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灰燼に帰す  作者: 伊勢原エルザ
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“炎冠”の旭 邪神の黄昏

「お前の欺瞞(まやかし)は晴れた。闇夜を引き裂く旭のように、俺は世界を遍く照らす。『火柱』としてな。」

「私に、私に全て任せておけば良いものを。私が全て御膳立てしたのだぞ!」

累陰の肌は黒い斑点を見る見る内に増幅させ、彼の背中から竜の如き大翼を生やした。更には爪を、牙を、尾を生やし、その姿は邪なる獣となった。

ましてや、清浄なる竜とは程遠い悪魔のような雰囲気すら漂わせている。

「やはり、私が『火柱』になるべきだった。組織の連中が兎や角言わなければ、今頃私は“炎冠”を手にしていたと言うのに!」

邪神が吠えた。

科兎山を覆い隠す程の大翼を翻し、空へ羽ばたくと掌から黒い波動を迸らせた。

波動は畝りながら形を変えると、玄焚の『天津日嗣の剣』と同じ形状に象られた。

しかし、その色彩は玄焚のものとは異なり、非常に禍々しく漆黒に塗られていた。

「“炎冠”を、その“炎冠”を私に寄越せ!」

赫く染まった空を轟かせ、邪神は科兎山頂上目掛けて大剣を振り翳した。

玄焚はしかとそれを認め、鞘へと納刀するように太刀を懐へ引き付けた。

「今、救ってやる。火禱『天津火』」

『天津日嗣の剣』が玄焚の救世の想いに呼応した。

すると、総てを円環の巡りに還す火燈(ひかり)が太刀を包んだ。

一瞬の後、堕天した邪神の大剣と太陽の赫きを放つ玄焚の神爾が交差した。

黒い波動が爆発しながら太陽を包んだ。

あらゆる火を飲み込みながら、その勢いを増した。

総ての希望は闇に葬られたように見えた。

すると、突然、絶望の闇を切り裂くように、人々の遺された希望が溢れるように、太陽の赫きが一閃した。

それを皮切りに旭が昇るように闇が晴れた。

邪神に黄昏が訪れた。

水を受けた泥人形が崩れるように、玄焚の『火』を受けた邪神の腕や尾は次々に折れて崩壊した。

邪神の胸から顔を出した累陰は今までの慇懃無礼な態度とは大きく異なり、酷く(やつ)れていた。

「私が…新時代の…。」

そう呟くと、彼は静かに気を失った。

諍いの終焉を告げるように、彼の胸から一本の黒い短剣が落ちた。

軽い金属音を立てた短剣は徐に黒い靄へと変わり、空中へと溶けていった。

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