71てぇてぇ『海外ってぇ、沢山のはじめてがあってドキドキするんだってぇ』
「ヤッホ、ルイジ!」
「ハ、ハロー、ルイジ」
イギリス滞在二日目。
俺達は、メイとヤミに会っていた。
どこのハリウッド女優だよってレベルの金髪ダイナマイトボディの女の子ヤミと、素朴って言葉が似合うそばかすが可愛らしい、瓶底眼鏡の、ふわふわオレンジ髪の女の子メイ。
二人とは、散々リモート日本語教室で俺は顔を合わせているので、そこまで驚きはない。
けど、二人にとっては、俺の奥にいる人物は初対面だ。
「で、ルイジ……も、も、もしかして……その後ろにイルのが……」
「どうも、高松うてめです」
「うてめ様キターーーーーー!」
「ひ、ひいい!」
それぞれのらしいリアクションを見ながら俺は苦笑いする。
一応、姉さんには、会うか会わないかは自由と伝えておいた。
ゆっくり一人で観光を楽しむもよし、ホテルでのんびり過ごすのもよし。
まあ、配信の事考えたくないって事もありうるだろうしと思い、気を遣ったのだが。
『私は、累児に触れることで回復出来るの』
ん? 俺、壺か何かかな? ウォークしてる、姉さん?
って、気持ちだったけど、まあ、姉さんがそっちのほうがいいと言うのならと一緒に行くことになった。ま、そうなるとは思ってたけど。
「ワ、ワタシの名前は、ヤミです! ホラ! メイも」
「メ、メイ、デス……」
ヤミに隠れながら、メイは一生懸命小さな声で自己紹介していた。
姉さんはその様子に微笑みながら、
「(英語)二人とも、英語でいいわよ。でも、聞き取りにくかったらごめんなさいね」
「ウメー! 英語、ウメーデス、うてめ様!」
そう、姉さんはマジで才女だ。
成績ザ・普通だった俺に比べ、姉さんは成績常にトップ。英語も滅茶苦茶出来る。
有名大学への進学も薦められたのだが、声優学校に。
ほぼ全員がハテナ浮かべていた姉さんの進路、そして、ならば何故そんなに勉強必死なのという声。
姉さんは言っていた。
『累児に尊敬されたいだけだから』
うん、ウチの姉はかなりおかしかった。高校の頃からずっと。
もしかしたらもっと前からおかしかったのかもしれないけど、これ以上思い出すのが怖い。
とにかく、姉さんは英語が出来るので、二人との会話は問題なさそうだ。
逆に俺の方が、まあ、大分出来るようにはなったと思うけど、それでも、姉さんの流れるような英語には勝てそうにない。
「累児、大丈夫よ。分からないことがあったら、姉さんがなんでも通訳してあげるから」
「まあ、困った時は頼むよ。(英語)それで、ヤミ、メイ。これからどうする? 午前中、二人、交友を深めたい、思って自由時間、だけど」
やはり会話になると難しい。ちょっと緊張もする。
けれど、無事伝わったようで、ヤミがニコリと笑って、口を開く。
「(英語)まずは、どこかで美味しいものでも食べてリラックスしようよ。メイもまだリアルルイジ達に緊張しているみたいだし」
「ハ、ハアハア……!」
メイがパフォーマンスでなく、本気で呼吸が荒くなっていたので、ヤミがカフェを提案してきた。
「あ、だったら、もし、よければなんだけど……」
俺の提案にヤミは元気に、そして、メイは遠慮がちに頷いてくれた。
姉は後方理解者面してた。
「(英語)ルイジおいしい! おいしいよ! これ!」
メイが興奮して俺に話しかけてくれている。
結構ヲタク早口で喋るのでついていけてないけど、多分おいしいって言ってくれてるんだと思う。
「流石、累児ね」
「いやあ、早すぎデショ、メイリアルで仲良くなるの」
俺はヤミに公園に案内してもらって、俺お手製の弁当を広げていた。
今回の旅行に当たって俺が会社にお願いしたのは、キッチン付きホテルだった。
俺は平気だけど姉さんがもしイギリスの食べ物が合わなかった時の為に、一応俺の料理も用意しておきたかった。
まあ、ちょっと、求められたいというのもあったかもしれない。
で、折角なら、二人にも栄養あって、話のタネになりそうな日本食を食べてもらいたいと思って一応用意しておいた。いらなくなれば俺の夕食か夜食にでもするつもりだった。
なので、早朝、俺はワルハウスのみんなの夜の配信を見ながらお弁当を作った。
9時間の時差はある意味、健康的に配信が見られていいかもと思ってしまった。
ただ、ちょっと、みんな配信のテンションが変な感じだったので、ご飯ちゃんと食べたりしてるか不安になった。一人に電話すると、みんなにしなきゃいけなくなる予感がして、やめておいた。
で、お弁当だ。
今日は、鳥の照り焼き、卵焼き、筑前煮もどき、おむすびを某ポケットなモンスターに見立てたキャラ弁を作ってみた。
すると、メイが大興奮でずっと写真を撮り続けていた。
そして、食べ始めたら食べ始めたらで夢中になって、食べ始め、小動物みたいでクッソかわいかった。さなぎちゃんタイプで小さくても良く食べるのかなとは思ったけど、そうではないらしい。
「(英語)わ、わたし少食で好き嫌いも多い、けど、これはすっごく美味しい! いっぱい食べられる! すごい! すごい!」
どうやら日本の味付けがメイには合っているようで、筑前煮もどきは野菜が嫌いだというメイには厳しいかなと思ったけど、おいしそうに食べてた。
ちなみに、某もぐらトリオみたいな見た目にしてみた。
「スゴイねーやっぱルイジは」
「そうか?」
「スゴイよ、メイってアタシと初めてあった時も本当に心開かない感じで、ずっとクセー、クサイ、クセン? してたんだヨ? でも、ルイジとメンダン? してから、少しずつはなしてくれるようになってサ」
いや、俺も本気で苦戦していた。
でも、今のメイの配信が俺のお陰であるっていうんならこれほどうれしい事はない。
「(英語)ねえ、よかったら聞かせてくれない? 累児がどうやってメイと仲良くなったのか? 凄かったんでしょ?」
「(英語)凄かったよ! うてめ様! アタシ達とルイジが最初にちゃんと話をしたのは、もう結構前になるけど、あれ、リモートだったよね?」
「(英語)ああ、リモートだった」
そう、画面の向こうで出会った二人のVtuberの魂。
リモートっていうのもあったけど、メイは凄く壁を作りたがる子で、それでいて、いっぱい罅を残している子だった。
お読みくださりありがとうございます。
イギリス編暫く続きますが、次回は、明日更新(もしかしたら夕方間に合うかも?)。
本編だけか、今話題のあのゲームの番外編(御三家選び)やろうかと。
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