100話 -君たちとてもいいコンビ-
「んぎぃいーーーーーーーーーーーーー」
「どうしましたサブレさん!大丈夫ですか?」
突然悲鳴を上げながら左手を押さえ始めたと思ったら、座っていたイスから崩れ落ちた。
「あっ」
サブレさんの左手の人差し指が真っ赤になっていた。
「ハッハ!どうだ俺の締め付けは。そっちが友好的に来てくれんならこんなことするつもりはなかったんだが仕方ねぇな、俺様の力を思い知らせてやるよ」
「やめろーーー!」
「俺のことを切断して海に捨てるんだろ。できるもんならやってみろよ、ほらほらほらまだ2割ほどしか力を出してねぇぜ」
「このクソ呪具が!!」
「おう!身体強化かハッハ!それで俺の締め付けに対抗するつもりか。魔術師にしては少しはやるようだがな、俺を指にはめた時点で勝負はついたようなもんだな。ハッハ!3割だぞどうだ、まだ耐えられるか?」
「ぎゅぅーーーーーーーーーーーー」
「ハッハ!さっさとギブアップしちまった方がいいんじゃねぇの?ほら自分の指を見ろよ、赤を通り越して紫色になっちまってるぞ。このままだとどうなるかわかるよな、血が止まって肉が壊死し始めるぞ!」
「ええぇ!?サブレさん無理そうだったら早めに諦めたほうがいいです、本当に指が無くなっちゃいますよ!」
「いやいやこいつは小僧とはいえ男だ、そんな簡単に諦められねぇのかもしれねぇな。ほらさっき言ってたお友達を呼んでみちゃあどうだ?来るのが先か、指が駄目んなっちまうか先か、勝負と行こうじゃねえかハーッハハ!あと5秒後に一気に6割まで上げるぜ!いくぞ5.」
「ギブアーーーップ!!俺が悪かったどうか許してくださいホープ様!」
「なんだ、もう終わりかもうちょっと粘ってくれよな」
「はぁ………はぁ………はぁ………」
どうやらドクロの指輪は力を緩めたようだ。敗北感と安心感が混ざったような表情で中指をさするサブレさんが切なかった。
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「君たちはなかなかいいコンビだと思うよ」
目元を指で拭いながらユリア先生が言った。
「本気で言ってるんですか先生?」
「もちろん本気だよ、そんな素敵な魔道具を見つけられるなんてうらやましい限りだよ。私も欲しいくらい」
「悪りぃな、俺はこいつのことがすっかり気に入っちまってな。あんたはいい女だが俺の求めている人間じゃねぇ」
「残念、本当にうらやましいよ。ところでホープはサブレのどこがそんなに気に入ったんだい?」
「全部さ。強くて弱くて………まぁほかにもあるが言えねぇな」
「えー聞きたいなぁーどうしてもダメ?」
目をウルウルさせながら両手を顔に持ってきて頼んでいる。人間の男だったら簡単に騙されてしまうだろうけど、魔道具にも効果があるんだろうか?
「それよりもホープ、お前は呪具なのかそうじゃないのかはっきり答えてくれ」
会話を切られた先生が少し不満そうな表情をしたがサブレさんは気が付いていないようで勢いよく言葉を吐いた。
「それは俺が決めることじゃねぇ。俺はただ物語を起こさせるだけ。何が起こるかは俺には分からねぇから結末がどうなるかも俺には分からねぇ。つまるところお前次第なんだよ、物語がいい方向に進めば俺のことを幸運の魔道具と言い、悪い方向に進めば呪具だという。全てはお前次第だ」
「良いことが起こる可能性もあるのか………」
「俺は人間が見たいんだよ、人間の感情が動くところがな。俺を退屈させるんじゃねぇぞサブレ」
すこしだけホープの声が引き締まっていた。
「やっぱり良いコンビだと思うよ君たち」
「そうは思えませんよ、俺は裕福でゆとりがある生活をしたくて、特級宮廷魔術師になったんですよ」
「もうこうなっちゃった以上は考えてもしょうがないと思うよ。よく言うじゃない、コップに半分も水があると思うか、それとも半分しかないと思うのか、それは考え方次第だってね」
「やっぱりいい女だねぇ」
「ありがとう」
サブレさんはため息をついた。
「先生、こいつずっと流暢に喋ってますけどスキルの効果はいつまでですか?」
「そうなんだよサブレ、そこが私も気になってたんだよ」
「どういうことですか?」
「本当ならもうとっくに喋れなくなってるはずなんだ。普通だったらせいぜい1分くらいかな。だからおかしいなぁと思ってた」
「勘弁してくださいよ、まさかこれからもずっと一日中喋り続けるってわけじゃないですよね。こんなおかしな魔道具をつけたままじゃ特級宮廷魔術師にをクビになっちゃいますよ。まだ一日も出勤していないんですよ」
「安心しな。今日は久々だったからずいぶんと喋ったが元来の俺はどちらかと言えば寡黙なたちだからな、そう喋ることはねぇだろう。ただ静かにお前の心を観察し続けるだけさ」
「頼むから勘弁してくれ」
「そいつはできねぇ相談だな。いまのところ300年くらいは外れねぇつもりだ」
「300年もしたらとっくに俺自身がガイコツになってるだろ。ガイコツがガイコツの指輪をつけたままで埋葬されたいのかお前は」
サブレさんはため息をついた。




