持ち寄りRTA
持ち寄り飲み会って、どうしても栄養価とか品目が偏るよね、っていう偏見。
それをズバッと、五分で解決します♡
……ところで一般的なお泊り女子会ってどんなことするんですかね。
ちなみに私が参加したやつは、夜通し酒飲みながらアナログゲームして雑魚寝でした。
男子大学生か。
「やっばー、寝ちゃってた……」
とはいえ仕事自体は休み。
確かに今日会うのは職場の人ではあるが、目的は仕事ではない。
要は新年会、という奴である。
いつもであれば居酒屋などを予約するのだが、予算を抑えるためにか、はたまた予約が取れなかったのか、どうも今回の新年会は、場所だけ借りて、食べ物飲み物は持ち寄りとのことである。
それ自体は構わないのであるが……
「さすがに何かしら作った方がいいのかなぁ……」
既婚者は奥さんになにかしら作ってもらうと思われる。
未婚者は乾きものとかお菓子とかその辺り?
男性陣はおそらくそんな感じだろう。
そして、仮に私がここでお惣菜とか市販品を持っていったところで、批判する者はうちの職場にはいない。
なんなら食事系のものを持っていかない代わりに、いつもよりちょっといい酒、とかそういう選択肢もある。
そして私は職場でのキャラクター的な位置づけとして、おそらくそれが許される唯一の女性だ。
しかし……
先輩はローストビーフが得意料理らしい。
後輩はなんて言ってたかな?でもまぁ、忙しい中、日々可愛いお弁当を作ってくるくらいだ。たぶんなにかしら得意な料理なり、酒に合うちょっとしたものを作ってくるだろう。
そんな中に私が持っていくのが、お惣菜?酒?
……なんか、負けた気がする。
そんなことを考えていたら、うっかり寝落ちした。
「身支度の時間を除いて、出かけるまで小一時間……さすがにこの時間からじゃ凝ったものは無理だな……」
なんなら今、家にはまともな食材すらないので、買い出しにも行かなければいけない。
買い出し自体はすぐ近くに、行き慣れたそこそこ品揃えが豊富なスーパーがあるので特に問題はないのだが。
「あとは時間か……」
昨日のうちに準備していれば、まぁフライドポテトとかから揚げとか、酒に合い、かつ好き嫌いにそこまで影響しないものが用意できただろうに。
「諦めてお惣菜買うか……?それか冷凍のポテトとか揚げて持ってくか」
とりあえずスーパーだ。
「……っしゃ、あと三十分あればイケる!」
買い物中に降りてきた天啓に謎にハイになりながら、Lサイズのジッパーバッグを台所にふたつ並べる。
まず入れるのは、市販のポテチ。
これはあらかじめ適当に砕いておく。
もうひとつのジッパーバッグの中には、缶詰のツナとコーン。
考えるな感じろ、とばかりに、汁ごと油ごとぶち込む。
そしてここからが本番。
ポテチの方にはカットレタス。
ツナコーンの方には千切りキャベツ。
いちいち切らなくていい、洗う手間もない、袋入りのアレをふたつずつ。
なんなら今日買ってきたのは、野菜不足を自覚する自分がときどき買っているただのレタスとキャベツではなく、それぞれ人参とかパプリカとかの他の野菜も入ってるちょっと割高なやつ。
ポテチにはフレンチドレッシング。
ツナコーンにはマヨネーズ。
量?なんか適当!
「うらぁぁぁぁぁぁ!」
それぞれのジッパーバッグの口をしっかりと閉じ、ぶん回す。
ポテチとツナコーン、そしてドレッシングとマヨネーズが、野菜全体にいきわたるように。
「なんで休みの日にまで職場の連中に会わにゃならんのだぁぁぁぁぁ!」
そんな行き場のないモヤモヤを、ジッパーバッグにぶつける。
とはいえ振り回した衝撃でうっかり爆発し中身をぶちまけてしまっても困るので、そこはじゅうぶんに注意しつつ。
マヨの方はときどき揉みまくりつつ。
「さて、こんなもんか」
数分ほど暴れまくったところで気が済んだ。
完成したのは、サラダが二種類。
他の人が何を持ってくるかはわからないが、まぁサラダなら箸休めぐらいにはなるだろう。
ジッパーバッグはそのまま台所に放置し、身支度に入る。
どうせ会うのは職場の人間だ。
そこまで気を使った格好はしなくていい。
「あ、でもせっかくだから、トップスはこないだ買ったカットソーにしよ」
がっつりメイクじゃなくても、パウダーと、ついでにアイラインぐらいは引こう。
いくら仕事の一環とはいえ、せっかく出かけるんだし。
とはいえ出来れば休日にぶつからないで欲しかった、と思いながら、私はサラダのジップロックを詰めた保冷バッグを片手に外に出る。
日が落ちたあとの冷たい風に、保冷バッグはいらなかったかもな、と私は少しだけ身震いした。
袋入りのカット野菜。
すごい便利なんですけど、物価高でもお値段が変わらないので、近所のスーパーでも駆逐され続けています。みんな考えることは同じなのね……
次回更新は2/25です。




