55てぇてぇ『休日ってぇ、わいわい騒ぐのも楽しいんだってぇ』
【登場人物紹介】
天堂累児。
物語主人公。Vtuber狂いでVtuber事務所に就職したが追放されたが、姉に拾われる。
天堂真莉愛。
累児の姉。【ワルプルギス】所属のVtuber、高松うてめ。元声優志望のブラコン黒髪ロング美女。
加賀ガガ
【フロンタニクス】から転生(移籍)してきた新人Vtuber。ワルガキムーブが得意。
楚々原そーだ
元【フロンタニクス】所属だったが【ワルプルギス】に移籍。
「おっはよーございまーす! せんぱーい!」
俺は、珈琲とおやつを味わいながら一人でコーヒータイムを楽しんでいた。
ちなみに、仮眠から目を覚ました姉さんは、『十分記憶したからあとは一人で思い出しながら寝てくる』と言って寝室に行ってしまった。
そんな中、騒がしいガガが飛び込んできた。
「おお、ガガどした? ってどした!?」
ガガが、バニーガールだった……!
確かに、ほぼ裸エプロン、彼(俺)シャツ、メイド、体操服ときて、他の三人もコスプレしている可能性は考えていた。
が、ここに来て衝撃が強すぎた。バニーガールとは!
「あ~、せんぱ~い? あたしのバニーガール見て発情しちゃってますね~? も~えろうさぎ~」
「え、えろウサギはお前だろ……!」
「まあまあ、先輩が嬉しいならそれでいいじゃないですか! それよりこれやりましょうよお!」
妙にテンションの高いガガが取り出したのは所謂ボドゲと言われる室内ゲーム達だった。
「ボドゲ、だよな?」
「そうです! やっぱ休みと言えば、メンタルの回復。メンタルの回復といえばゲームっしょ! しかも、配信ばっか見てる先輩が疲れすぎないように、テレビゲームじゃなくて、ボドゲを持ってくるあたし! 神でしょ!」
「かみかみー」
「ちょっとおおお! なんかその言い方、配信で嚙みまくってる人みたいな感じになるんでやめてください~! もっと敬う感じで~」
「よ! 神!」
「う~ん、ま、いっか。それじゃあやりましょっか。何からやります~?」
ガガが広げたゲームの数々どれもおもしろそうなんだが、
「ちょっとゆったりしててまだ頭覚醒してないから、一旦トランプでやったことあるゲームからさせてくれ」
「あ、じゃあ、スピードします?」
「おお、身体も頭も起きそうだな~」
「おっけです。じゃあ、負け越した方が罰ゲームですね~」
「おお~」
俺はその時気付いてなかった。ガガが言った言葉の恐ろしさに。
そして、このガガという女の恐ろしさに。
「せんぱ~い、ちら♪」
「や、やめろ! マジで!」
ガガはバニーガールを最大限生かし俺をお色気攻撃してきた。
いや、バニーガールとは本来そういうものではないはず。ごめん、バニーガール。
ともかく、足を組み替えたり、閉じたり開いたりして、意識を逸らしてきたのだ。
負けた。
俺は負けてしまった。
大敗北だった。
「は~い、せんぱいの負け~」
そう、この女はこういう女だった。
勝つためには手段を選ばない女。それが俺の知る加賀ガガなのだ。
「じゃあ、せんぱいの一敗目ですね。これ、五本勝負とかでいいです?」
「五本勝負?」
「いや、さっき言ったじゃないですか。負け越した方が罰ゲームって」
「え……?」
確かに……聞いた……気がする。
「ええ~、まさか忘れてないですよね~。大好きなVtuberとの約束を、せんぱいが~」
「あ、ああ、大丈夫だ」
「よかった~。じゃあ、何してもらおうかな~、せんぱいに」
まずい! まずいまずいまずい!
ガガの罰ゲームはマズい! 今まで俺は何度コイツの罰ゲームで辱められたことか!
ホストや執事の真似事をさせられて一日おもてなしさせられたり、それこそ、今日の俺みたいな感じでありとあらゆることをお世話させられたり、あ、ラインは超えてません、俺なので。とにかく! 俺の恥ずかし動画をいっぱい持っているのがコイツなのだ!
不幸中の幸い、まだ一敗しかしてない。
ここから逆転することは不可能ではない。
「ぜ、絶対負けねえ」
「くひぃ! 精々がんばってくださいね、せんぱい♪」
二回戦は、カードを使ったゲーム。モンスターに名前を付けて同じ絵柄のモンスターが出たら付けた名前を呼ぶ。先に呼べた方が手に入るシンプルなゲームだ。
百人以上Vtuberの名前を覚え、推し達のプロフィールを把握するほどの記憶力のある俺なら勝ち目はある。
だが、
「ガガのバニーガールに性的興奮を覚えるせんぱい!」
「ぐあああ! とられた! って、なんだその名前!」
ガガはモンスター達に、俺が言いづらいような名前を付けて来た。
っていうか、名前かそれ!
