半球型のハピネス
個人的にはタコよりイカの方が好きです。
イカゲソ焼いた奴をマヨ醤油一味で食べるのと、イカ刺しをイカゴロ溶かした肝醤油で食べるのが好き。
ミミのとこも好き。
ネットの懸賞でなにかいいものが当たったっぽい。
本当は昨日のうちには届いていたのだけれど、仕事で受け取れなかった。
というわけで満を持して、ついに我が家に現れた小ぶりの箱。
中身はまだわからない。
縦横はおそらく拳三つ分、高さは拳二つ分くらい?
持った感じの重量感から梱包材はあまり入ってなさそう。
これといって印刷が入っていない無機質な段ボールの下は、妙にみっしりと身の詰まったような感触。
どうやらその中身が箱に入った何か、であることは間違いない。
梱包材が入っているとしたらおそらくその奥。
みっちりしているわりには軽いから、これは発泡スチロールかなにかかも知れない。
わくわくと、ちょっと小躍りしながら開封する。
「おぉ……!」
予想通り、中身は発泡スチロールでしっかり保護された小型家電。
パッケージには勢いのある文字がでかでかと元気に踊っている。
ついでに、ねじり鉢巻き姿のなんとも間抜けな顔のタコが、満面の笑み。
出てきたのは、なんと、タコ焼き機だ。
家庭用の小さいやつ。
そういえば忘れるくらい前に、応募していた気がなんとなくする。
他にも美顔器とかドライヤーとかも応募してたはずなのに、よりによってこれなんかい、と心の中でツッコミを入れる。
……いやまぁ嬉しいには嬉しいんだけども。
「んー、せっかくだから明日、タコ買ってくるかー」
手に入れたからには使わにゃもったいない。
というわけで翌日。
仕事帰りにタコもといイカ買ってきた。
いや、タコもね……あったんだけど高かったの……
「だって、しかもイカ、セールだったんだもん」
ついでにウィンナーとかチーズとかも買った。
そもそもたこ焼きにウィンナー入れようとしてる時点で、ぶっちゃけタコでもイカでもどっちでもええわ、っていうね。
生地も安いのでオッケー。
天かすとネギは多め。
なお紅しょうがはあまり好きではないので、自分だけで食べる分には入れなくてもヨシ。
かつおぶしは惜しまずたっぷり。
もちろんソースとマヨネーズも忘れてはいけない。
「……なかなかうまくいかないもんだな」
裏の表示通りに作った生地を、温めて油を引いた機械に流し込む。
具材をぶち込み、竹串でちまちまつつきながら形を整えていくのだが、どうも綺麗に丸くならない。
「まぁ別に丸くなくても良いんだけども、さすがにイカがはみ出てるのはなぁ……」
かといって、生地を追加するのはなんか負けた気がしてヤダ。
別に勝敗があるわけではないのだが。
まぁいいか、ととりあえず第一陣をぽいぽいと皿に移す。
ソースとマヨネーズ、かつおぶしをたっぷり。
「あ、青のり忘れてた」
とはいえさすがに今から買いに行くのもめんどくさい。
明日ありえたかも知れない、歯とか唇に青のり事案を回避した、ということにしよう。
熱いうちにひとつ、竹串に刺さったたこ焼きを頬張……
「って、あっふいわ……!」
やけどするかと思った。
ぎりぎりでやけどを回避し、ふぅふぅと冷ましながら齧る。
「イカでも十分うまいな……タコ焼きではないけど」
黙々とそれなりの数のタコ焼き?を作っては食べていたら、だいぶお腹が膨れてしまった。
「生地も具材もまだ残ってるし、明日もタコ焼きかな……」
何も考えずに一袋やってしまったせいで、アホみたいな量の生地がまだボウルに残っている。
よく見れば、一袋あたり八十個とかって書いてる。
どう考えても一人で食べる量ではない。
ていうか、ぶっちゃけるとちょっと飽きた。
明日はチーズとかウィンナーとか入れよう。
イカもまだ余ってるけど、これはまぁ、冷凍すればまだイケる。
というわけでさらに翌日。
今日は中身をチーズとウィンナーにしてみる。
「ソースよりケチャップの方が合いそう」
というわけでオーロラソースをたっぷり。
おかげでだいぶ昨日と味が変わって、これはこれで楽しいし美味しい。
「ちょっとピザみがあるな」
今は手持ちに無いけど、タバスコとかちょっとかけてもいいかも。
まだもう少し生地は残っているが、なんとか明日ぐらいには食べきれそうだ。
「ただまぁ……イカは残ってるんだよなぁ……」
さて、奴はどうするか……
そして週末。明日は休み。
持て余していたイカは、前日のうちに解凍してある。
「さぁ、これが貴様の最期だ」
ふっふっふ、と無駄に厳かに告げる。
なにを隠そう、私はタコ焼き機の素敵な使い方を学んだのだ!
「お前はアヒージョになるんだよ!」
まぁいつものもどきですけども!
タコ焼き機のくぼみにはオリーブオイル。
チューブのにんにく。そして適当な量の一味唐辛子。
ちわちわと加熱され、にんにくの香りが部屋中に広がる。
そこに、タコ焼き用に一口大にカットしたイカを沈める。
ついでにブロッコリー。
あと冷凍庫に残ってたエビ。
こないだ仕事帰りに買い食いして、食べきれずに残って冷凍したフライドポテトを小さく切ったヤツ。
残り物のウィンナーとチーズ。
思いつくままにぶち込んだら、思いのほか豪華になった。
「……これは、ワインとか飲むしかないな」
確か貰い物のミニ瓶のやつがあったはず。足りなければ買いに行けばいい。
それにしてもタコ焼き機でアヒージョ作るの考えたひと、天才だな。
コンセント差しっぱなしだから、そうすぐに冷めることもない。
アツアツで、しかもなんか見た目可愛い。
「こりゃいいや。むしろコレ、アヒージョ専用機だな」
正直、連日のタコ焼きもどきで、しばらくはタコ焼きは見たくもない。
しかしこれならばそこまで腹が膨れることもないし、バリエーションいろいろ出来るし、そう簡単には飽きないだろう。
なにせ酒にも合う。
「ま、いちおータコ焼きも酒には合うんだけどねー」
アヒージョも飽きたら、また他にもいろいろ試してみるのも楽しい。
教えてもらった〝タコ焼き機を使ったおススメレシピ〟のサイトを見ながら、次は何して遊ぼうか、とニヤニヤしながら、私は愛用のグラスに注いだワインを傾ける。
最近めちゃめちゃ二次創作が捗るので、ついそちらに気を取られてこっちの更新忘れるところでした。
あっちやこっちの妄想が錯綜して、そろそろ頭がパンクしそうです。
次回更新は6/25です。




