お手軽ガール ※ガールではない
昨日までインフルでぶっ倒れてました。
(原稿ギリギリになった言い訳)←今に始まったことじゃない
熱で朦朧とする中、空腹感はあるのに喉の痛みで食事をする気力もわかず、という経験は記憶にある限り初めてだったので新鮮でした。
もう二度と経験したくありません。
「お願いします!」
一瞬、私はエンターキーじゃない、という小ボケが口をついて出そうになったが、あまりに動揺しすぎてそれは叶わなかった。
「なん……わた……」
なんで私?と聞くより先に、後輩は食い気味で言う。
勢いがスゴイ。
……あ、なんかこういうわんこ、どっかで見たことあるな。
ポメラニアン?
「俺、料理覚えたくてっ!
んでうちってわりと料理出来るひと多いけど、なんか『いちばん早い安い美味い、みたいな料理が上手そう』ってみんな言っててっ」
私は牛丼屋か。
飲み会のときのサラダ、簡単そうなのにめっちゃ美味かったです!とキラキラした目で言われてしまった。
確かにアレは間違いなく、早い安い美味いなんだけども。
「……教えるのはいいとして、どこで?」
「あっ!」
いや考えてなかったんかーい。
慌ててスマフォで検索かけてるとこを見ると、マジでなんにも考えてなかったっぽい。
そんな行き当たりばったりで大丈夫なんか。
「……まぁいいや、場所の見当ついたら教えて。あと、君んちで常に買い置きしてる食材と調味料はなにがあるか、も」
「了解ですっ!」
まぁ、場所がないからっていきなり「家行っていいですか」とか「うちじゃダメですか」とか言い出すような子じゃなくてよかった。
ぶっちゃけ来られても迷惑だし、行くのはもっとメンドクサイ。
確かこの子も一人暮らしって言ってたはずだし。
それにしてもだ。
私に料理を教えて欲しい、とは言うものの、私もそれほど料理が得意なわけではない。
義務教育の家庭科レベルの技術と、これまでに読んだ本からの知ったかぶり知識がせいぜいと行ったところ。
それ以外で家庭科的な技術があるとしたら、夏休みの兄の実験教室ぐらいだ。
そんな自分でも役に立つのだろうか。
正直、ていよく先輩たちに面倒ごとを押し付けられたようにしか感じない。
帰宅後、後輩から送られてきた買い置き食材についてもツッコミどころだらけだった。
「キャベツと卵ともやし……調味料はしょうゆと塩と砂糖とコショウとマヨネーズのみ。
逆にすごいな。うちより食材ないじゃん」
なんの縛りプレイだコレは。
私自身もたいがい、縛りプレイみたいな適当な料理ばかりしてるけど、さすがにこれはひどい。
せめて何らかの炭水化物は常備したまえ。
「……これにいくつか食材と調味料足して、を前提に考えた方がいいな」
そうなると、少なくとも追加調味料はめんつゆはマスト。
味噌は……多分私と一緒で持て余すだろうから今のところ保留。
あとはカレーや煮物にも使える、玉ねぎやにんじんなどの根菜類。
魚は調理が難しいから除外するとしても、豚コマとひき肉の冷凍保存はあった方がいい。
冷凍庫があれば、だが。
ぶっちゃけ、この調子だと下手すると冷凍室がない、もしくは小さい可能性も大だ。
冷凍庫の状況次第では、冷凍のミックスベジタブルとかほうれん草もあると便利。
「買い足すとしたらそんなとこか……」
場所は、職場からそれほど遠くない場所にあるレンタルキッチンスタジオでどうか、との連絡が来た。
それに関しては問題はない。
料理をする場所がないという場合に、適当にどちらかの家ではなくきちんと外部で場所を探して来てくれるのはだいぶ好感度が高いと思う。
まぁ仮にも妙齢の男女なわけだし。
彼が職場で愛されているのは、こういうところなのかも知れない。
いやまぁそもそも普通、家族や恋人でもない妙齢の男女がどこかで一緒に料理をする、なんて状況はあまりないとは思うが。
「それなら当日は冷蔵庫にあるものと調味料を持参で。他に使えそうなものがあれば近くのスーパーで買い足してから行きましょう、と……」
必要な返信はした。
さて、どうせならうちでも軽く縛りプレイで料理でもしてみるか。
現在、我が家にある野菜は玉ねぎとじゃがいものみ。
買い置きとして普段から置いてるのは卵とチーズ。
それから米と、乾麺各種。
調味料はまぁ無難な奴は一通り。
……圧倒的に野菜が少ないのは仕方ない。
今日買い物して帰ってくる予定だったんだもん。
でも妙な相談を受けたせいで、スーパーに寄るのすっかり忘れてたんだもん。
「この材料で無難に作れるのは、スライス玉ねぎを卵でとじたたまご丼か、みじん切り玉ねぎ入れたオムライスか……」
不器用すぎてオムれないけど私。
「それかスパニッシュオムレツでもいいな。ジャガイモとチーズいっぱい入れて」
卵があれば貧乏パスタも出来る。
本当はベーコンが欲しいところだが、玉ねぎとじゃがいもを塩で煮て、ポトフもどきにしてもいいし、卵だけでもカルボナーラは出来る。
作りようによっては、シンプルなポテトサラダは酒にも合う。
「……ちゃんとしたもの、意外といろいろ出来るな」
しかもたいがい、そんなに手間かかんない奴。
牛丼屋みたい、もあながち間違ってないのかもなぁ、と、私はしみじみとしながら切った玉ねぎを電子レンジに放り込んだ。
次回、vs後輩くんinレンタルキッチンスタジオ。
果たして主人公は後輩くんにちゃんと料理を教えられるのか!
(誇大広告)
次回更新は12/25です。