「言っときますけど名前ですからね、ガガノバニーガールニまでが名字で、セイテキコウフンヲオボエルセンパイが名前です」
「いや、だとしたら名前長いな……くそ、次めくるぞ、ほい。あ……!」
「えっなことを考えて鼻血出しちゃうせんぱい!」
「だから何だその名前!」
こいつの名前の付け方の悪意がすごすぎる。
「じゃあ、せんぱいもそういう名前つければいいじゃないですか。ほら、新しいモンスターですからせんぱい名前つけていいですよ」
「えー、うーん、俺で言いにくいワードがなさそうなんだよなあ……」
「超かっこいいせんぱーい。意外と細マッチョせんぱーい。全裸せんぱーい」
「やめなさい! えーと、言いにくそうなの言いにくそうなの……あ! じゃあ、超絶カワイイガガってのは……流石にお前でもはずか……やめとくか……」
「そっすね……やめときましょ……」
まっかっかになったガガに向かって流石に俺もそれで攻めれず、ガガは長ったらしい俺を辱める名前を付け続け、結局二回戦も俺の負けだった。
そして、二回戦後半の鈍さが嘘だったかように煽ってくるガガ。
「えー、どうすんすかー? せんぱーい? もうあとがないんですけどー?」
「ふ、ふん! じゃあ、次のゲームは俺が選ぶ! コイツだああ!」
俺が選んだのはオセロ。新しい系は正直ガガに勝てる気がしなかった。
だが、オセロに関しては、
「俺はオセロを姉さんに延々付き合わされた記憶がある。その成果を今見せてやるよお!」
「ふーん」
俺のあおりに対するガガの反応はイマイチだった。
「あのー、せんぱいー? 女の子とゲームしてる時に他の女の子の名前出すとかマジでしない方がいいっすよ」
ジト目でガガはそういうとオセロの準備を始める。
「あ、すんません」
マジトーンにガチでビビッて謝る俺。
「ん? でも、そしたら、お前が、嫉妬してるってことに……」
「はあああああ!? なんでそうなるんですかあ!? せんぱい、脳みそお花畑ですかあ!?」
急にガガの猛攻が始まった! なんなんだよ、コイツ!
その後もガガがめっちゃ煽ってきたが、そんなにガガは強くなかった。
長考してる時に限って悪手を打つ。
ほぼ俺の黒に染まっていく。
「ぐぬぬ」
「あれ~、どうしたんですか~、ガガさん~? ちょっと弱すぎじゃないですか~? あなたの白、全部黒に変わるんじゃないですか?」
俺が煽り倒すと、ガガは口元を隠しながら眉間に皺を寄せる。
だが、俺は見逃さなかった。ガガが笑みを漏らしていたのを。
まだ逆転の目があるのか? 俺は姉さんとの対戦の記憶を掘り起こす。
だが、姉さんはガガと同じで弱かった。いや、姉さんの場合は、
『私が累児によって塗り替えられていく感じがたまんないわ』
そう、言っていた。いや、ゲームの趣旨。
あれ? もしかして、こいつも?
だが、俺は下手な地雷は踏むまいと黙って全部黒にしてやった。ガガはずっと口元を隠していた。そして、思い出した。前コラボしてた時にオンラインでやってたオセロめっちゃ強かったわコイツ。まあ、黙っておいたけど。
俺の勝利。負けた側がゲームを選ぶ。だから、今度はガガの番だ。
俺は常に崖っぷち。ガガが何を選ぶかどきどきしながら見つめていた。
「そっすね~、じゃあ、これかな~心理戦を楽しみましょうやあ」
ガガが選んだのは、歴史ある有名ボドゲ。良い幽霊と悪い幽霊をお互いに探しあう正に心理戦ゲーム。
心理戦であれば、俺のVtuber専用神の耳が生かせる!
そう思ったが、ガガはガガで俺の表情の変化一つ見逃さずくらいついてきた。
「ひひ……せーんぱい、動揺してますね」
「く……お前、俺の表情読めすぎだろ……お前、俺の事大好きかよー!」
「は、はあ!?」
俺の心理攻撃は功を奏し、ガガは駒を倒すという致命的なミスを犯し、最終的に俺の勝利だった。だが、ガガはずっと文句を言っていた。うるせえ、勝てばいいんだ。
そして、最終戦。決めるのはガガ。
「じゃあ。もう時間もないですし、『愛してるよゲーム』で決めましょっか?」
「なあんでだよおおおおお!」
愛してるよゲーム。
それは二人の場合は向かい合い、『愛してるよ』と言い合い照れた方が負けという恐怖のゲームだ。
「表情や身振り、若干の言葉のアレンジはオッケーってことで」
「いや、待て待て待て!」
「なんすか?」
「いや、お前……本気で?」
俺がそういうとガガはバカにしたような目を俺に向け、
「え? 本気ってどういうことです? 本気になっちゃうってことです? いやー、いいですよ? せんぱいが本気で言いたいなら本気で言っても。はいはい、ガガは受け止めてあげますよ。っていうか、時間がないからさっさと終わらせるからこれにしましょうって言ったの聞いてなかったんですか? まあ、せんぱいが愛してるよってガガに言いたいだろうから選んであげたってのは多少ありますけどねえええええ?」
コイツの煽りスキル半端ねえなあああああああ!
