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ごはんとワルツを  作者: 明石家にぃた
33/52

半球型のハピネス

個人的にはタコよりイカの方が好きです。


イカゲソ焼いた奴をマヨ醤油一味で食べるのと、イカ刺しをイカゴロ溶かした肝醤油で食べるのが好き。

ミミのとこも好き。

 ネットの懸賞でなにかいいものが当たったっぽい。

 本当は昨日のうちには届いていたのだけれど、仕事で受け取れなかった。

 

 というわけで満を持して、ついに我が家に現れた小ぶりの箱。

 中身はまだわからない。

 縦横はおそらく拳三つ分、高さは拳二つ分くらい?


 持った感じの重量感から梱包材はあまり入ってなさそう。

 これといって印刷が入っていない無機質な段ボールの下は、妙にみっしりと身の詰まったような感触。

 どうやらその中身が箱に入った何か、であることは間違いない。


 梱包材が入っているとしたらおそらくその奥。

 みっちりしているわりには軽いから、これは発泡スチロールかなにかかも知れない。

 

 わくわくと、ちょっと小躍りしながら開封する。

「おぉ……!」

 予想通り、中身は発泡スチロールでしっかり保護された小型家電。

 パッケージには勢いのある文字がでかでかと元気に踊っている。

 ついでに、ねじり鉢巻き姿のなんとも間抜けな顔のタコが、満面の笑み。


 出てきたのは、なんと、タコ焼き機だ。

 家庭用の小さいやつ。

 そういえば忘れるくらい前に、応募していた気がなんとなくする。

 

 他にも美顔器とかドライヤーとかも応募してたはずなのに、よりによってこれなんかい、と心の中でツッコミを入れる。

 ……いやまぁ嬉しいには嬉しいんだけども。


「んー、せっかくだから明日、タコ買ってくるかー」

 手に入れたからには使わにゃもったいない。

 

 というわけで翌日。

 仕事帰りにタコもといイカ買ってきた。

 いや、タコもね……あったんだけど高かったの……

「だって、しかもイカ、セールだったんだもん」

 ついでにウィンナーとかチーズとかも買った。

 そもそもたこ焼きにウィンナー入れようとしてる時点で、ぶっちゃけタコでもイカでもどっちでもええわ、っていうね。


 生地も安いのでオッケー。

 天かすとネギは多め。

 なお紅しょうがはあまり好きではないので、自分だけで食べる分には入れなくてもヨシ。

 かつおぶしは惜しまずたっぷり。

 もちろんソースとマヨネーズも忘れてはいけない。


「……なかなかうまくいかないもんだな」


 裏の表示通りに作った生地を、温めて油を引いた機械に流し込む。

 具材をぶち込み、竹串でちまちまつつきながら形を整えていくのだが、どうも綺麗に丸くならない。

「まぁ別に丸くなくても良いんだけども、さすがにイカがはみ出てるのはなぁ……」


 かといって、生地を追加するのはなんか負けた気がしてヤダ。

 別に勝敗があるわけではないのだが。


 まぁいいか、ととりあえず第一陣をぽいぽいと皿に移す。

 ソースとマヨネーズ、かつおぶしをたっぷり。

「あ、青のり忘れてた」

 とはいえさすがに今から買いに行くのもめんどくさい。

 明日ありえたかも知れない、歯とか唇に青のり事案を回避した、ということにしよう。


 熱いうちにひとつ、竹串に刺さったたこ焼きを頬張……

「って、あっふいわ……!」

 やけどするかと思った。

 

 ぎりぎりでやけどを回避し、ふぅふぅと冷ましながら齧る。

「イカでも十分うまいな……タコ焼きではないけど」

 

 黙々とそれなりの数のタコ焼き?を作っては食べていたら、だいぶお腹が膨れてしまった。

「生地も具材もまだ残ってるし、明日もタコ焼きかな……」

 何も考えずに一袋やってしまったせいで、アホみたいな量の生地がまだボウルに残っている。

 よく見れば、一袋あたり八十個とかって書いてる。

 どう考えても一人で食べる量ではない。


 ていうか、ぶっちゃけるとちょっと飽きた。


 明日はチーズとかウィンナーとか入れよう。

 イカもまだ余ってるけど、これはまぁ、冷凍すればまだイケる。


 というわけでさらに翌日。

 今日は中身をチーズとウィンナーにしてみる。

「ソースよりケチャップの方が合いそう」

 というわけでオーロラソースをたっぷり。

 おかげでだいぶ昨日と味が変わって、これはこれで楽しいし美味しい。


「ちょっとピザみがあるな」

 今は手持ちに無いけど、タバスコとかちょっとかけてもいいかも。


 まだもう少し生地は残っているが、なんとか明日ぐらいには食べきれそうだ。

「ただまぁ……イカは残ってるんだよなぁ……」


 さて、奴はどうするか……


 そして週末。明日は休み。

 持て余していたイカは、前日のうちに解凍してある。

「さぁ、これが貴様の最期だ」

 ふっふっふ、と無駄に厳かに告げる。

 

 なにを隠そう、私はタコ焼き機の素敵な使い方を学んだのだ!

「お前はアヒージョになるんだよ!」


 まぁいつものもどきですけども!

 タコ焼き機のくぼみにはオリーブオイル。

 チューブのにんにく。そして適当な量の一味唐辛子。

 ちわちわと加熱され、にんにくの香りが部屋中に広がる。


 そこに、タコ焼き用に一口大にカットしたイカを沈める。

 ついでにブロッコリー。

 あと冷凍庫に残ってたエビ。

 こないだ仕事帰りに買い食いして、食べきれずに残って冷凍したフライドポテトを小さく切ったヤツ。

 残り物のウィンナーとチーズ。

 

 思いつくままにぶち込んだら、思いのほか豪華になった。

「……これは、ワインとか飲むしかないな」

 確か貰い物のミニ瓶のやつがあったはず。足りなければ買いに行けばいい。


 それにしてもタコ焼き機でアヒージョ作るの考えたひと、天才だな。


 コンセント差しっぱなしだから、そうすぐに冷めることもない。

 アツアツで、しかもなんか見た目可愛い。

「こりゃいいや。むしろコレ、アヒージョ専用機だな」


 正直、連日のタコ焼きもどきで、しばらくはタコ焼きは見たくもない。


 しかしこれならばそこまで腹が膨れることもないし、バリエーションいろいろ出来るし、そう簡単には飽きないだろう。

 なにせ酒にも合う。


「ま、いちおータコ焼きも酒には合うんだけどねー」

 

 アヒージョも飽きたら、また他にもいろいろ試してみるのも楽しい。

 教えてもらった〝タコ焼き機を使ったおススメレシピ〟のサイトを見ながら、次は何して遊ぼうか、とニヤニヤしながら、私は愛用のグラスに注いだワインを傾ける。


最近めちゃめちゃ二次創作が捗るので、ついそちらに気を取られてこっちの更新忘れるところでした。

あっちやこっちの妄想が錯綜して、そろそろ頭がパンクしそうです。


次回更新は6/25です。

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