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ごはんとワルツを  作者: 明石家にぃた
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くさ(後編)

藁人形って、意外と作るの難しいですね!

……いやもうホント、クリスマスイブにナニやってんだ、って話なんですけども。


※実は今回の原稿書いたの24日の夜です。

 いや、調べてみるもんだな、と。

 

 さて、わらつと(とわら人形)を作ったはいいが、大豆を発酵させるのに必要な温度が足りないことが発覚したわけだが。


 私と同じような問題に直面したあたまおかしいひとたち、もとい同士はどこにでもいるようで。

 調べてみたら「保温バッグと使い捨てカイロでイケる」らしいことがわかった。


 確かに。


 冬になればたいていの人がお世話になるアイツ。

 しかし下手に買い置きしておくと、うっかり余らせて翌年にはお亡くなりになってるアレに、そんな使い道があったとは。

 もちろん、今年も新しいのを買ってある。

 貼るタイプで、長時間保つやつ。

 とは言っても私の職場は屋内がほとんどなので、出退勤のときぐらいしか使わなかったりするんだけども。あと雪かき。

 

「とりあえず昨日のうちに水に漬けといた大豆を茹でて……って五時間もかかんの??」

 すでにちょっと心折れそうになりながら、作り方のサイトを読み返す。


 ちなみに藁で作った納豆は、許可がないと売ってはいけないらしい。

 なんでも、昭和前期に食中毒騒ぎがあったとかなんとか。


 もちろん、自分で食う分にはオッケー。

 ただし自己責任。

 サイトによっては「腹壊しても責任取れないから、出来たのは食うな(要約)」って書いてるところまであった。

 

 まぁ食べるけど。

 イケそうだったら。


 で、ついでに調べてたら面白いことがわかった。

 現代で納豆は、至極日常的に食べられているにも関わらず〝ハレ〟の料理にあたるらしい。

 地域によっては正月に食べるために、年末のクリスマスごろに納豆を仕込む地方もあるとか。

「いや、めっちゃ今ちょうどその時期ですが?明日の朝にはサンタさんが来ますが?」


 まさか、なんだかんだで時間がなく、年末近くまで延び延びになってた納豆づくりが伝統的な納豆づくりの時期であったとは。


 文化とは、実に面白いものである。


 それはさておき。

 

 五時間、というのはあくまで目安で、要するに指で潰せる硬さになればいいらしく、小粒の大豆であれば二時間ほどで茹で上がるらしい。

 圧力なべであれば一時間弱。


 とはいっても、自家製の大豆が小粒なのか大粒なのかの判断がつくほど、私は大豆に詳しくはない。

 てゆかそんなん詳しいとか、農家さんでは。


 弱火でコトコト。

 大豆は、小一時間ほどで食べられる程度に柔らかくなる。

 とはいえ指で潰せるというほどではない。

 つーことはまだもう少しか。


 大豆が茹で上がるまでの間に、先日作ったわらつとを熱湯消毒する。

 納豆菌は熱にも強いが、少なくともこれで、熱に弱い他の菌は死滅するはず。

 

 熱に強い菌は、納豆菌に限った話ではない。

 納豆菌はまだ優しい方で、熱に強い上にヤバい、という菌は世の中にはたくさんある。


「……ま、だから年休前まで作るの粘ってたんだけどさ。納豆なだけに」


 そんなわけで、完成後に食べてうっかりお腹を壊しても仕事に支障が出ない日を選んでしまう社畜のサガ。

 

 いやまぁ最悪の場合、仕事に支障がどうのって言ってる場合じゃないんだけども。

 だいたい「遊びで手作り納豆作って食べたら食中毒で入院しました」とか、いくらなんでも黒歴史過ぎる。

 それも、いいトシしたアラフォー女子が。


「……そう考えると、納豆って意味わかんないよな」


 たぶん、環境さえ整っていれば作ること自体はそう難しくないだろう。

 しかしだ。

 なにをどう血迷ったら、マメが腐った(正確には発酵)のを食べてみようと思うんだ。


 食文化って怖い。

 毒あるっつってんのに、何年も糠に漬けこんで無毒化してまで食べるフグの子糠漬けとか。

 毒芋すりおろして灰汁で煮て無毒化して固めた、やたら手間かかってるわりに栄養価の低いこんにゃくとか。


 もはや狂気である。


「ま、こうやってノリだけでその意味わかんない発酵物を自作してみよう、とか言って、マジで作っちゃう私もたいがい狂人か」


 大豆は無事に柔らかくなり、わらつとも念のためニ十分ほどしっかり茹でた。

 念のためビニール手袋をはめてから手でわらつとを開き、よく洗ったスプーンで大豆をねじこむ。

 あんがい難しい。あと量も入らない。

 まぁいい。

 遊びで作る程度なら、せいぜい一口分もあればいい。

 茹でた大豆が残ったとしても、そのまま食べちゃえばいいだけだし。


「よし、こんなもんか」

 

 ふるさと納税で海産物を頼んだときの発泡スチロールに、新聞紙で包んでカイロを貼ったわらつとを入れる。カイロだけでは温度が心もとないので、お湯を入れたペットボトルも一緒に詰め込む。

 ついでにカイロも発泡スチロールの内側にペタペタ。

 

「これ、ちゃんと四十度とかになってるのかなぁ……」

 

 触ってもよくわからない。

 まぁいいか。


「さて……あとはこのまま発酵させて……あ、あっためるのは一晩とかでいいのか」

 四十度前後に温度をキープしたまま放置し、表面に白い膜が張れば発酵完了。


 あとは雑菌が繁殖しないように、冷蔵庫で熟成させるらしい。


「これでうまくいけば……もし異世界転移とか転生とかして、納豆が恋しくなったらいつでも作れるってことだな」

 まぁ転移しちゃうような乙女ゲームとかプレイしたことないんだけど。

 

 それに、どうせ異世界で作るなら醤油とか味噌の方が有益である。

「……来年はもうちょっと植えるマメ増やして、味噌とか作ってみるか?」


 でも枝豆も食べたいしなぁ……と、私は脳内で鬼が大爆笑するのを尻目に、盛大な皮算用をするのであった。

というわけで自作の藁人形くんが見守る中、ストーブの前でマメが発酵中です。

ちなみに誰かを呪う予定はないのでご安心を(笑)


次回更新は1/25です。

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