表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/195

26てぇてぇ・くねぇ『弱ってる時ってぇ、正常な判断が出来なくなるから気を付けてぇ』★

【登場人物紹介】 

天堂累児(てんどう るいじ)

物語主人公。Vtuber狂いでVtuber事務所に就職したが追放されたが、姉に拾われる。


天堂真莉愛(てんどう まりあ)

累児の姉。【ワルプルギス】所属のVtuber、高松うてめ。元声優志望のブラコン黒髪ロング美女。


楚々原そーだ《そそはら そーだ》。初登場。【フロンタニクス】所属Vtuber。


リキッド《りきっど》。初登場。【フロンタニクス】所属Vtuber。


風呂谷来希(ふろたに らいき)

【フロンタニクス】社長。累児を追放した人。


【100日目・楚々原そーだ視点】



『あの、今日もご覧いただきありがとうございました! 明日もいい日になりそーだ★ じゃあね、がんばれぶい!』

〈なりそーだ〉

〈がんばれV〉


「ふう……」


私は『楚々原そーだ』は配信を終えて、横の蓋つきタンブラーに入れておいた水を口にする。


楚々原そーだ。

【フロンタニクス】の新人Vtuber。青髪の清楚な女の子。それが私だ。


「悪くはなかったと思う、けど……」


良くもなかったのだろう。

コメント、スパチャ、登録者数の伸びが如実に語っている。


最近、事務所の空気が重い。

ウチの二枚看板だった引田ピカタ先輩が引退し、小村さんも卒業を考えているらしいし、同期も何人か辞めた。


私は、辞めた所で次があるか分からない。

だから、今、必死に頑張っている、けど。

数字は伸びない。


社長はイライラしてるし、それに社員さんもイライラして、タレントの皆さんもイライラしてる。怖い。


「こんな時、天堂さんがいてくれたら……」


天堂さんは、新人を一手に引き受けてくれていた社員さんで、いつも私達を励ましてくれた。


『君の声は、凄く綺麗だ。絶対に良いVtuberになれる! それにあった企画どんどん考えようぜ!』


そう、言ってくれてたのに。

優しい人だった。頼りにしてた。でも、もういない。


自分の心がどんどん弱っていくのを感じる。


水を飲む。潤う。でも、乾く。

不安で不安で仕方ない。私はこれからどうなっちゃうんだろう。


「このまま、ただ、配信してていいのかな」


スマホが震える。怖い。

画面を見て、ほっとする。あの人からだ。もしかして……


『明日は会えるよ。どこか行こうか』


頬が緩む。私を支えてくれるあの人。久しぶりに会うことが出来る。




翌日。

待ち合わせ場所に遅れてだけど、あの人は来てくれた。


「ごめんね、遅くなって。ちょっと昨日、編集遅くまでやってて……」

「いえ、大丈夫です。こ、こちらこそありがとうございます。お忙しいのに」


にこりと笑う茶髪の素敵な彼。


リキッドさん。

最近、【フロンタニクス】に所属することになった男性配信者さんだ。

顔もそうだけど、声もかっこいいから今のウチではトップ。それに、優しい。

出会ったばかりの私に、


『大丈夫? この業界では俺、先輩だし、何でも相談してね』


そう言ってくれた。それに、【フロンタニクス】の空気が悪くて悩んでいた時も、


『大丈夫。任せて。俺が、この事務所を引っ張るから……だから、そーだは、俺の傍にいてくれないかな?』


そう、言ってくれた。天堂さんもピカタ先輩も同期の仲良かった子も居なくなった私にとってリキッドさんは頼れるカッコイイ先輩だった。

そして、リキッドさんは私の事が好きだといってくれた。


私を支えてくれると言ってくれた。


リキッドさんは忙しくて中々会えないけれど、こうして、時間が会う時はデートもしてくれる。


私の恋人。


今日はテーマパークに連れて行ってくれた。

リードしてくれてかっこよくて、私は『えへえへ』って笑うことしか出来なかったけどそれでも笑ってくれて、短い時間だけど、楽しかった。


その帰り道、『あの人』に出会った。


