたはずだが恐らく一発も当たっていないだろう。



 ふたつ目の鐘が鳴った。


 約束の時間だ。


 ヤバいと思った瞬間、剣を構えた騎士様が突っ込んできた。



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