56てぇてぇ『休日ってぇ、ちょっとハメを外したくなるんだってぇ』
【登場人物紹介】
天堂累児。
物語主人公。Vtuber狂いでVtuber事務所に就職したが追放されたが、姉に拾われる。
天堂真莉愛。
累児の姉。【ワルプルギス】所属のVtuber、高松うてめ。元声優志望のブラコン黒髪ロング美女。
神野ツノ。
【ワルプルギス】所属のVtuber。うてめと同期で、同期の中でトップだった。紫ロングの色白さん。万能型ワードセンス神系。
尾根マリネ
【ワルプルギス】所属の新人Vtuber。
元【フロンタニクス】の看板Vtuber引田ピカタ。フロンタニクス時代、累児の部屋に通っていた。
塩ノエ。
【ワルプルギス】所属のVtuber。黄色髪ショートの生意気ヤンチャお嬢様系。
十川さなぎ
【ワルプルギス】所属の新人Vtuber。うてめに憧れる。唯一無二の澄み切った歌声。
加賀ガガ
【フロンタニクス】から転生(移籍)してきた新人Vtuber。ワルガキムーブが得意。
楚々原そーだ
元【フロンタニクス】所属だったが【ワルプルギス】に移籍。
清楚と妖艶を併せ持つVtuberに。演技系とバイリンガルを生かした英語系の案件が多い。
累児に命を救われ異常に感謝している。
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」
今日は珍しく全員そろっての夕食。
まあ、というのもほぼ毎日配信してるうてめ様とツノさんがお休みだし、ガガはゲーム配信が終わり今日は終了。
そーだも今日は家事メインにするという事で朝配信のみにしているし、さなぎちゃんとマリネはご飯が終わってすぐに配信。
そして、ノエさんは遅めの配信ということで、一時間ほどだが、みんな合ったのだ。
献立は、とにかくバラエティにとんでいた。
「ルイジさん、私が作ったおかずお口に合いましたか?」
「あ、ああ、勿論」
メインのおかずはそーだとツノさんが担当していた。
そーだはワンプレートに色んなものをのせた豪華なものだった。
だが、俺は知っている。
俺のプレートだけ、『すっぽん』尽くしなのを。
そーだがガガを揶揄いに行った一瞬どんなものを作るつもりか料理好きとして気になってちらっとキッチンを覗いた時に見えてしまったのだ。
すっぽんを。
そして、何故か俺のプレートだけおかずの種類が違う。
黒確である。
だが、流石に食べないわけにはいかないし、正直旨いのは旨い。
食べたことなかったから、味が新鮮で面白い。
まあ、大丈夫だ。俺の部屋は社長に頼んでシェルターばりの防御力にしてもらっている。
「あの、さなぎのサラダも是非……!」
さなぎちゃんはサラダ担当である。野菜ちぎりサラダである。ワイルド。
「あの、別にさなぎが手でちぎったお野菜をるいじさんが口付けてくれて手に間接キスだなあとかは思っていませんので」
さな漏れである。ツンデレとはまた違う趣がある。
だが、これは今悪手。
他が身を乗り出し始めた。
「累児、姉さんが手で洗ったお米よ。美味しい?」
そーだがどうしても料理したいと言い出した姉さんをうまく誘導し担当させた米はおいしかった。そして、そーだへの感謝が溢れる。
「ノエのスープはルイジに教えてもらったべジブロスープよ! お、おいしくないとか言ったらぶっとばすからね!」
ノエさんは野菜の味が凝縮されたべジブロスをメインにしたスープ。煮込む時間が倍かかり、態々そこまでしてくれた思いが凝縮されている気がする。
「せんぱ~い、ガガが作った卵焼き、せんぱいがどうしてもって言うなら、あ~んしてあげましょうかあ?」
ガガの作った甘い卵焼き。ゲーム大会の時よりもしっかり進歩してて涙を流すとガガがテンパりだした。
「ルイジ、マリネのマリネ、食べてね」
うん、ライン越えっぽい感じになっちゃうからやめて欲しい。
ただ、マリネがそーだに教えてもらいながら作ったらしく、あの家事絶滅人間がよくここまでとこれもちょっぴり塩味が効いていた。
そして、最後はこの人。
「ルイジく~ん! ツノのお刺身も食べてね~」
ツノさんはナツさんを送った帰りに大量の刺身を買ってきてくれた。
それはいい。
それはいいんだが、
「じゃあ、ツノざらになるから……」
「はい、ライン越えぇえええええ!」
「ルイジ君はマグロの方が好きかな?」
「ライン越えぇええええええええ!」
「あれ、なんか烏賊くさくない?」
「ライン越え! ライン越え! ライン越えぇええええええ!」
滅茶苦茶下ネタかましてくるのだ。全部お刺身の話ですからね!
