108話 -ノア-
「あの丸くて透明な石を持っていません」
僕は言った。
「あんなもんは必要ない」
ホープは言った。
「それならユリア先生はなぜ使っていたんだ?」
「そりゃまあ多少の効果はあるさ、けどなぁあれがなけりゃスキルとして使えないなんてことは全くない」
「つまりあれはスキルを増幅される効果があるのか」
「そういうこと。涙ぐましい努力じゃねぇか、少しでも効果を高めたいんだろうな」
「ふぅん………」
そう言ってサブレさんはの僕入れた紅茶をすすった。
「味はどうでしょうか」
「なかなかいいな」
「ありがとうございます」
今いるのは僕とウミカの家だ。スキルを使って僕が持っている魔道具の声を聞いてみることにしたんだけど、人の目があるとますいので戻ってきたんだ。
「よしそれじゃあやってみろ」
「わかりました」
僕は2度、3度と深呼吸をした。ぼくが人のスキルをコピーして使うのはこれで2度目だ。一度目は思い出したくないくらいに最悪だった。緊張する。もしあの時と同じようになったらどうしよう。
「大丈夫心配するな、あの時とは違って今回のスキルは軽いから前みたいなことにはならないはずだ」
「わかりました」
やっぱりサブレさんはお見通しだった。
「セイレーンの声」
言った途端、喉にいがらっぽさを感じて思わず咳き込んだ。
「同じだ」
一筋の薄紫色の光がまっすぐに伸びて魔武器へと刺さった。
「どうですか、成功ですか?」
前と違って光が弾かれるようなことはなかったけど、かといってホープの時みたいにいきなり喋りだすということもない。
「わからん。話しかけてみろ」
「わかりました。君お名前は?」
なぜか僕は小さな子供に対してするように話しかけていた。
「ノア」
「やりました!成功ですサブレさん」
「よし………体調はどうだ?」
そうだったそれが問題だった。
「大丈夫、そうです………今のところ何も。いえ、少しだるさを感じるかもしれません」
「そのくらいなら大丈夫。魔法を使い慣れていない間はよくあることだ。慣れるまでは1日に1回とかにしておくことだ」
「わかりました」
よかった。これは僕にとって初めての成功と言っていい。ずっと使うのが怖かったけど少し安心したし嬉しい。僕もサブレさんと同じように特別な力を持つことができたんだ。
「なんなの?」
魔武器のノアから不機嫌な口調。いったいどこに目を持っていいのか分からない。人間と話す時には目を見て話すようにしているんだけど、ナイフの場合にはどこを見ればいいんだろう。
「ノア、どうしたの?」
「疑問に疑問で答えないでくれる?」
「ご、ごめん」
「ごめんって何が?何に対して謝ってるの?」
「なにか僕が怒らせるようなことしたんだな、と思ったから」
「もちろんそうよ、だっておかしいでしょ急に話しかけてきたと思ったら他の人と話しをするなんて」
「ごめん。スキルを使うのに不安があった、だからその確認を最初にしたくて」
「私と話すよりも先にすること?」
「そう思った。もし前みたいになれば迷惑がかかるから」
「だったらまぁいいけど………」
「まずは僕の声にこたえてくれてありがとうノア」
「本当ならその言葉は最初に聞きたかったな」
「ところでノアは魔武器としてどういう能力をもっているの?」
「ちょっといきなりじゃない?」
「え、なんで?」
「また疑問に疑問で答えてる」
「あ、ごめん」
「ねぇ、なんか謝ればいいと思ってる?」
「そんなことないよ。さっきノアが言ってたことが正論だな、と思ったから今度もきっと僕が悪いことを言ったんだなと思って謝ったんだ」
「ふーん、本当?」
「もちろん本当、だから教えてさっきいってた「いきなり」ってどういうこと?」
「だってお互い何の関係もないうちからそんなこといきなり聞いてくるなんて失礼じゃない?」
「そうかなぁ、ノアってずいぶんと怒りっぽいんだね」
「そんなことない。あんたが怒らすようなことをするから今こうなってるだけ」
「いつもじゃないの?」
「いつも怒ってるやつなんかいるか?」
「いるといえばいるかな」
「ごちゃごちゃ言うな、いないでいいんだ」
「えぇ………」
「ほんっと疲れるわ」
「僕も今日は疲れたな」
「なんだ、あたしのせいか!」
「そうじゃないよ。見てなかった?僕たちが悪い奴らに取り囲まれて魔銃でバンバン撃たれてたの」
「まぁ見てたけど」
「だったら分かってくれるよね」
「あんなもん大したことない。そんなんで疲れたとかいうな」
「駄目なの?」
「別に駄目じゃないけどな」
「えぇ………」
「なんじゃその反応は、あたし変なこと言ってるか?」
「ううん、、」
「言ってないって言えよ」
「えぇ………」
「それと言っておくけどあたしは斬りたいもんしか斬らんから。というか本当のこと言えば斬りたくなんかない。あたしは平和が一番の平和主義者なんだ。だからあたしをもってるからって好きなように斬れるとか思わないでほしい」
「それじゃあ武器じゃないってこと?」
「そうじゃない。むやみやたらにどうでもいいもんを斬りたくないって言ってるだけ。わかる?」
「わかんないかもしれない」
「なんでわからんの?」
「なんでって言われても………」
「せめてもう少し時間かけて考えてから言ってくれないと気分悪い。あと、あたしは治すほうが好きなんだ、だから治す方だったらやりたい。けど碌でもないやつは絶対嫌だけどね」
「治す………ノアは怪我とかを治せるってこと?」
僕は思わずノアを持ち上げた。もし本当にそんなことができるとしたらすごい。僕も人を傷つけるよりも治すほうがいいと思うから。
「ええい、がっつくな!がっつくやつは好きじゃない!」
あっという間にノアは僕の手の平から逃げて、テーブルの上でカランという音を立てた。
「ごめん………」
「急に持ち上げられたりしたらびっくりするだろ?なんでそんなことするんだよ。自分がやられた時のことを考えてみて。するなよ、もう」
怒られた。
いままでこんなにも魔武器から怒られた人って存在するのかな?もしいなかったとしたら僕が世界で初めてということになる。全然うれしくないけど。




