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ごはんとワルツを  作者: 明石家にぃた
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ゆるゆるゆらゆら

ちなみにこんな適当な作り方を参考にするひとはいないと思いますが、この通りにやるとたぶん失敗するので推奨はしません。※なお、先日失敗したばかりのひと

「プリン食べたい」


 あれだよね。一人暮らしの自炊の醍醐味ってこれだよね。

 ……どれだよ。


 好きなものを好きなときに好きなように作れること。


 とはいえ最近は物価もあがってきたりして、なんでもかんでもってわけにはいかないけど、プリンぐらいなら三連パックの安くてありふれたやつなら、二百円も出せばお釣りがくる。

 コンビニに行けば、ちょっとおしゃれなやつがワンコインしないで買える。


 とはいえ卵と牛乳はある。

 正確には切らしたことがない。


 ぶっちゃけ、一人暮らしなんて卵と牛乳と米と味噌があれば死なない。

 あと塩コショウとサラダ油があればどうにでもなる。


 ビタミンが足りない?

 たぶん卵と味噌がどうにかしてくれる。

 

 ほら、うちはそれだけじゃなくてチーズも買い置きしてるし。


 で、プリン。

 食器棚の奥にしまい込んでいる、足つきのちょっといい酒器。 

 普段ほとんど使うことのないそれに、卵をひとつ、ぽんと割り入れる。


 いやほらー、普段酒飲むときはグラスだし。日本酒だとしてもおちょこだし?

 あんまり使う用事ないんだよねぇ


 じゃあなんであるかって?……それは聞かないお約束です。


 卵の次は砂糖。

 そして牛乳。

 

 分量?あ、なんか適当な感じで。


 そのままよく混ぜる。

 混ざったらラップをして、水を入れた小鍋に並べる。

 水の量はどのくらいだったか。


 そのまま加熱。

 沸騰するまではそのまま。

 お湯が沸騰したら適当なタイミングで火を消し、お湯が冷めるまでそのまま放置。


「……我ながら、なんでここまでいい加減な作り方で覚えてるのか謎なんだよね」


 一人暮らししてすぐのころ。

 無性にプリンが食べたくなって深夜に作り始めて、でも蒸し器とかないからどうにかしてあるもので出来ないかと、ない知恵振り絞って作ったのがこのやり方。


 なお、いつも成功するわけではない。

 卵焼きみたいに固くなってしまったり、卵液がゆるゆるだったり。

 たぶん成功したときの作り方を覚えてないので、毎回ちょっとずつやり方が違うんだと思われる。


 まぁ失敗したのもそれなりに美味いので、結局この適当過ぎるやり方から逃れられないでいる。

 ちなみに鍋が違うと何故か失敗するので、使い古したその小鍋も捨てられないでいる。


「……待ってるあいだにマンガでも読むかー」


 意外とこの〝冷めるまで〟が曲者で、時間を持て余す。

 かといってこの、余熱?の時間も卵液を固めるには重要らしく、この時点ではまだ卵液はゆるいまま。


 ゆるゆるゆらゆら。

 

「レンチンで作るプリン、なんてのもあるけど、あっちはあっちですぐ卵焼きになっちゃうんだよな」


 まぁそれはそれでウマいんだけど。

 ただし卵のこびりついた容器を洗うのがかなりメンドクサイ。


 適当にマンガを流し読みし、うっかり少しうとうとしたところで、卵液のゆらぎを確認してみる。


「……もうちょっと、のような気もするけど、まぁいいか」


 表面はゆらいでいるが、スプーンを差してみれば中の方は固まってるっぽい。


「この、まだあったかいうちのプリンもまた美味いんだよなぁ……」


 これが食べたくて市販のプリンをチンしたら、溶けた。

 あれはあれでミルクセーキみたいで美味しかったけども。


 あ、やばい、寝そう。


 ぼんやりとした頭で酒器を片付け、ベッドに向かう。

 まぁ明日は休みだし。


 ……そこでようやく気が付いた。

 私がこの、あったかいプリンの作り方を正確に覚えていない……覚えられない理由。


「……わたし、酒飲んだ〆でこのプリン作ってるな?」


 そりゃ覚えてないのは当たり前だ。


 〝あったかいプリンも美味い〟


 その記憶だけで、レシピを再現しようとしているのだから。


「今度、シラフのときにいろいろ試作してみよう……」


 まぁたぶん、朝起きたときには忘れているのだろうけども。


ビタミン足りてないよビタミン。あと食物繊維、とツッコミながら、私の冷蔵庫も似たようなもんだなぁ、と宇宙猫になっているなど。

※この物語はフィクションです。いちおう。


次回更新は6/25です。

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