まあ、上機嫌なのはわかる。
ナツさんが復活したし、しかも、腹を割って話せていたから。
ナツノの復活は俺も嬉しい。だが、
「じゃあ、日本酒飲もうよお、ツノさかずきになるから」
「ライン越えぇええええええ!」
もうバチボコにかましてくるのだ。
さなぎちゃんとマリネは頭にはてなが浮かんでてまだいい。
意味分かるけどあんま耐性のないノエさんとガガが顔を赤くしてるし、そーだはあらあらと楽しそうだし、姉さんは私がしようかとじっと俺を見てくる。
とにかくわいわいがやがやと騒がしい夕食だったけど、まあ、正直みんなで食べるごはんはおいしかった。
「よっし! ルイジく~ん! もうちょい飲もうぜ~!」
ツノさんが酒瓶片手に俺に肩を回してくる。
今、リビングでは俺一人だ。
ノエさんとガガは照れて早めに退散し、さなぎちゃんとマリネは配信へ、姉さんはそーだとお風呂に。
『ルイジさんとお義姉様の仲良い子供の頃の話を聞かせて下さい』
と、そーだが言ったら、姉さんは目を輝かせて一緒に入りにいった。
なので、今は俺一人だ。
「このお酒、最高級なんだよ~、一緒に飲もうよ~」
「分かりましたよ、お付き合いしますよ」
「へ? ああ、うん。酒に付き合ってもらうよ~!」
大分酔って顔の赤いツノさんと晩酌。
つまみは、そーだが何故か用意してくれてたものがあった。
「よし! じゃあ、ルイジくん、エロトークすっか~!」
「しないですから!」
「え~、じゃあ何する~、エロする~?」
「もっとしませんから!」
ツノさんが口を尖らせながらぶーぶー言っている。
「え~、じゃあ、ルイジ君のしたい話でいいよ。最近のお勧めVtuberとかさ~」
「マジっすか!? 聞きたいっすか!?」
テンション爆上がりである。
俺は、酒のせいもあってか、お勧めVtuberの話をした。
「いいねえ~、楽しそうだね~。じゃあ、なんか逆に困った事とかないの?」
「困った事ですか? いや、別に」
「そっか、じゃあ、エロトークする?」
「ありましたわ! 今発見しました! 大体ツノさんは……」
そこからはツノさんの普段の発言がさなぎちゃんの教育に悪いとか、ワルハウスのメンバーの直してほしい所とかいろいろした。
「ういーっす、ツノ気を付けまーす」
「絶対気をつける気ないでしょ……」
「他になんかある~? エロトークでもいいよ~」
「どんだけしたいんだよ! エロトーク! あとは……そうっすね。みんなの健康だけが心配です……」
「ふ~ん、なんでなんで?」
「みんな、頑張り屋ですから。ファンを楽しませたいって気持ちが強いし、責任感もあるだろうから。でも、やっぱりナツさんみたいな人を見ると、元気に日々過ごしてほしいと願っちゃうんですよねえ……」
「あたしは、ルイジくんにいっぱい元気貰ってるけどね」
「え……?」
「ありがとね、ルイジくん。ナツの事。ナツ、本気で喜んでた。そんで、頑張ろうって言ってた。あたし、嬉しかった。本当に……! ありがとう、ルイジくん」
いつも感じる。Vtuberは大変だと。
ファンは味方だ。でも、やっぱり対戦相手でもあって。楽しませるために全力を尽くして。
時に厳しい声もあって。それでも、向かい合い続けなければならない。
心も体力も使う仕事だ。
支えてあげたい。
そして、支えてあげられているのならこれほどうれしい事はない。
「あ、そういえば、なんでツノさん、いきなりルイジ『くん』って……?」
