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ごはんとワルツを  作者: 明石家にぃた
42/53

賄賂、ってやつ?

バレンタイン、そういえば今年は従姉からもらわなかったな……

『黄金色の菓子でございます』

 

 この令和の時代に、リアルにそれ言われるとは思わなかったんだけど。

 帰り際に、なにやら悪そうな顔をした同僚がそっと、私の手に何かを握らせた。


 前の沖縄土産のくだりのときも思ったたけど、なにこのこ面白いな。


 そういって差し出されたのは、リボンでラッピングされた小さな小袋。

 中身はわからない。


 まぁそうか、黄金色の菓子ってことは要するに賄賂だからな。

 なんの、かは知らないけれど。

 

「さて……見た目の重量感のわりにはやけに軽いけど、何入ってんだ?これ」


 艶のない黒いマチ付きのラッピング袋に、金のモール。

 大きさは、片手で持つにはちょっと難儀する程度には大きい。


 持ち上げると、じゃらりと音がする。

 さすがに本当に賄賂、ってことはないと思うが、思わずちょっと想像しちゃったりなんかして。

 とりあえず開けてみる。


「あ……」

 中に入っていたのはコインチョコ。

 金色のアルミ素材越しにも、ほんのりと甘い匂いを漂わせている。


 なるほど。確かに黄金色の菓子、だ。


 袋には、直径五センチほどの大きさのきらきらのコインがぎっしり詰まっていた。

 日本円のコインではないから想定されている相場はよくわからないが、ピカピカきらきらのそれは、こう……そそられる。

 

 こういうのが革袋とか入ってたら、RPGに出てきそうでわくわくしちゃう。


「……それでなんでイイ感じの革袋が普通に出てくるんだろうな、私の部屋」


 いや、こないだいつものスーパーにあるカプセルトイコーナーで見つけちゃったときについ……


 濃い飴色の革袋には〝G〟の文字。そうそう、そうこなくっちゃ。

 ゴールド、と読ませるのが一般的だけど、グロリアとかグランとかそういう解釈も出来る感じ、最の高。

 

 ラッピングバッグから詰め替えてみる。

「報酬はグラン金貨でどうだ?みたいなー?っかー!テンションあがっちゃうね!」

 

 まぁ、なんの報酬かはさておいて。

 

 とはいえこのグラン金貨(仮)は、残念ながら貨幣ではない。食材である。

 つまり消費しなければいけない。

 

「……普通に食べてもいいんだけど……」


 それはそれでちょっとつまらない。

 パッと食べてしまえば一瞬でなくなってしまうけど、一工夫でもっと面白くなるのはわかってる。


「とはいえ分量的に作れるものは限られてるよなぁ……」


 手っ取り早いのはホットチョコ。

 レンジで溶かして牛乳入れて、さらにレンジで温めて混ぜまくったら出来上がり。

 シナモンとかラム酒とか入れても美味しい。


「女児チョコでも作るか……」

 

 それこそバレンタインに配り歩くように、湯煎してがっつり大量に作るなら足りないが、まぁ夕飯のデザートにちょっと摘まむように、レンジで溶かして作る分だけならコインチョコ十枚ほどでこと足りる。

 どうも最近、流行ってるみたいだし。


 そしてアラザンはある。

 なんで?とは聞いてはいけない。


 バレンタインコーナーに並ぶ、おとめちっくなビーズのようなそのきらきらに、使う予定もないのにまとめ買いしてしまったのだ。


「……あ、今日バレンタインか」

 渡す予定もなければもらう予定もないので、すっかり忘れてた。


 ……いや、予定はなかったがもらってはいる。

 

 デザインが簡素とはいえ、一般的には男性の家には存在しないであろう黒いラッピングバッグ。袋を止めるためのきらきらモール。


 これが、誰彼構わず配り歩いているものであったとしても、少なくともそれ用に用意したものであることは間違いない。

 

 コインチョコの包み紙をはがしながら考える。


「……お返し、した方がいいのかなぁ」


 本音を言うとめんどくさい。

 とはいえ、そこでイベントのお約束ごとをスルーできるほど、世間に疎いわけでもない。


「ま、来月になってから考えよう」

 十枚ほどのコインチョコを包丁で適当な大きさにぶった切り、耐熱容器にぽいぽいと投げ入れる。

 だいたいこれで、板チョコ一枚分くらい。


 レンジに放り込み、二分ほど温める、を二回繰り返す。

 よく混ぜて、さらにもう一セット。

 実は刻んで湯煎した方が時間的には早いのだが、めんどくさい。

 

「こんなもんかな」

 全体がちゃんととろりとしたところで、スプーンで弁当用のアルミカップに移しいれる。


 本当は可愛いシリコンカップとか柄付きのアルミカップなんかがあればいいのだが、そんなもん買いにいく発想はなかった。


 弁当用の、ちょっと大きめのアルミカップ。

 とりあえず自分で食べるだけならこれで十分。


「……ま、人にあげる予定なんてないしね」

 くれる分にはなんでも食べるけど。


 耐熱容器とスプーンに残ったチョコレートは、牛乳を入れてホットチョコにして無駄なくいただく。


「さて、女児チョコの方はどうかな?」


 銀のカップに茶色いチョコレート。

 ありったけのアラザンをぶちまけて無駄にきらきらにした手作りの女児チョコは、ぶっちゃけ美味しくはなかった。


 見た目の可憐さに反してごりっごりの砂糖のカタマリたるアラザンは、まるでがんこおやじの石頭かと思うレベルで、はちゃめちゃに硬かった。

コインチョコ、美味しいんだけどどうしても上手く剥けない……

あれってどうひんむくのが正解なんですかね。


業務用食べきるころにはコツつかめるかなぁ……


次回更新は3/25です。

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