表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/195

31てぇてぇ『魂からの声ってぇ、きっと届くと信じてるんだってぇ』

【登場人物紹介】 

天堂累児(てんどう るいじ)

物語主人公。Vtuber狂いでVtuber事務所に就職したが追放されたが、姉に拾われる。


天堂真莉愛(てんどう まりあ)

累児の姉。【ワルプルギス】所属のVtuber、高松うてめ。元声優志望のブラコン黒髪ロング美女。


加賀ガガ(かが がが)

【フロンタニクス】から転生(移籍)してきた新人Vtuber。ワルガキムーブが得意。


楚々原そーだ(そそはら そーだ)

【フロンタニクス】所属の元・清楚系Vtuber。累児を信頼してたが退社され落ち込む。

リキッドと付き合っていた事が会社にバレ、社長から『闇堕ち』を命じられる。




それは、ただの勘だった。


『っはあ……ごめんね、今日もイロイロしちゃってた。あは。こんばんは、闇に堕ちた楚々原そーだ。今夜もアナタと刺激的な夜すごしたいな』


ただのいつも通りの、闇堕ち楚々原そーだのいつもの挨拶だ。


だけど、嫌な予感がした。


こわい。なにが? わからん。ただ、こわい。


心臓が高鳴り続けている。身体が冷たくなって震える。


「累児、どうしたの? 大丈夫?」


今日はお休みだから一緒に見ようと言ってくれた姉さんが隣で心配そうに俺を覗き込む。


「ねえさん、おれ……」

「累児」


姉さんは、俺を見て、優しく笑った。


「何か聞こえたんでしょ? 累児には」


馬鹿な妄想で、想像だ。

それでも、姉さんは、何も言ってないのに俺を信じてくれて、


「姉さん、俺、行ってくる」

「行ってらっしゃい。ちゃんと帰ってきてね」

「……うん」


俺は、スマホと財布を手にし、家を、オフコラボの聖地と呼ばれる我が家を後にする。


オフコラボの聖地。

勘違いさせてもらえるなら、俺のお陰もあって元気にてぇてぇ配信をVtuber達が沢山してくれるようになった。

その彼女達の笑顔が、魂の声が、俺の背中を押してくれた気がして、俺はまっすぐ前を向き走る。


そして、タクシーを探しながら、アイツに電話をかける。


『ガガ!』

『もしもし……先輩?』


いつもの俺を馬鹿にした口調じゃなく、声がかたい。もしかして、配信を見てたのだろうか。

ずっと仲良しだった二人だ。何か感じるものがあったのかもしれない。


俺は、今からVtuberファンとしてのラインを踏み越えてしまう。

それで、追放されるなら仕方ない。

俺は、俺の大切な一線だけは、【Vへの愛だけ】は守りたいから!!!


『頼む! ガガ! 教えてくれ! Vtuberファンとして失格なのは承知の上だ! アイツの! 楚々原の家の住所を教えてくれ!』

『……うん! お願い! 先輩! あの子、多分やばい! あの子を助けてあげて! 先輩なら、きっと!』


ガガから住所を聞くと俺はタクシーに飛び乗った。

その間もスマホは、アイツの配信を見続けた。


「すみません出来るだけ急ぎで! あと、ちょっと音うるさいかもしれませんすみません!」

「お、Vtuberですね? 私も知ってますよ。その子最近人気らしいですね」

「そうなんです! 頑張り屋なんです!」


アイツの頑張り屋で真面目な所は本当に凄くて、ガガなんかも素直に褒められて照れたり、褒め返しされてそーだが泣いたりして、マジでてぇてぇと思ったし、良いVtuberになれると信じている。


画面の向こうの、頑張り屋で泣き虫でクソ真面目だった楚々原そーだは、笑っていた。

怖いほど美しく。色気は溢れているけど、ただただ塗りつぶされたような色気。

破裂しそうなほど高鳴る心臓を抑える。


タクシーが辿り着き、お金を置いてダッシュで降りる。

嫌な予感は消えない。


部屋まで間に合うか。

それに彼女は開けてくれるのか。


「お客さん! なんか分からんが間に合うといいなー! がんばれよー!」


遠くからタクシーのおじさんが叫んでる。


そうだ……!


「これしかないっ……!」


俺は慌ててマンションの裏に回る。川沿いにあるそのマンションの裏側は大きな川原だ。


『ごめんね~、アタシさ、アタ、アタシ……私、ごめんなさいごめんなさい! もう、消えるので許してください』


楚々原の、そーだの、アイツの、本当の、魂の声が聞こえた気がした。


それは、絶望の声だった。



それはお前の本当に伝えたかったことじゃないだろうがよ!!



そして、何かバタバタという音。


俺は大きく息を吸う。



俺はまたラインを超える。罰は受け入れる!

俺は俺の譲れない一線を守る為に! 俺は! 叫ぶ!



俺が叩かれるだけならそれでいい! そんなの平気だ屁でもない!


「聞いてくれえええええ!」


俺の声を! 思いを! 愛を!


「俺はっ! お前を応援してる! 色んな事に悩みながら! それでも一生懸命頑張ってるお前を、俺は! 俺は! 応援してるんだああああああああああああああああ!」


どこの部屋かも分からない! もうこの方法しか声を届けられない!

なら、俺は叫ぶ! 俺のVtuberへの愛をありったけ込めて全力で叫んでやる!


マンションの住人たちが窓を開け、出てきて、こちらを見ている。


「うるせーぞ!」

「よっぱらいがよお!」

「近所迷惑だろうが!」

「しね!」


そんな声も飛んでくる。


配信で叩かれるVtuberへのコメントは見慣れている。

けど、リアルに怒られると。目的があっても痛いな。すごく痛くて怖い。


でも。


それでも構わない。

構わないから、声を、声を聞かせてくれっ!


俺は頭を下げ続けながらも彼女の声を待った。


俺は、待ち続ける。

配信では、もう彼女の声は聞こえない。


頼む!

頼む!

頼む!


届いていてくれ!


声は……かえって来なかった。

そして、警察がやってくる。


「あの、ちょっとお話を……」


これ以上、何か起こせば姉さんにも迷惑がかかってしまうかもしれない。


「はい。ご迷惑を……」


その時だった。


「待ってください!」


その声は相変わらず綺麗で、けれど、痛々しくて……きっと必死に頑張ってきたんだろうな。


「はあはあっ……私も、いきます。この人が叫んでくれた理由を、わた、私が、説明します。だから、私も、連れて行ってください」


ボロボロだけど、それでも、必死に生きていてくれた彼女が、其処にいてくれた。


それだけで俺にとっては、てぇてぇよ。


お読みくださりありがとうございます。


今日はなんとかあと一話更新しようと思います。

あと数話で終了します、よければお付き合いください。


評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。


よければよければ、他の作者様の作品も積極的に感想や☆評価していただけると、私自身も色んな作品に出会えてなおなお有難いです……。


いいね機能が付きましたね。今まで好きだった話によければ『いいね』頂けると今後の参考になりますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 流石のV狂い元マネ そーだの心と体の致命的なズレを感じ取ってくれた。 頑張れ累児、 壊れかけのV達を救えるのは君だけだ。 [一言] 非常に気になるので 次話更新、お待ちしております。
[良い点] てぇてぇ…!
[一言] おっさんにとって夜中に叫ぶセリフって 響子さん好きじゃぁー! が真っ先に思い浮かぶんよなぁ… 冗談はさておき、やっぱり魂の声を聞き取って緑のアニキは動いたんだなぁ… そーだの消えます発言に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