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ごはんとワルツを  作者: 明石家にぃた
32/52

ひと月先のお楽しみ

ちなみに私は朝ごはん食べない派です。

正直、朝ごはん食べる時間があるならその分、一秒でも長く寝てたい。

 タイミングがいいのか悪いのか。


 ぼちぼち朝のトースト用のジャムが切れるなぁ、と思った矢先に、スーパーで見切り品のいちごに遭遇した。

 そもそもジャムは元々保存食である。

 ちょっとくらい傷んでたところで気にするほどのことでもない。


 これはちょうどいい、と嬉しくなって二パックばかりをカゴの中へ。

 せっかくだから手作りしてみるのも一興。

 実は、一回作ってみたかったんだよね、いちごジャム。


 そうやってルンルンしながら帰宅したら、兄ちゃんから小包が届いていた。

 中には瓶詰のいちごジャムが二つ。あとスーパーとかでよく売ってるクラッカー。


〝ジャム作ったから、どっちが好みか感想を聞かせてくれ〟


 兄ちゃんの字で、そんな雑な走り書きが同封されている。

 瓶のフタにいちごの品種が書かれたマスキングテープが貼られているところを見ると、どうやら品種違いの二種類らしい。

 水玉模様の可愛らしいマスキングテープはお義姉ちゃんセレクトかな?


 しかし、美味いか不味いかではなく好みかそうでないかを聞くとはなんとも傲慢な。

 いやまぁしかし、兄ちゃんが作るものってだいたい美味いんだよなぁ……


 そしてそんな間違いのないいちごジャムを目の前に、品種など知ったこっちゃない見切り品のいちごで作る素人のジャムを並べられるわけがなかろうに。

 まぁジャムは作ってみたいんだけども。


「とはいえ、さすがにいちごジャムばかりこれ以上増えてもなぁ……」

 ていうか兄ちゃんのジャム、普通にそこそこデカいんだよな。


 いつも私が買っている瓶のタイプのジャムの倍はある。

 それが二つ、なので、要するに普段用の少なくとも四倍。

 普段だとそのときの気分でママレードにしたりいちごにしたり、たまにジャム以外のあんこにしてみたり、とバリエーションを変えている。

 それがまさかのいちごジャム祭。


「しゃーない、今日買ってきたやつはそのまま食べるかぁ?」


 しかしせっかくのいちご。一気に食べてしまうのももったいない。

 傷みかけとはいえ、果物は嗜好品なのだ。


「そうなると、一パックないし半パックはそのまま食べるにしても、残りはジャム以外の何かにしたいところだなぁ……出来れば日持ちするもの……」


 食品を保存食にするためには、要するに微生物や雑菌が繁殖するための水分を抑えることが大事である。

 ジャムが保存食になるのは、砂糖が食品内の水分をがっつり抱え込んで離さず、微生物や雑菌を繁殖するための水分まで奪い取ってしまうからである。


 ちなみにはちみつ漬けや塩漬けも同様の作用がある。

 うーん……抱え込んで離さないとか、ちょっとヤンデレっぽい。


 それ以外だと酢は酢酸、お酒はアルコールの殺菌作用で保存が効くようになるらしい。

 殺すとか、こっちもなんかヤンデレっぽいな。


「……あ、果実酒」


 そういえば冷凍庫に、こないだカップケーキ作ったときに残ったミックスベリーがあったはず。

「あれも一緒に混ぜて果実酒にしたら美味いんじゃないか?」

 とりあえず明日、焼酎買ってこよう。

 今日のところはデザートにいちごを数粒だけ食べて、夕飯はフィニッシュ。


「はいっ、というわけで買ってきました果実酒用の焼酎ー!」

 さすがに一升瓶を買ってくる勇気はなかったので、その半分ほどのミニサイズ。

 とはいえ、アルコール度数はしっかり三十五度。


 ついでに密閉出来るタイプのガラス瓶。

 よく洗って水気をふき取ったあとに消毒用アルコールを吹きかけ、さらに清潔なキッチンペーパーでもう一度しっかり水気をふき取る。

 水気が残っていると傷みやすくなるので、ここはしっかりと。


 焼酎の量に合わせて、いちごひとパックと冷凍庫のミックスベリーを計測する。

「ちょっとベリー余るな……まぁいいか、入れちゃえ」


 そして砂糖は氷砂糖が理想。

 要するに、果実に含まれる水分が砂糖の作用で旨味と一緒に行ったり来たりするわけであるが、それには砂糖がゆっくり溶けるのが大事らしい。

 あと純度の問題。雑味がない方がより美味しい。


 が、そこまで味にうるさいわけではないので、別にグラニュー糖でも問題なし。

 

 あと意外だったのは「振るな」らしい。

 濁ったり雑味が混じったりとかなんかそんな感じ。

 別にそのくらい気にしないけど。


 というわけで最後に焼酎どばー。


「瓶を振っちゃいけないならとりあえずケツでも振っとくか?」

 いや、どうせならもうちょっと有意義なものの方がいい。

 ……腰か?

 なんか骨盤が正しい位置になってお腹が引っ込むとか、ダイエットになるとか聞くし。

 ぶっちゃけ、最近お腹周りがもっちりしてきたし。


 瓶のキャップをきっちりと閉め、とりあえず冷暗所……シンクの下に。

 出来上がるまでは三週間から一か月ぐらい。

 そして中の実を取り出す。

 これは雑味を防いだり、浮いてしまった実が空気に触れて傷んでしまうのを防ぐためらしい。

「あ、取り出した実はジャムにしてもいいのか」

 もったいないな、と思ってたら、そんな記事を見つけた。


 ちょうどいい。

 一か月もあれば、兄ちゃんのジャムもだいぶ減っているだろう。


 果実酒に使った実は、取り出したあとはジャムに決定。

 今回作り損なった分のリベンジだ。

 

 取り急ぎ、美味いジャムでうっかり朝ごはんを食べ過ぎるであろうことを見越して、少し早めに腰でも振っておくことにしよう。

書いといてアレですが、実はわたしジャムあんまり好きじゃなかったりします。

マーマレードはたまに食べたくなるけど、買ってまでは食べない。

トーストはバターだけ塗ってあれば十分のひとです。


次回更新は5/25です。

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