「あちゃあ、バレたか~。う~ん、酔ってるからね、今、ツノ酔ってるからね。あのね、ノエ先輩もマリネもルイジって呼ぶじゃん? あたしだけの特別な呼び方が欲しくなったんだよね~」
この人はほんとにもう。
エロトークじゃなくても、どきりとさせることを言う。
「ルイジくん。あのね、本当に本当にあたしはルイジくんに感謝してる。だからね、ルイジくんが苦しくなったり、何か吐き出したいことがあれば、頼ってね。あたし、ルイジくんの話ならなんでも聞きたいからさ。エロでも愚痴でもなんでも」
ああ、この人は。
この人は『人間』という存在が好きなんだ。愛おしさを感じているんだ。
欲とか衝動とかそういうものも全部含めて受け止めてくれるから。
だから、この人は『女神』と呼ばれるある意味神聖さを感じさせる姉さん、うてめ様とツートップを張り合う人なんだ。人の言葉を、心を察し、受け止め、導いてくれる『女王』だから。
わかるよって。
人間だもんね~って。
同じ目線にも立ってくれて。
「はは……ほんと、ツノ様好きですわぁ~」
「ちょまっ……! え?」
「んにゃあ? なんすかあ?」
「ちょっとちょっとちょっと、も、も、もっかい言って」
「んにゃあ? なんすかあ?」
「ルイジの寝ぼけ声ゲットだぜ! じゃねえんよ! そっちじゃなくてえ!」
この人といると楽しい。心から笑っているし、自分の心を引き出してくれる。
解放してくれる。
わいわい騒いでいると、姉さんたちがお風呂から上がったようだ。声がする。
「お。じゃあ、あたしも風呂入ってくるかな~」
「俺もそうします」
二人してふらつきながら立ち上がる。
目線が合い、お互いを見て笑う。
「ツノさん、ありがとうございました」
「アタシでよかったら、吐き出しに来な~。全部受け止めてあげるわよ」
「マジすか」
「アタシが受け止められなくなったらルイジに助けてもらうけどね」
「マジすか」
「了解です」
「ルイジ、ん~……まっ♪」
「あぶねっ!」
「よけんなよお!」
「受けたらガチ恋しちゃうかもなんで」
「ちょまっ……! 録音するからもっかい」
「あぶねっ!」
「避けるルイジのボイスゲットだぜじゃねえんよお! も~いけず~!」
ツノさんのトークは本当に楽しい。心が軽くなる。
それは本当に彼女のやさしさなんだと俺は思う。
風呂の中で俺は思い出し笑いをしていた。
こっちも笑顔にさせられるツノ様の楽しそうでやさしい笑い声を思い出して。
お読みくださりありがとうございます。
第一部・第二部と変更しました。
いきなりですが、ちょっと予定を練り直し、今週土曜まで毎日連載で第二部終了とし、次週から週末定期更新くらいのペースに落とし他の連載ペースを上げようかなと考えています。
この作品自体はひたすらてぇてぇを描き続けるだけでやろうと思えば毎日書けそうなんですが書けすぎて他に時間割けてないので汗
また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。
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コンテスト用に書いていた新作ハイファンタジーをアップしていきますのでよければご贔屓に!
金髪碧眼ノ陰陽師~「四大元素魔法を理解できない落ちこぼれが!」と追放された私ですが流れ着いたジパングで五行とコメと美丈夫に出会って『いとおかし』でして、戻って来いと言われましても『いととおし』~
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