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ごはんとワルツを  作者: 明石家にぃた
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一石二鳥?

ちなみに私はイトコの中では完全に嫁き遅れです。

むしろ嫁をもらった方が早いかも知れない。

 うっきうきである。

 

 去年の秋に、出会って三か月でスピード結婚した従姉。

 ……の、妹。

 まぁ私にとってはこっちも従姉ではあるんだけど。

 んでその彼女に、子供が生まれたらしく。

 

 もちろん身内なのでね。

 少ないとはいえ、出産祝いを包んだわけで。

 その内祝いが、先ほど届いたんですよ。

 

 ちょっといいトコの、どら焼き。


 このクラスのどら焼きは、自分では買わない。

 だってお高いもの。

 それこそちょっとしたお呼ばれに持って行く手土産とかにはちょうどいいのだろうけど、私のような小市民には、そんな機会などあろうはずもない。

 

 たまに思い出したころに、仏さんの下がりものとかで実家から送られてきたりするけど。


「せっかくだからお茶とかで優雅に食べたいよね」

 ちょうど今日はお休みですし。


 さすがに紅茶ぐらいあるだろう、と探った中に、見慣れないパッケージを見つけた。

「ガイヨウ茶……?あ、ヨモギか」

 どこかのイベントで試供品としてもらった薬草茶だ。

 表の仰々しい名前には心当たりがなかったが、成分表を見たらでかでかと「ヨモギ」と書いてあった。

 

 やたら健康そうなおばちゃんがなんかいろいろ言ってたけど、効能は忘れた。


「面白そうだからこれでいいか」

 なんとなく紅茶よりもどら焼きに合う気がするし。


 裏に書かれていた『美味しい淹れ方』に添って、お湯を沸かす。

 目指すは七十度。


 沸騰したお湯じゃないのは、アレかな。

 玉露とかのお高いお茶は、少し冷ましたお湯で淹れる方が甘みが出るとか、そういう感じかしら。

 

 沸騰したお湯を、まず湯呑に入れる。

 それをさらにマグカップに移し入れる。

 わざわざ測りはしないけど、確か一回で五度ぐらい下がるんじゃなかったっけ。

「つーことはだ。あと二回ぐらい?」

 まぁなんか適当に。


 最後はヨモギのティーバッグを入れた湯呑に、お湯を流し込む。

 七十度かどうかはわからないが、少なくとも沸騰したてのお湯ではない。

 そもそもちゃんと比較したわけではないので、違いは大してわからんのだけど。

「結局はその方が気分的に面白いからやってるに過ぎないしな……」

 

 いやもうほんとそれなー


 なにはさておき、ヨモギ茶。

 春になると、そこら辺でわんさか生えているあのヨモギ。

 保育園のときのお散歩ではこぞって若芽を摘み、給食のおばちゃんがおやつのお団子にしてくれたあのヨモギ。

 小学校のときに友だちと公園で遊んでる最中にそのまま生で食べ、夜に娘たちから話を聞いた親にうっかり悲鳴をあげさせたあのヨモギ。

 たまに毒草のトリカブトと間違えられて、ニュースとかで騒ぎになるあのヨモギ。

 つか、匂いで気づけ匂いで。

 

「その気になれば自分でも作れそうだよなあ……ヨモギ茶」

 まぁ街中のやつは色々問題ありそうだけど。

 衛生上の問題とか。

 公園に生えてるやつをむしって食べてた奴が今さらそんなもん気にするのかってところは置いといて。

「んー、良い匂い~」

 

 湯呑からただよう、どこか懐かしいような、青々しい匂い。

 ヨモギもちとはちょっと違う匂いなのは、やはり餅がないからか。


 ……あ、なんかヨモギもち食べたくなってきた。今度買ってこよ。


「んでも、香りだけなら緑茶に近いような……?」

 爽やかな草、という意味では、当たらずも遠からず。


 おそるおそる、口をつけてみる。

 ふわっと、子どものころに遊んだ公園の記憶がよみがえる。

 

 みんなでバッタを追いかけ回した原っぱ。

 これ食えるんだぜ、とガキ大将の子が差し出してきた、たんぽぽの葉っぱ。

 言われるまで知らなかったのが無性に悔しくて、これだって食べれるんだよ、と突き出したヨモギの葉っぱ。

 自慢げに言うほど、美味しくはなかったけれど。

 

「まぁ生だし、味だってついてなかったしね」


 そんな適当な知識を抱えたまま大人になって、たんぽぽは花から根っこまで、すべて食用に出来ると聞いて驚いたものだ。

 花や葉はサラダに。根っこは炒ってコーヒーの代わりに。茎は……なんだったかな。


「てかヨモギはわかるけど、ガイヨウってなんだ?ガイヨウ……ガイヨウ……あ、漢方としての名前なんだ。へー」

 なんならたんぽぽも漢方だった。マジか。

 生姜が漢方なのは知ってたけども。


「美味しくて身体にもいいのってお得だよなぁ……今度、他のも調べてみよ」

 どうやらガイヨウは身体を温めたり貧血に効いたりもするらしい。

 とりあえず今日のところは、ヨモギ茶と美味しいどら焼きを楽しむことにする。

 

 心なしか普段のお茶を飲んだときよりほかほかしてきた気がするお腹にほっこりしながら、私はどら焼きの最後の一口を口の中に放り込んだ。

鍵っ子だった幼少期にその辺の草をむしって食べてたのは実話です。

親には「ごはん代もおやつ代もちゃんと置いてってたのに?!」と嘆かれました。

やんちゃが過ぎる。


艾葉ガイヨウ茶も美味しいけど、蘇葉ソヨウ茶(要するにシソ茶)も好きです。

漢方とか薬膳とか中医学とかにめちゃめちゃ興味があるのですが、なかなかきちんと勉強する余裕がなく、にわか知識だけで楽しんでいます。


次回更新は6/25です。

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