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ごはんとワルツを  作者: 明石家にぃた
26/52

これくらいのお弁当箱に

ぼちぼち新しい話を書き始めているのですが、正直こっちの話をどうするか悩んでいます。


新しい話を月イチ連載にしてこっちを不定期連載にしてでもしぶとく続けるか、そろそろ風呂敷を畳み始めるか……

まぁ結末についてはまったく決めてないんですけど。

 中途の新人さんが職場に入社した。

 私より若くて、ちょっとふわっとした感じの可愛い女の子。


 料理が好きらしく、お昼はお弁当を持ってきていた。

 手のひらに乗るぐらいの小ぶりのお弁当箱に、半分くらいのごはん。

 残りはおかず。


『簡単なものしか作れないんですけど~』と言いながらも、その卵焼きはわざわざハート型にしてあり、一緒に詰め込まれているウィンナーはタコだった。

 ごはんはチャーハンで、スライスチーズと海苔でクマの顔。

 いわゆるキャラ弁というやつ。


 彼女が配属されてから三日ほど。

 毎日そんな感じの可愛いお弁当を見せられ、男性の同僚たちはすっかり骨抜き。


 まぁそうだよな。

 私も正直、あんなお弁当を毎日作って来れる彼女のことは正直すごいと思うし。


 でもさ。

 アレはないわ。


『君も見習ってお弁当ぐらい持ってきたら?』


 うるせぇ、あんたなんて奥さんに毎日朝昼晩作ってもらってるくせに。

 なんならそのお茶の入った水筒も、奥さんに用意してもらってるんだろ?


 確かに私のお昼はお弁当ではない。

 スーパーで安くまとめ買いしたカップめんか、コンビニで適当にパンを買う。気力があるときは家からおにぎりを持ってくることもあるが、最近はご無沙汰。


 料理自体は私も嫌いではない。

 食べるのも好きだし。


 しかし、料理が作れることとお弁当を毎日作ることは、同じようで違うスキルだ。

 少なくとも私のそれは、晩酌向きではあるがお弁当向きではない。


 やけくそのように、炊飯器から夕飯で残った白飯を弁当箱にぶち込む。

 いつもならば、これはラップに包んで冷凍庫行き。

 

 弁当箱も、新人ちゃんのような可愛らしいお弁当箱ではない。

 黒くてごつくていっぱい入る、学生時代に使っていた、二段重ねのやつだ。

 

 親の仇のようにぎっちりと詰まった白飯に、叩きつけるように梅干しをねじ込む。

 おかず用の方には、刻んだネギの入ったたまご一個分の小さなオムレツ。

 レンチンして、やきとりのタレを絡めただけの冷凍の肉団子。


 そこまで取り繕ったところで、もう入れるものが思いつかなくなって、とりあえず冷凍庫から取り出したブロッコリーをその隣に添えた。


 弁当箱はまだ半分以上空いている。

 これが私の限界なのだ。


 それでももう少し粘ってみる。

 今日の晩ご飯はなんだったか、お弁当にも入れられるものじゃなかったか。

 そう思い返してみるけれど、残念ながら今日は寒かったので、湯豆腐だった。


 冷蔵庫に何かないか。

 あったのは酒とチーズと卵。

 とりあえずないよりはマシだろう、と、ホイルをはがしたチーズを詰める。


 いつもの棚にはないか。

 パスタ、うどん、そうめん、ツナ缶。

 お弁当に使えるものはなさそうだ。


 いや。パスタを茹でてケチャップを絡めて、ナポリタンなら出来るか?

 しかしピーマンがない。ついでに玉ねぎもない。

 せめてどちらか、もしくはウィンナーの切れ端でもあればよかったのに。


 弁当箱は一向に埋まらない。

 

 急いた気持ちが伝わってしまったのか、ふとした拍子にシンクにひじをぶつけ、その勢いでごはんを詰め込んだ方の弁当箱が宙を舞った。


「危なっ……!」

 辛うじて弁当箱はキャッチしたものの、ごはんの真ん中に埋め込んでいた梅干しが床にぺしゃりと落ちる。

「もったいない……」

 しかも最後の一粒。今日で使い切って、明日の仕事帰りに買い足すつもりだったのに。

 

 ほんのりと赤くなってしまった床をキッチンペーパーで拭う。

 さて、この主役のいなくなったごはんはどうしよう。 


 梅干しの名残で真ん中がへこんで赤くなったごはんに、醤油を絡ませた海苔を上にかぶせる。味はともかく、パッと見はただののり弁当に見えるはず。


 母親の作るのり弁当は、ごはんが二段にわかれていて、その間にはおかかが敷き詰められていたけれど、そこまでする気力はない。

 ついでにかつおぶしもない。


 弁当箱にはまだ、だいぶ隙間がある。

 これ以上頑張っても無駄じゃないか、と頭の中で声がする。

 

 もしどうにかこうにか完成させたとて、どうせ「パッとしないね」とか「キャラ弁にはしないの?」とかどうのこうの言われるんだろうし。


 それならいっそ、完成させないままの方がいいんじゃないだろうか?

「どうせ私なんかが弁当作ったからって、なにか変わるわけじゃないし」


 弁当箱からチーズをつまみあげた。

 完成させられないのなら、いっそ今、全部食べてしまおう。


 ……それに、どうせ誰も期待してなかったでしょ?


 弁当の中身を、無造作にぽいぽいと口に放り込む。

 ネギ入りのオムレツはまだマシだったけど、半解凍のブロッコリーは水っぽくて味がなくて、全然美味しくなかった。


お弁当のおかずはから揚げとたまごやきとオムライスが好きです。

冷凍のだとカップのグラタンが好きだったなー


次回更新は11/25です。

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