俺は顔面の全神経を操り、ガガを倒すことに決めた。
二人向かい合う。
ガガはにやにやしながら、一発目をかましてくる。
「せーんぱい、愛してるよ☆」
おふうう! いや、そりゃ効くだろ! 推しVtuberの声で言われたら!
だが、耐えた! 俺は渾身のイケボでガガに向けて囁く。
「愛してるよ……!」
「はい、じゃあ、次ガガですね」
全然効かなかったんですけど! 表情ピクリともしねえ!
その後も必死で耐えながら、ガガに色んな方法で囁くが、効果なし。
ガガはマジで多少口が動いてもほとんど変化がなかった。
そして、俺は色んな方法を試しもうパターンがなかった。
こうなれば気持ちしかねえ!
そう考えた俺は出来るだけガガへの思いを高めるべく、Vtuber加賀ガガの姿を思い浮かべる。
クソガキムーブでみんなを盛り上がるガガ。
ゲームに関しては凄い天才的なセンスを持ってみんなを楽しませるガガ。
だけど、ゲームは楽しいのが一番と、自分の不利なゲームにも挑むガガ。
みんなで楽しい事を一番に考えるやさしいガガ。
あ、てぇてぇが溢れてきた……!
俺は己の中で高まるてぇてぇ気持ちをガガにぶつける。
「ガガ……愛してる……」
ガガは小さく口を開くと、俺を見つめ……
「ガガも……先輩を、愛してます……」
カウンタアアアアアアアアパアアアアンチ!
「……。……あー! はい、せんぱい照れたー! ガガの勝ちー! あー、ヤバかった笑いが照れにカウントされたくなかったから口の中噛んで我慢してたわー」
「ばぁか! お前、口の中は大切にしろよ、Vtuberだろ! 見せてみろ」
「えーやだー! せんぱいセクハラー! 大丈夫大丈夫! 全然へいきですよー! あー! たのしかったー! じゃあ、罰ゲームはまだ今度という事で、配信の準備に戻りまーす!」
そう言ってガガは大量のボドゲを箱に詰めて自分の部屋に帰っていった。
「つ、疲れた……けど、まあ、楽しかった、か……」
久々にむきになってやったゲームは楽しかった。
感情むき出しで煽りあってプロレスしてたゲームは、本当に楽しかった。
「ふふ……」
気付けば、そーだが後ろにいた。
「そーだ、どした?」
「いや、夕食出来たから呼ぼうと思ったんですけど、ガガちゃんが楽しそうでしたねえ……ねえ、ルイジさん気付いてます?」
「ん? 何が?」
「ガガちゃん、『せんぱい』と関連付けたらなんでも覚えられるんですよ。オセロで『せんぱい』の色に染められるのしあわせそうだったんですよ。心理戦にかこつけて『せんぱい』の顔じっくり見てたんですよ。3連勝したらすぐ終わっちゃうから、『せんぱい』に勝ってほしがってたんですよ? ……『せんぱい』に愛してるって本気で言われたかったし言いたかったんですよ?」
うーん……照れる!
そーだは昔からガガの友達だからそういうところが良く分かるんだろうな。
「ルイジ『せんぱい』、よかったら夕食の時にガガちゃんの配信見ませんか? あの子、絶対今日テンション高いですよ。罰ゲーム賭けます?」
「負けと分かってるゲームはやらないよ……」
ゲームは勝ったり負けたりバチバチやりあって感情出し合って盛り上がるのが一番だ。
俺はその後のガガのハイテンションゲーム配信を見ながらそう思った。
お読みくださりありがとうございます。
ガガが好きすぎて、長くなってしまいました。そういえば、初のガガ回……?
第一部・第二部と変更しました。
いきなりですが、今日二回か三回の更新を終えたら、第二部終了とし、週末定期更新くらいのペースに落とし他の連載ペースを上げようかなと考えています。
この作品自体はひたすらてぇてぇを描き続けるだけでやろうと思えば毎日書けそうなんですが書けすぎて他に時間割けてないので汗
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コンテスト用に書いていた新作ハイファンタジーをアップしていきますのでよければご贔屓に!
金髪碧眼ノ陰陽師~「四大元素魔法を理解できない落ちこぼれが!」と追放された私ですが流れ着いたジパングで五行とコメと美丈夫に出会って『いとおかし』でして、戻って来いと言われましても『いととおし』~
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