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ごはんとワルツを  作者: 明石家にぃた
36/52

そういうときもある

表看板に偽りアリ。

……作ってないね、これ。

 引っ越しをした。

 とはいえ、別に転勤とかそういう大きなイベントがあったわけではない。

 なんだかんだ就職してからずっと住み続けたアパートだったが、ひとりぐらしも長くなってくると、どうしても手狭になってくる。


 要するに、物が増えて収まりが悪くなってきたのだ。


 それに引っ越しと言っても、最寄り駅が変わらない程度の、ごく近距離での引っ越しだ。

 引っ越し業者には大物家電や家具だけ運んでもらい、あとの細々したものはレンタカーを借りて自力で運ぶ。

 

 残念ながら、私には引っ越しを手伝ってくれるような男性の知人はいない。

 兄ちゃんに頼めば一家総出で助けてくれるとは思うが、さすがに妹の引っ越しのためだけに遠出させるのも気が引ける。

 

 というわけで。

 明日明後日の連休で、全てを運び、片付けてしまいたい所存。


 季節ものなどの使用頻度の低いものについては、今日のうちに運べるものは運んである。

 今こっちの家に残っているのは、明日業者にお願いする大型のモノ全般と、服や食器、台所用品などの細々したものを詰め込んだ大量の段ボール。

 あと炊飯器とかの小型家電。

 ついでに、荷解きが間に合わなかった場合、とりあえずそれだけ開ければ数日は最低限の生活が出来る、衣服や日用品が入った巨大なボストンバッグ。

 

 冷蔵庫の中身は、すでにこの一週間ほどでほぼ食い尽くした。

 あとに残った細々した調味料なんかは、先日買ったクーラーボックスに保冷剤と共に入れてあるので引っ越し先に冷蔵庫が設置され次第、早急に移し替えればいいだけのこと。

 

 素晴らしい。

 どんくさい私にしては最強の段取りである。


 翌朝、引っ越し業者さんが来る。

 とりあえず最優先で冷蔵庫。

 わりとお手軽なコースだったけど、それでもうちで大きなものと言ったら冷蔵庫と洗濯機、本棚と小さめの食器棚、チェスト類、ベッドとマットレスぐらいなので十分運べた。

 まだ容量に余裕があるので細かい荷物も運びますよ、と言ってくれたので、お言葉に甘えて本や衣類、食器など、比較的重たいものは業者さんの方に入れてもらう。

 

 私がレンタカーで運ぶのは、小物などの軽いもの。

 わーい、らくちん。


 引っ越し先はすでに業者さんの方にも伝えており、道に不慣れな私をトラックで先導してくれるというから至れり尽くせりだ。

 

 正直助かる。

 最寄り駅が違うとはいえ、新居から職場までは今までとあんまりルートが変わらないからなんとかなるが、今の家から新居までのルートはまじでわからん。

 

 昔もそう。

 知ってる道から三回以上曲がったら、たいがいもう迷子になってた。

 

 家から三百メートルも離れていないところで迷子になってギャン泣きしている妹を、兄は何度となく迎えに来たりとかしてた。

 あまりにもしょっちゅう迷子になるものだから、近所の人たちも勝手知ったるもので。

『あらー、妹ちゃんならまたどこどこで迷子になってたわよー』

 みたいな感じで、兄にこっそり妹の居場所を教えていたりもしたようだ。

 

 ちなみにそのご近所さん、迷子になってる私を直接家まで案内したりしなかったのかって?


 ……それがですね。

 私、昔はだいぶひどい人見知りでして。

 家族や友人以外の、特に大人相手に関してはあまり積極的に話をしたり出来ないタイプだったものだから、ひとりでいるときにうかつに近づくとパニックになって逃げ出していたようでして。

 

 結果的に、逆にそんな厄介な妹を持つがゆえに交流を深めていたご近所さんと兄との連係プレイで、可及的速やかに迷子の妹を確保する、というミッションが日々繰り返されていたという。


 オトナになった今はさすがにそこまでの人見知りはないものの、今思えばなかなかに面倒な妹だったな、と。


「はい、こちら着きましたよー、お荷物お運びしますねー」

「冷蔵庫お先の方がよろしいですよね」

「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします」


 冷蔵庫を運ぶやたらと愛想のいい業者のお兄さんたちを、段ボールを持って部屋まで先導する。

 場所を指定し、設置までお願いする。

 それを、何度か繰り返す。


「それでは失礼しますー」

「ありがとうございました」


 何はともあれ、引っ越しは済んだ。

 大量の段ボールに囲まれ、人心地つく。 

 レンタカーを返すのと荷解きは明日にして、とりあえずテレビでも付けようとして……


「つかないな」

 これに関してはそれほど大きなものではなく、自分で運んだので接続関係は自力でやった。

 もしかしたら何かやり方を間違えたのかも知れない。

「まぁいいか」

 

 だったら先にごはんにでもしよう。 

 腹が減っては戦が出来……

「……あ、やっべ」

 引っ越し当日ならソバでも食べたいところだが、荷物を少しでも減らすのに、ローリングストックの食材も含め、あらかた片付けてしまっていたことに今気が付いた。

 冷凍のごはんすらない。

「……仕方ない、今日は外に食べに行くか」

 以前よく行っていた飲み屋は、実は引っ越ししたことでちょっと近くなっていたりする。

 とはいえ、今日はやっぱりソバでしょう。

 

 あなたのお「ソバ」に……なんてね☆


「お、らっきー。近くにお蕎麦屋さんあるやん」

 どうせ食べるなら美味しい方がいい。


 まだ見ぬお店との新しき出会いにわくわくしながら、わたしは未だ段ボールタワーに埋もれたままの部屋を脱出し、近所にあるらしいお蕎麦屋さんへと向かった。

そろそろちょっとずつ、主人公と兄ちゃん(一家)以外の登場人物も増やして行こうかな、と思った日が私にもありました。

そうこうしているうちに一年以上が経過しました。

未だストーリー展開に迷走しています。終わりが読めない。


次回更新は9/25です。

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