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102話 -合図-

 



「私は嘘を見抜きます」


 眼鏡の魔道具が言った。


「おお!」


「すごいよこれはすごく貴重でいい魔道具だよ」


「本当ですか?」


「私は嘘を見抜きます」


「うん本当。欲しがる人間なんかいくらでもいるよ、多分国も欲しがると思うよ。裁判とかあるいはスパイに対しての尋問、パッと思いつくだけでもかなり重要な役割を果たしそうだもの」


「そう言われてみれば確かにすごいですね」


「私は嘘を見抜きます」


 魔道具が同じ言葉を繰り返している。


「先生、これちょっとどうにかなりませんか?」


「ごめんごめん、いま解除するね」


 紫色の光が消えた。


「ああ、静かになった。魔道具が喋るってあんな感じなんですか?」


「さっきのはずいぶんと良いほう。質の低い魔道具だと言葉がとぎれとぎれだったりして何を言っているのか聞き取れないのもたくさんあるよ。それに比べたらはっきり喋ってくれているから分かりやすいよ。聞き取れない言葉を聞き取ろうとしてずっと聞き続けている方がストレスなんだよ」


「それは確かにつらそうですね」


「つらいけどその分いいお小遣い稼ぎにはなるよ」


「鑑定士からの仕事ですか?」


「そうだよ。向こうにとってはキーワードひとつが分かるだけでも仕事のしやすさが全然違うからね。珍しい形の魔道具が出てきたときに「水」とか「土」とかっていう言葉だけでも分かればずいぶんな手掛かりになるんだよ」


「なるほど」


「魔道具はそれ自体が高価だけどもたらす効果によって値段が全然違ってくるから判別は必要不可欠、だから鑑定士にはいつでも仕事があるんだってさ」


「あの眼鏡の値段はいくら位になりそうなんですか」


「試してみなきゃわからないけど何百万じゃ買えないんじゃない?もしかしたら億もあるかもしれないね」


「そんなにですか」


「売るつもりなら私が買うけど?」


「先生がですか、どうだ?」


 サブレさんがウミカを見た。


「断じて否」


「なんだその堅苦しい否定は」


「すいませんサブレさん、ウミカだいぶ気に入っちゃってるみたいで」


「一応聞いてみただけだから気にするな。今のところ金には困ってないから問題ない」


「本当ですか、よかったです」


 あの眼鏡は買ってもらったものだから返せと言われたらそうしなきゃいけないのかな、と思ってたので有難い。


「そうなるとずいぶんと得したことになるな」


「本当ですね、買った時の値段と全然違いますよ」


 買った時の値段は3つで680万ゴールドだったからあの眼鏡の魔道具だけで信じられないくらいの差額になる。



「そういえば君たち、この魔道具はどこで買ったんだい?こんないい魔道具ばかりそろえる店なんてあったかな?」


「店というか路地裏で勝手に開いてる露店みたいなところで勝ったんです。店主の婆さんに呼ばれて」


「そんな店なんかあったかな?私は仕事帰りに毎日あの通りを通って帰るんだけどそんなお婆さん見たことがないんだけど」


「早めに店じまいしてるんじゃないですかね。年寄りは寝るのが早いですから」


「うーん、そうかもしれないね。確かにいつも帰る時間は遅いから真っ暗なんだよね」


「路地裏なので灯りがないんですよきっと。自分たちで灯りの魔道具を買うくらい余裕があるならきっと路地裏なんかじゃなくてちゃんと店を借りて商売しているはずですから。だから明るい間だけ商売してるんじゃないですかね?」


「そういうことかぁ、今日から明るい時間に帰るようにしてチェックしてみよう。けどいけるかなぁ、教師って結構やること多くて大変なんだよね。ただそのお婆さんかなりの目利きかもしれないから一回見てみたいな」


「たまたまじゃないですかね、かなり胡散臭い感じでしたよ」


「見た目は関係ないでしょ」


 先生は笑った。


「そうですかね?」


「そうだよ、実際ちゃんと魔道具だったし。偽物を買わせるような悪質な業者も多いんだよ魔道具を売る店って」


 サブレさんと先生はずいぶんと話が盛り上がっているけど、僕はずっと気になっていることがあった。


「サブレさん」


「どうしたモルン」


「僕、勉強が………」


 そう、僕はいま切羽詰まった受験生なのだ。


「ああそうだったな」


「なんだもう帰るの?もっとお話ししたかったのに」


「すいません先生。せっかくお会いできたのでいつまでも居たいくらいなんですがモルンは受験生でしてこれから教科書の丸暗記と戦闘能力試験に向けて頑張らないといけないんです」


「えーなんだつまんない。けどまあ、そういうことならしょうがないか、サブレだけでもいいから今度また時間ができたら会いに来てよ、もっと魔術の話とかもしたいし、魔道具のことだって教えてあげたいから」


「是非お願いします。今回のことで自分がいかに魔道具に関して知識がないのか痛感しましたので教えていただけるとすごく嬉しいです。そうだ、あと最後に先生にお願いがあるんですが」


「お願い?なんだろう少し聞くのが怖い」


「先生は補助魔法の名手として有名ですけど、僕は先生の補助魔法を一度も近くで見たことがないので、この機会に見せてもらうことはできませんか?」


「私の?」


「なんでも先生は素晴らしいオリジナル魔法を持っていると在学中から聞いていたんです。できればそれを見せてもらえないですか?俺も見てみたいですし、このふたりにとってもいろいろな魔法を直接見ることは勉強になるのと思うので」


「あぁ、あれのこと………いいけど高いよ?」


「できれば無料で………」


「ええ!?そんなのひどい。私のこと安い女だと思ってるのね?」


「そういうわけじゃないんですけど、なんだかものすごくお高そうなので払えるかどうか心配で」


「なんか私のこと酷い女だと思ってるよね、それが一番ショック。授業の時間を削ってまで時間を取ってあげたのにさ。けどまぁいいよ見せるくらいは、お安い御用。サブレみたいに派手じゃないけどね」


「是非お願いします」


 サブレさんが僕の足に軽く触れた。




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