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ごはんとワルツを  作者: 明石家にぃた
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いざゆかん、大自然の彼方へ(前編)

ちょっと長くなりそうだったので、前後編にしてみました。

ちなみに私はただのへたくそドライバーです。※車通勤

 グランピング、なるものが若い女性の間で流行っているらしい。

 同僚の女の子が、先日の連休で行ってきたんだけど思ったよりよかったーと話しているのを小耳に挟んだ。


 グランピング。グラマラスとキャンプを組み合わせた造語。

 要するにホテルばりのサービスのキャンプ。

 

 キャンプといえばはんごうでごはん炊いたりキャンプファイヤーしたり、蚊取り線香と虫よけスプレーを片手に街灯に群がる大量の蛾にビビったり、という経験しかない私からしたら、カルチャーショック以外のナニモノでもない。


「そもそも、キャンプって俗世を離れて自然に返るのが目的だと思ってたから、ホテルみたいなってのにピンと来ないんだろうなぁ……」


 逆にめちゃめちゃ軽装備でやるキャンプの方がやってみたい、って言ったら「自衛隊の行軍じゃあるまいし」と上司に呆れられた。

 実際はどうなのかは知らんけど。


 ……とはいえ、実は似たようなことをやれるだけの装備を、私は持っていたりする。


 昔ゲーセンで取った一人用のテント、懸賞で当たった厚手のレジャーシート。

 私でも知ってるぐらいには有名なメーカーのやけに立派な寝袋は、いったいどこでもらったんだったか。


 それに今どきは、ジュース一本分の値段でキャンプ用の食器や持ち歩きのしやすい小ぶりの鍋が買える。お弁当一個分の値段で、使い捨てのBBQコンロはふたつ。数千円あれば簡易的なキャンプ用の椅子やテーブルだってお手の物。

 それもすべて、普段から利用しているような気軽な店で、いっぺんに手に入る。


「……やってみるか?」


 幸い、私は普通自動車の免許証を持っている。

 ペーパーだけど。

 レンタカーを借りれば移動には支障がない。いちおう。

 

 調べてみると、レンタカーでキャンプをすること自体はさほどアブノーマルなことではないらしい。

 マイカーとは違い、車の汚れとかレンタルする時間とかは気にしないといけないみたいだけど。

「まぁその辺はどうとでもなるか」

 車が必要以上に汚れないように、というなら、薄手のシートとかを少し余分に持っていけばいい。最寄り駅にレンタカーやさんがあるから、営業時間が始まってから借りに行って、それから荷物を詰め込んで出発したところで、時間には余裕がある。

 キャンプと言っても釣りとかそういうアクティビティをするつもりはないし、行くとしてもひとりだから、多少ちんたら要領が悪かったところで、誰に迷惑をかけるわけでもない。

 私のことだ。どうせキャンプ場でやることと言ったら、コンロで何か適当なものを焼きながら火を眺め、酒をかっくらうくらいだろう。


 いわゆるソロキャンプというやつだ。

 決して行軍ではない。


 というわけで連休に合わせて最低限のギアを買い集め、レンタカーの予約もした。

 あとは道中事故らずに、無事に行って帰ってくれば花丸。


 なんだかんだ、行ってからのことは心配していなかったりする。

 キャンプ場、と言ってもそれほど郊外というわけでなし、クマなどの野生動物が出るような場所でもないし、いざとなれば管理人さんもいるような安心安全なキャンプ場だ。


 なので決して行軍ではない。


 荷物の用意は前日のうちに玄関に積み上げておいた。

 そして当日、朝いちばんに予約したレンタカーを借りに行き、いちど家に戻って荷物を積み込む。忘れ物がないか再度確認し、練習がてら、車で近所をぐるっと一周する。


 ついでにいつものスーパーに寄り、そのまま食材を買い集めた。

 翌朝食べるつもりのパンや、最悪そのままでも食べられるベーコンやウィンナー、チーズなど、BBQ用のやきとりや野菜も少々。

 調味料のたぐいは、最低限のものは家からすでに持ってきてある。


 駐車場を出るときにうっかり他所の車と追突事故を起こしそうになったものの、とりあえず無事に買い物を済ませ、キャンプ場に向かうことにする。

 ここから先はスマフォのナビが頼りだ。


 レンタカーにもナビがついていたが、慣れていない機械は使いこなせる自信がない。

 とはいえ使わないのももったいないので、いちおう起動はする。

 ぴこん、と起動した画面。おそるおそるキャンプ場までのルートを設定すると、どうやらスマフォと同じルートを示しているようだった。

「っしゃ、行くか!」

 ばしっと両頬を叩き、気合を入れる。

 

 ラジオからは天気予報が流れている。今日は全国的に天気がいいらしい。

 絶好のキャンプ日和だ。

 加えて、路面状況が悪化する心配もなく、運転日和ですらある。

 

 正直、ありがたい。

 

 なにせ私が運転するのはあまりに久しぶりで、実質的にはほぼ初心者と言っていい。

 今となっては「なんでそうまでして取った?」と言わんばかりだが、先生に就職に有利と言われれば、まぁ取っておいて損はないというただそれだけの理由だった。

 そういうことなら、と、親が自動車学校のお金を全額出してくれたというのも大きい。

 

 実際のところ、さほど就職活動自体に自動車免許の有無は関係なく、まぁあったらあったで助かるけど、なきゃないなりにどうにかなる、というのが現状だったが。


 で、そんな話を同僚にぽろりと漏らしたら『ペーパードライバー講習』なるものがある、と教えてもらった。

 うっかり先走ってレンタカーの予約をしてしまったので、実際に講習が受けられたのは二回ほどであったが、まぁ何もしないよりはマシだろう。

 

 ナビに従って二十分ほど車を走らせると、辺りからだんだん建物が消えていき、少しずつ緑の割合が増えていく。

 長距離運転をする場合は二~三時間おきぐらいに休憩を挟むのが理想、とのことだが、なにせまだまだペーパードライバー。

 小一時間ほどで休憩を挟むことを自分に約束し、そのまま車を走らせる。

 

 目的のキャンプ場までは、ナビによれば約2時間ほど。

 

 まだまだ先は長いが、気持ちは期待と興奮で少しだけ急いていた。

本編中の上司との会話はほぼ実話です(笑)

いやだってキャンプ場なんて最悪、トイレと炊事場さえあればどうにかなりません?(野生児)


あと後輩くんには「クマ大丈夫なんですか??」と心配されました。

大丈夫でした。


次回更新は7/25です。

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