油断大敵
やらかしました。
※流血表現があります、ご注意ください。
「ポテチ食べたい」
とは言っても時間はすでに夜。とっくに寝間着姿になっている以上、今からわざわざ着替えて買いに行くのも面倒だ。
そういえば先日、特売で衝動買いしたじゃがいもはある。
「……作る?」
コロッケとかから揚げとかならともかく、薄いポテチの厚みなら、揚げ焼き程度の油の量でもワンチャン出来そうな気がする。
一応スライサーもあるし。
あんま使ったことないけど。
買ったままそこら辺に放置してあった袋から、とりあえずじゃがいもを数個取り出す。
芽はまだ出ていないっぽい。
こぶしよりも小ぶりだが、とりあえず二つか三つあればいいだろうか?
新じゃがなので、皮はむかなくて大丈夫なはず。
ぶっちゃけると皮むくのめんどくさい。
「スライサーあると薄切りラクだなー、さくさくイケ……」
それはちょっとした油断。
切れると言ってもしょせん百均、と侮った者の末路。
指先に、ちくり、としたかすかな違和感を感じ、小さくなったじゃがいもから手を離す。
芋の欠片ではない何かが、指先にこびりついている。
そっとそれを指先でつまむ。
それは思った以上に簡単に指から離れ、同時に指先を赤く染めた。
途端に襲う、痛み。
「ってぇぇぇぇ!」
指をおろした、と気が付いたときには、親指からじわりと血があふれはじめていた。
床にそれが落ちる前に、咄嗟にぱくりと指をくわえる。
口の中に広がる、鉄の臭いと味。
とりあえず、芋に血が付かなくてよかった。
まぁどうせ食べるのは私なんだけども。
指をくわえたまま、もう片方の手でばんそうこうを探す。
ばんそうこうはすぐに見つかった。
左手と、右手の残りの四本の指を器用に使い、ばんそうこうを開封する。
口から指を離せば、まだ血は止まっていないようだった。
止血のため、少しきつめに巻く。
じわりとガーゼの部分に血がにじむが、剥がれるほどではなかった。
これならそのうち止まるだろう。
気を取り直して残りのじゃがいもをスライスする。
またやらかさないように、今度は慎重に。
いつもつまみを入れている小鉢に、それなりに盛られたスライスしたじゃがいも。
こうしてみると、小ぶりの芋ではあったがそれなりに量があるように見える。
出来心で、最後の芋をキッチンスケールに乗せてみた。
「これで百グラムちょい……ポテチの小袋二つ分ってとこか……?」
もちろん、市販のポテチに比べれば厚みがあるし、一枚一枚も小さいが、グラムだけでいったらそれなりの量ということになる。
サラダ油をフライパンで熱する。
さすがにポテチを揚げるなんて初めてのことなので、どのくらいの温度でどのくらいの時間揚げればいいかわからないが、まぁ普通の揚げ物と同じ要領でいいだろう。
加熱されぶくぶくと泡立つ油に、スライスしたじゃがいもを少しずつ入れていく。
くっつかないように箸ではがしながらしばらく待つと、ぺたんと平べったかったそれの端が少しずつ持ち上がり、どうにもポテチらしい造型になっていく。
最初に入れたものは、長く入れすぎて少し焦げてしまった。
箸で持ったときの感触を頼りに、少し早いかな?という黄色い状態で引き揚げる。
そのままキッチンペーパーを敷いた器の中にぶち込む。
「おお……思ったよりポテチっぽい」
いやまぁポテチのつもりで作ってはいるんだけど。
見た目はあまり変わらないが、持ちあげてみればわかる。
少し厚みのある部分はちょっとほくっとしておりフライドポテト感はあるものの、薄いところはちゃんと固い。
アレだ。
フライドポテトの、細いとこみたいな。
そのまま食べてもそれなりに美味いが、気持ち程度に塩を振ると、よりそれっぽくなった。
ていうか塩入れすぎたっぽくて、さすがにしょっぱいな。
これは明日のむくみが怖い奴。
「ぽてちーぽてちー、ぽてぽてちー♪ちょっぴりホクホク、ぽてぽてちー♪」
市販のとは趣が異なるとはいえ、私のポテチ欲は充分に満たされた。
ついでに調べてみたら、どうも他の味も作れるっぽい。
コンソメ味とかも、今度作ってみよう。
「ま、ぶっちゃけると買った方が美味いんだけどね」
それとこれとは別物、ってことで。
「……あ、スライサーの指ホルダーなんてあるんだ……」
指先はまだジンと痛い。
このチップスを我が家の公式メニューとするためには、迅速にこれを購入せねば。
毎回のように指先を持っていかれるようでは、コスパが悪すぎる。
「さつまいもとか、人参とかもチップスにしたら美味しそうだしね」
あとレンコンとか。
じゃがいももまだある。
夜の小腹メニューにするにはちょっと重いかな?と思いながらも、小皿の中のチップスは思っていたよりも早く姿を消していった。
ちなみにまだ止血出来てません……けっこう痛い。
良い子はスライサーでぽてち作るときはちゃんと指ガードを装着し、よそ見しないでやろうね!
次回更新は11/25です。




