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ごはんとワルツを  作者: 明石家にぃた
28/52

踊れ!ジンジャーマン

新キャラ、登場させてみました。

「ジングルベール、ジングルベール♪すっずーがー鳴るぅ♪っと」

 綺麗なビニール袋を二重にし、そのままキッチンスケールの上へ。

 メモリをゼロにし、薄力粉をどさーっ。砂糖もどさーっ。

 ついでにサラダ油をざばー


 いい加減に入れているように見えるが、そこは加算形式でちゃんと計測はしている。

 ざっくりとだけど。


 さらにチューブのショウガをぶちゅう、と全体に回しかけるように適当に。

 全体に混ざるようにショウガのかたまりをほぐしながらよく振り、なんとなく混ざったらさらに袋ごと揉む。


 もちもち。

 もちもち。


 手のもちもちにつられて、ついつい口まで動く。


 もちもち。

 もぐもぐ。


「ねぇぱぱー、なにしてるのぉー?」

「んー?クッキーを作ってるんだよ。クリスマスにみんなで食べようね」


 さっきまで居間で遊んでいた三歳の娘が、ひとり遊びに飽きたらしく、てこてこと寄ってきた。

 お手伝いする?と、ビニール袋を掲げると、娘はにこーっと笑顔になり、スキップしながら手を洗いに洗面所へ向かって行く。


 ううむ、日々の教育が行き届いているな。

 ママと一緒にお料理するときはおててをちゃんと洗ってから、か。


「すばらしい。うちのこ天才じゃなかろうか」

 ぱぱー、おててあらってきたー、と戻ってくる娘に、しみじみと思う。

 ちなみにうちのママは、まだお仕事から帰ってきていない。


 今日はパパが保育園へのお迎え当番だったのだが、帰り際におともだちとハグしてさよならする娘、とてもじゃないが、あまりに可愛いが過ぎた。


 ねぇまさかそれ、おとこのこにまでやってないよね?


 勢いよく差し出された手に、持っていたビニール袋を渡す。娘は小さな手で器用に袋を握ると、もちもちと生地を揉み始める。

 経験なのか、それもまた父の真似っこの範疇なのか、口元がもぐもぐと動いている。

 

 どうせ一袋分で済ます気はないので、最初の袋は娘に任せ、次の材料を袋に準備する。


 そして二人で一緒にもちもち。ついでにもぐもぐ。


「ただいまー、あら?何作ってるの?もしかしてクッキー?」


 親子二人で袋もちもちしてるだけで何作ってるのか言い当てるとか、うちの奥さん聡明すぎやしませんか?

 マジで惚れる。結婚してくれ。

 ……あ、もうしてたわ。


「そう、だよー」

「クリスマスの、ね、クッキー、みんな、に、配るやつ」


 答える合間にももぐもぐ口が動いているので、吃音みたいになっちゃった。

 

「まま、も、やろー?」

「わーい、やるやるー!」


 取り急ぎ、自分が持っていた生地を渡す。どうせ生地はもっと作る。

 うちで食べるぶんと実家と義実家、それから妹の家にも送ってやる予定だからだ。


「今日は何のクッキー?」

「ん、クリスマス向けにジンジャーマンにしようと思って」

 ほれ、と、あらかじめ用意していた型を差し出す。

 実家にいたころにお小遣いで買ったものだから、もうけっこうな年季ものだ。

 

 一生懸命生地をもちもちしていた娘が、それを見て明るい声で叫ぶ。

「おんなのこのくっきー!」

「……おとこのこなんだけどなぁ……まぁいいか」

 

 ジンジャー〝マン〟なので、いちおうおとこのこである。


 だいぶまとまってきていた娘の持っていた生地を受け取り、打ち粉をしたまな板に出す。

 綿棒で薄く、平たく伸ばしていく。


「ほら、抜いてごらん」

「はーい」

 おんなのこ、もといジンジャーマンが量産されていく。

 ふわっとショウガの爽やかな香りがただよう。


「あっ!晩ごはんはしょうが焼き、あと焼くだけになってるから。ごはんももうすぐ炊けるよ」

「わーい、ありがとー!まじでうちの旦那、最高にスパダリだわ」

「褒めても夕飯のお肉がいちまい増えるだけです」

「やったね☆」


 娘の抜いたジンジャーマンをクッキングシートに並べながら、ちょいちょいと小細工。

「おんなのこ、おどってるねぇ」

「ねー、クリスマス楽しみすぎて踊ってるねぇ」

 

 いっしょにおどろー、とついに抜き型をほっぽり出して、娘がリビングで踊りだす。

 ついでにトースターの中のジンジャーマンもほっこりさっくり、踊りだす。


「これってもしかしなくても、むかし妹ちゃんに作ってあげてたっていうあのクッキーだよね?」

「そ。お兄ちゃんお手製の、両親の縛りプレイを華麗に躱して作ったココアサブレです」

「そこジンジャーじゃないんだ?」


 いわゆる自己流アレンジというやつ。

 ちなみにチューブのショウガやココアだけじゃなくて、紅茶葉とかチョコのお菓子とかでもやりました。


「兄ちゃんから毎年クリスマスにお菓子が届くとか、あいつにとってはいい迷惑かも知れんけど、あいつに作ったおひるごはんとかおやつとかって、俺にとって今の仕事の原点だからさ。

 出来るなら、はっきり嫌って言われるまでは続けたいんだよなぁ……」


 そんでいつか娘が大人になったときにも『ぱぱとつくったおんなのこのクッキー』が楽しい思い出として残ってたらいい。


 そんなことを考えながら俺は、次に焼くジンジャーマンクッキーを、みんなまとめて万歳させた。

というわけでお兄ちゃん一家の登場です。


ちなみにこのビニール袋で作るかんたんクッキー(サブレ)は、以前ツイッターでフォロワーに教えてもらいました。

簡単なのもそうだけど、なにより洗い物も少なくて片付けもらくちんなのが最の高。


次回更新は1/25です。

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