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104話 ー無力ー

 



「サガネーーー!」


「おい近づくなニシオ同じ目に会っちまうぞ!」


「そうだやっちまえ!こっちには魔銃があるんだ、ぶっ放してやれ!」


 爆発音。


「うわーーー!!」


 僕はとっさにウミカを抱き寄せて地面に伏せた、いや、伏せようとしたけどウミカは微動だにしなかった。


「モルン落ち着け」


 サブレさんの声が聞こえて少し冷静になった僕が振り向くと目の前には大きな土壁ができていて、仁王立ちしているサブレさんと、僕の背中をぽんぽん叩くウミカがいた。


「大丈夫よ、モルン」


 赤ちゃんをあやすみたいにされて僕はすごく恥ずかしくなった。


「落ち着いて周りをよく見て行動するんだモルン」


「すいません」


 撃て撃てと叫ぶ男たちの声と銃声が聞こえるだけで少しの被害も僕たちにはなかった。


「魔銃………近年、大量生産ができるようになって新時代の到来だなんだと言われているが実際はこんなものだ」


 連発される魔銃にびくともせずに立っている土壁。


「確かに一般人にとっては脅威だろうな。魔力も持たず訓練さえ必要とせずに破壊力を出す。だがそれは一般人相手の話、俺の得意とする土魔法はこの手の攻撃を耐えるのに最も相性のいい属性だ」


「すごいです、本当にすごいです。僕は怖くて怖くて………」


「怖がる必要なんてないんだよモルン」


 ウミカの目にある慈しみ。


「私もモルンももうあの頃の弱かった私たちじゃないんだよ。今はもうあんなうるさいだけの暴力におびえる必要なんてない」


「何でウミカは平気なの?」


「だってあんなの簡単によけれるよ」


「そんなわけないよ、魔銃って目に見えない速さで飛んできて人をあっという間に殺してしまう武器なんだよ」


「それは思い込み、弱かった時の記憶がそう思わせて目をつぶってしまっているだけ。ちゃんとよく見ればモルンにだって見える。そんなに心配なら今から私がこの壁の外に行って避けるところを見せてあげるよ?」


「そんなの駄目だ!」


「俺が教えたトレーニングはちゃんとやってるんだろ?」


「もちろんちゃんと毎日ウミカとやってます」


「妹とやってるのか!?」


「はいそうですけど………だめでしたか?」


「ダメに決まってんだろ馬鹿!」


「ええぇ………なんでダメなんですか?」


「何のために教えたと思ってんだよ、それを考えたらわかるだろ。そこの鮫の目のやつをそれ以上強化するな」


 そうだったんだ。サブレさんは何かあった時、僕にウミカを止めさせるために教えてくれたんだ。それならそうとはっきり教えてくれればよかったのに、二人で走るトレーニングをして毎日昨日よりもうまくなっていくことに喜んでしまっていた。


「すいません気が付きませんでした」


「はぁ、お前もう………なんか肝心な時に頭が回らないやつだな、頭いいくせに」


「でも今はそれどころじゃないと思うんですけど」


 すぐ近くでは相変わらず怒鳴り声と魔銃の爆発音がする。


「どうせ何発打とうが俺の土壁を越えて気はしないだろ。それよりも身体強化の話だ、身体強化はただ力が強くなるだけじゃなく耐久力も上がるんだ。リシュリーが俺の攻撃を食らっても平然と突っ込んでくるのを見てただろ。お前だってあれを一発貰ったくらいじゃ死にはしない、多分」


「そうなんですか」


 最後に言った「多分」というのが怖いけど、確かに身体強化によって自分の体が前とは比べ物にならないくらい強くなっているのは感じている。


「当たらなければ大丈夫、よく見てれば来るのが分かる」


 ウミカが自信満々に言う。


「分かるかなぁ」


「あれはさっきから真っ直ぐにしか飛んできてない。だったらあの魔獣のまっすぐ前にいなければいい。手元を見ながら撃ちそうだな、と思ったら右か左にシュッと避ければいい」


「よし行ってこい鮫目!邪悪な人間どもを食い散らかしてこい」


「嫌です」


「なんでだよ、簡単によけれるんだろ?」


「私はモルンを守らないといけないので。見てくださいこんなに震えて、可哀そうに。私がいないと何もできない赤ちゃんみたいじゃないですか」


「ちょっとウミカなにいってんの!すいませんサブレさん、ウミカには絶対に無理です、ウミカは僕のたったひとりの妹なんです。それにウミカはまだこんなに小さいんです、そんなの絶対にやめてください」


「ウミカウミカうるせえなぁ、なんも知らないで」


「え?」


「それに俺だって俺の家族からしたらたった一人の存在なんだぞ。俺に行けみたいに思ってるだろうが、俺なら何かあってもいいみたいに思ってるか?」


「すいません、そういうわけじゃないんですけどサブレさんに何か起こるなんて思えなくて」


「それに俺のためにお前のスキルを使ってくれるっていう約束じゃなかったのかよ、結局全部俺にさせるつもりか?」


「すいません………」


「しょうがないな、まずこういう状況では何があってもパニックにならないことが重要だ。自分の状況を観察して見極めて何をどうするのが最善なのか考えろ。それが自分が守りたいものを守るために一番重要なことだ」


「はい」


 何もできない。


 妹のウミカでさえこんなにも落ち着いているというのに僕には何もできない、怖くて震えているだけ。


 情けない。


 情けさ過ぎて悲しい。サブレさんに助けてもらって、サブレさんに力をもらったっていうのに何もできない。


 僕は無力だ。



「まあ今回は大目に見てやる。俺の戦いぶりをよく見て勉強しろよ」


 そういってサブレさんは躊躇なく壁の向こうへ歩き出した。




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