凄く綺麗な黒髪の女の人と手を繋いで歩くあの人を。


「あ……!」

「……!」


向こうも気づいてくれて、恥ずかしそうに小さく会釈して、綺麗な女の人と一緒に帰っていった。しあわせそうだった。


「……ねえ、さっきのあの女の人と一緒にいたアイツ誰? 知り合い?」

「あれ、は……その……」

「……そっか。うん、しょうがないよね。そーだちゃんにも隠し事の一つや二つあってもおかしくないよね」


その言葉がなんだかとっても冷たく感じて、手を放された感じで、慌てて口を開く。


「いえ! あ、の……あの人は、ウチの事務所に居た、りっ……くんと入れ違いで出て行った風呂の社員の人です。天堂さんって言う……」

「へ~、なるほどなるほど……ありがとな、話してくれて。うん、じゃあ、そろそろ行こっか」

「いえ、ごめんなさい。今日は私、配信の準備もあるし、やめときます……」

「……そっかそっか、分かった。残念。じゃあね」


私は喋ってしまっていた。あの人の事を……。


それがなんだか後ろめたくて、リキッドさんの『お誘い』を今日は断ってしまった。

なんでだろ、あの人を見て、なんか色々思い出したせいかな。

なんだかリキッドさんが怖くなった。

これじゃあ、今まで怖さや寂しさを埋めるために身体を委ねたみたいじゃないか。


私はもう、ずっと……最低だ……。


次の日、私は【フロンタニクス】に呼び出され、社長室にいた。

社長室なんて久しぶり……何事だろう。もしかして。


「そーだ、ちょっと困るなあ」

「な、何がですか?」

「お前……リキッドと繋がってるだろ」

「え……? なんで……?」

「困るんだよなあ……ウチの男性Vtuberのトップに絡まれたら……人気商売なんだし、アイツに今そういう噂流れても困るし、お前もまだ新人なのにさあ」

「あ、あの……すみませんでした!」


なんで? どうして? 誰が?

そんな疑問が溢れて、汗となって流れ落ちた。

じいっと社長が見つめてくる。

クビになるのかな? 嫌だ。折角大手の事務所で憧れのVtuberのお仕事につけたのに。


「……悪いと思ってる?」

「は、はい!」

「ならさ、ちょっとウチの為にやって欲しい事があるんだよ……」

「え?」

「そーだちゃん、君さ、闇堕ちしてくれない?」


闇堕ち? 良くアニメとかゲームでは聞くけど、どういうこと?


私はその時は、そんな単純な疑問しか浮かばなかった。


でも、その後の社長の話を聞いて震えた。


でも、でも、私が、Vtuberである為に、それを、闇に堕ちることを、受け入れるしかなかった。

お読みくださりありがとうございます。


元々短編補完するつもりが長くなった本作ですが一旦、恐らく35話程度で完結します。

なので、ここからクライマックス展開となっていきます。

ちょっとシリアスしんどい展開がありますが、よければ、お付き合いください。

また、私の作品で毎回で申し訳ないですが、設定だけは作ってあるので、続編を書く可能性はあります。


評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。


よければよければ、他の作者様の作品も積極的に感想や☆評価していただけると、私自身も色んな作品に出会えてなおなお有難いです……。


いいね機能が付きましたね。今まで好きだった話によければ『いいね』頂けると今後の参考になりますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ヤリチンとクソ社長がグルとしか思えない
[一言] ワルプルギスもフロンタニクスもアイドル売りの事務所だと思ってたから、男性がVで出てきてビックリw
[良い点] ウテウト回が暖かい話なだけに風呂屋のゲス差がきついっす。そーだちゃんゲスの食い物にされるために登場させられたみたいでかわいそう。早くウテウトに浄化されるなり救ってあげてください。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